新武器解放とハーピーの真価
ゴブリンを討伐した後、勇人は洞窟の内部に入って要救助者を探した。
洞窟の中は臭く、奥に5人の女性が閉じ込められていて、4人がヒトでもう一人はハーピーだった。
女性たちは乱暴を受けていて傷だらけだった。
勇人は「マジか」と思いながら女性たちを解放して手当した後、いろいろ事情聴取するがここで重大なことを知る。
言葉が通じなかったのだ。
―そんな予想をしたことはあった。でも異世界って言葉が通じるのがデフォだからそこまで心配はしてなかった。だけどこれは重大な問題だぞ。
ぼろ切れを着た女性たちを外に連れ出すと囚われていたハーピーが逃げるように飛び去った。
勇人は女性たちを連れて拠点に戻る。
「とりえず明日にでも近くの村を目指すか。と、その前に念願のライフルを生成してみますか」
勇人はさっそくモーゼルKar98k小銃を生成してみた。
生成が終わるとずっしりと重たい小銃が両手の上に乗っかる。
「これがあれば多少大きなモンスターにも大ダメージを食らわせることができる。戦闘を優位に運ぶことができるぞ」
勇人はそう言ったものの何もしないまま寝袋に向かった。
そして女性陣にも寝具を渡して寝るようにジェスチャーを送った。
―作ったいいもののスキルポイントがもうないから明日いろいろ作って試そう。
そんなことを勇人が考えていると寝袋にミミが入ってきた。
「おい、どうしたんだ急に?」
ミミはいつも近くの木の上に留まって鳥のように寝ていたが今日は勇人の寝具に潜り込んできたのだ。
「ピィ~」
軽く鳴くと勇人に抱き着いて何とか寝具の中に収まった。
ミミは翼と尾羽を鳥のようにコンパクトに折りたたんではいるが普通の人間よりは立体的にかさばる。それを勇人に抱き着くことで何とか自身を寝具に収めている。
そのため二人は体を動かす余裕がほとんどない。
勇人はもぞもぞ動いて脱出しようとするがの幸せそうな表情で抱き着くミミを見て止めた。
―そいえば俺が助けた女性たちの対応をしている時のミミはなんか悲しそうというか物足りなさそうなそんな顔をしていたな。お前、そんなに俺のことで...。
言葉が通じないので何を考えているのか聞き出せないし聞き出しても野暮なのでとりあえずミミのやりたいようにさせることにした。
勇人はミミの立派なおっぱいと肢体、モフモフの翼と尾羽が抱き着く感覚に赤面し、とてつもないムラムラ感に襲われる。
―こ、これが女の子の...裸体!最近は見慣れたせいかあまり気にならなくなっていたがこうして物理的に接触するのはやはり心臓にこたえるな!
ドキドキしながら勇人はミミとの関係について思考を巡らせて寝落ちした。
翌日、勇人はゴブリンの群れから救助した女性たちに案内されて人里に入った。
女性達の出身地と思わしき村に入ると村人が一気に集まってくる。
「女性たちを見てればわかるけど、中世か近世のヨーロッパっぽい感じの世界みたいだ。ナーロッパで間違いなさそうだな。とはいえ....。あー、だめだ。何を言っているか全然わからない。困ったなぁ」
幸い言葉が通じなくてももてなされているのは感覚としてわかるので勇人はとりあえず良しとしたようだ。
そこへ上空警戒を続けていたミミが降下して降りてきた。
魔物の登場は流石の村民に動揺を与えた。
周囲が殺気立つ。
そこで勇人はミミの前でいろんなジェスチャーを試して敵でないことをこれでもかとアピールする。
最終的に村人はミミへの警戒を緩め、事態は丸く収まった。
様子を見るに理屈をつけて本心ではないが納得するしかないといった感じだった。
しばらく滞在した後、勇人は村を後にした。
「とりあえず異世界人と関わる場合はこの村を起点にするとしよう。差し当たって今やることはミミについてだ」
勇人は上空を旋回飛行するミミに視線を移した。
歩いて拠点に戻ると勇人は作り置きしていた手榴弾を手に取る。
―遂にミミの真価を確認する時が来た!レベル11でなんとか作ることができたこのM26A2手榴弾がミミによる航空爆撃の最初の一歩だ。
M26A2手榴弾は戦後手榴弾のなかでは珍しい着発信管式の手榴弾だ。
自衛隊の主力手榴弾であるM61、別名M26A3弾の姉妹モデルに当たる手榴弾だ。
この手榴弾は時限信管式ではないので地面に着弾すると転がる間もなく瞬時に爆発して破片を周囲にまき散らす。
この手の手榴弾は誤った操作を行うと使い手が死傷しかねないので扱いが難しい。
―空から手榴弾を落とす場合、手榴弾が転がると着地しても敵から離れた場所へと転がっていく問題がある。小型ドローン爆撃も同じ問題が起きている。だから今作れる手榴弾だとこれが最適解のはず。
勇人はミミにジェスチャーなどを使って手榴弾の使い方を必死に伝える。
途中、移動して崖の上から手榴弾を投擲する実演を行った。
「こうやってレバーを握る。次に安全ピンを半回転させてから引っこ抜く。最後に投げればこの通り爆発する。投げるまでレバーは必ず握り続けること」
崖下に落ちた手榴弾が音を立てて爆発した。
次はミミが練習する番だ。
ミミは大変賢いようで手榴弾が何なのかほぼ理解しているみたいだ。
1回の説明だけで正しい操作手順で手榴弾を信管動作状態にして崖下へきれいに投げ落とした。
腕がないミミはあぐらをかいて両足を使用してこれを行った。
崖下で手榴弾が爆発した。
「すごい!もう使い方を覚えたのか?徴収兵の手榴弾講習だってこんな簡単にはいかないもんだけどなぁ」
この後、ミミに何度も練習させたがそつなく操作できた。
遂に空爆練習の段階に入る。
勇人はハーピー用の手榴弾ホルダーを自作してミミに装着した。
―試行錯誤して何とか形にしてみたものの、うまく機能してくれるかな?
こればかりはやってみないとわからない。
幸い、手榴弾を落としてもミミは上空にいるので被害は及びにくい。
ホルダーに1発の手榴弾を装着させるとミミは空へと飛びあがり、勇人が用意した木の的の上空を旋回する。
ミミは的に対して急降下するような仕草を何度かした後、片足を使って手榴弾をホルダーから外した。
―今のところ急な動きで手榴弾が落ちたり、ホルダーから抜き取れないよな動作不良は起きてない。
勇人は双眼鏡で観察しながらミミをじっと見守る。
そしてミミは手榴弾の投擲を開始した。
ミミは手榴弾の安全装置を鳥脚を使って解除すると急降下し、的への命中コースから外れないようにそっと手榴弾を手放した。
ミミは進路変更しながら上昇し、手榴弾から目を外さなかった。。
手榴弾は落下を続け、目標から3メートル離れたところに着弾して爆発した。
ミミが勇人のもとに降下したので二人そろって的を見に行く。
木の的の表面には手榴弾の破片がいくつも突き刺さっていた。
「よし、効果は十分みたいだ。よくやったぞ、ミミ!」
ミミは的を観察して手榴弾の効果を確認していたが褒められると勇人を振り返って嬉しそうに抱き着いた。
「よしよし」
勇人はミミの頭や獣耳を撫でまわした。
その後も航空攻撃の練習が続けられた。
携帯する手榴弾の数も1つから6つへと増やされ、連続攻撃を可能にしている。
「ミミの投下精度も向上して今では平均誤差半径が1メートル以内まで縮んでいる。十分、実用レベルだ。明日から実戦テストをやろう!」
二人は拠点に戻って休息をとる。
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