第5話

しばらく固まっていた俺だかこのまま見続けるわけにもいかず話しかける。


「大丈夫?」


女の子は呆けたようにじっとしていたが気を取り直して立ち上がり話し出す。

もっとも俺のことを警戒してる感じのままだが。


「あっ、えっと、ありがと。」


「こんなとこに傘もささずに座ってたらああいう人たちがまた来るかもしれないし風邪を引くかもしれないから帰った方がいいよ。」


俺が傘を無理やり押し付けると女の子は思わず傘を受け取った。


「帰るなら近くまで送っていくよ。もちろん俺に家がわからないようにある程度近くなったら言ってくれたらそこで俺は帰るよ。」


「え?でも…」


「不安ならとりあえずここから離れるまでは付き合うよ。まだあいつらが近くにいるかもしれないからね。」


「すみません。じゃあお願いしてもいいですか?」


「いいよ。どっち方向付けか教えてくれたら前を歩くから少し離れてついてきたらいいよ。」


「えっと、✕✕駅の方です。」


「リョーカイ。」


俺は公園を出て駅に向けてゆっくり歩き出す。

傘を渡しているので俺は濡れながら歩いているが女の子は申し訳なさそうにしながらも知らない男に近付くのが怖いのだろう。そのまま着いてきている。

俺は時々後ろを見ながらゆっくり駅に向かう。

女の子は警戒心と罪悪感の入り交じったような表情をしながら俺に着いてきている。

しかしある地点を境に僅かに表情が変わる。

警戒心よりも申し訳なさそうな表情が強くなり後ろを気にするようになった。

ほんの僅かな変化なので普通は気付かない程度だが俺は幼少期から特殊な環境で育った影響か表情から相手の気持ちを読むのが得意だ。

おそらく表情の変わった地点辺りで家を通りすぎたのだろうがそのまま歩いていて結局駅まで到着して足を止める。


「あの、ここで大丈夫です。」


女の子は下を向いて言う。

俺はもちろん家のことには気付いてないようにふるまう。


「そっか。傘は電車降りてからも使うだろうからあげるよ。じゃ、俺は帰るから気を着けてね。」


ちなみに俺の家も通り過ぎていたがホントなら引き返すのだがそのまま反対方向に走り出す。

女の子がなにか言っていたような気もしたが雨の音もあり聞き取れないまま駅から見えないところまで走った。

俺が来た道を引き返してしまうと女の子が家に帰りにくいと思ったのでこっちに来たがすぐに戻ると鉢合わせしそうなのでこのまま雨のなかしばらくランニングしてから帰ることにした。

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