レベル上限解放
勇人は転移してから人里に向かわず森に籠ってレベリングを続けていた。
―今の目標はボルトアクション小銃と手榴弾が入手可能なレベルまで強化することだ。人里に降りるのはその後だ。
勇人はレベル9に達し、すでに9mmパラベラム弾とそれを使う自動拳銃をアンロックしていた。
使い勝手の観点から380APC弾を使用するグロック25の使用を継続している。
「あと1レベル上がればボルトアクションライフルと手榴弾が生成できる。けど流石にここまでレベルを上げるといくらザコモンスターを倒してもなかなかレベルが上がらないもんだな」
勇人が少しレベルの高い獣モンスターを倒したところでミミが食べられる野草や木の実を勇人が作ったアタッチメントに括り付けて空から降りてきた。
ミミはレベル6に強化され、魔物に襲われる心配がなくなってきている。
―ここまでレベルの上がると行動の自由度も増すな。たぶんミミと同じタイプのハーピーでここまで強い個体はおそらくいないだろう。この前見た種族の概説を見る限りここまで強くなる前に死んだり強い魔物に捕食されるのがオチだろうからだ。
勇人はそんな考察してから次のモンスターを狩り、遂にレベル10に到達した。
「よし!...あれ?ボルトアクションライフルがアンロックされない。...あ!」
よく見るとレベル上限に到達していてこれをアンロックしないと武器が解放されないようだ。
「レベル上限か。なるほど、条件の解放は...指定クエストのクリア。クエストはいくつかあるけどこの近くで見かけたやつだと...ゴブリンの討伐だな」
―この前、ここから離れたところで見つけたゴブリンの集団だ。ヒトの女性が囚われている姿も目撃しているので人里にも近い場所だと思う。
「行ってみるか」
勇人たちは準備を整えた後、ゴブリンの拠点に向かう。
数時間後、目的地に到着した。
「いた」
洞窟を拠点にしたゴブリンの集団を発見した。
勇人は双眼鏡でゴブリンを観察する。
―数は数体程度、か?ボスがいるかもわからんな。ここはミミに突っついてもらって炙り出そう。
勇人はタクティカルベストを着用し、新しいの武器を携え、ジェスチャーを交えてミミに指示を出す。
ミミは飛び上がるとゴブリンの群れの真上を低空飛行した。
狙い通りゴブリンたちが洞窟から出てきて集まり始め、しばらくして群れのボスも姿を現した。
挑発を終えたミミはどこかへと飛び去る。
「ゴブリンが12体、キングゴブリンが1体か。ミミは戦いに出さない方がいいな。死なれたら元も子もない」
勇人は双眼鏡を下す。
―よし。さっきみたいに洞窟から引っ張り出す作戦でいこう。洞窟中には囚われた女性が複数いるはず。中で戦えば流れ弾で死傷者が出かねない。キングゴブリンは騒動が長引くと出てくるようだから、それまでにゴブリンを各個撃破しよう。
ゴブリンたちが落ち着きを取り戻した後、勇人はゴブリンたちに気づかれないように接近した。
勇人の装備はグロックにカービンキットを装着したサブマシンガンタイプだった。
―サブマシンガンはまだアンロックできなかったけど、連射可能なグロックと専用アタッチメントはアンロックされている!カービンキットと33発マガジン、フルメタルジャケットの徹甲弾を組み合わせれば一人でもゴブリン討伐も不可能ではないはず!
勇人はゴブリンに照準を合わせると攻撃を開始した。
銃声とともにゴブリンが一体ずつ倒れていく。
ゴブリン達は勇人の存在に気づくが近づこうとする前に全滅した。
「よし、いけるぞ!」
勇人がマガジンを交換すると洞窟から更に数体のゴブリンが出てくるが勇人の奇襲攻撃を食らいまた全滅した。
マガジンを再度交換したところでゴブリンの群れのボスであるキングゴブリンが出てきた。
「おいでなすったか、キングゴブリン!」
勇人はグロックをバースト射撃させてキングゴブリンを攻撃した。
キングゴブリンは9mmパラベラム弾を数発食らった程度では死ななかったが明らかに苦痛な表情をして体中から血を流していた。
「流石に硬いな。だがこっちはまだまだ弾があんだよ!」
すかさずマガジンを交換しようとするがここで思いがけないことが起こる。
キングゴブリンが唯一の武器である棍棒を勇人めがけてぶん投げてきたのだ。
「何?!」
棍棒は弾道描くように直撃コースで勇人へ飛んでいく。
勇人は棍棒を避けようとしたが直撃こそしなかったものの腕にぶつかってグロックが弾き飛ばされた。
―しまった!
苦痛にさいなまれながら勇人はグロックを取りに行こうとするがキングゴブリンがすぐ近くまで走って接近していた。
―やばい!
そんな時だった。
ミミが空から急降下してキングゴブリンの頭部を鳥脚の爪で攻撃した。
「ぐぁぁぁ」
クリティカルヒットしたのかキングゴブリンがよろけ倒れこむ。
勇人は痛みを堪えてグロックを再度を拾って持ち直すとキングゴブリンに接近する。
だがキングゴブリンが動く様子はない。
「よくやったぞ、ミミ!」
ミミは降下して着地すると勇人に近づいた時、ミミと勇人のステータスが表示されてレベルアップの文字が点灯した。
「倒したのか!」
ミミは大幅にレベルアップし、勇人はレベル上限が解放された上で1レベル、レベルアップした。
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