レベリングとハーピーの可能性

数日間、勇人はスライムや小型の動物を狙ってモンスター狩りを続けていた。


〈レベル6になりました〉


勇人のステータスにそう表示される。


レベルの上昇に伴いスキルポイント値も上昇して38スペシャル弾の回転式拳銃に装備を変えていたが、レベル6になって380ACP弾を使用する自動拳銃がアンロックされた。


「遂にまともな自動拳銃が手に入るのか。できれば小銃が欲しいんだがそれは当分先だよな」


早速、グロッグ25を装備した。


「おお、9mmパラベラムほどではないけどまともな拳銃だ。おまけに15発も入るからモンスターを殺しきるのが簡単になって助かる」


勇人はミミを見る。


「さて、いよいよミミ強化を始めるか」


ミミに巻いた包帯を取ると美しい翼が姿を現す。

逃げる様子は一切無かった。


「言っていることを理解できるのかわからないけど、とりあえず俺が瀕死にさせたモンスターに止めを刺していくだけだ。慎重にな」


ミミが頷く。

すると翼を羽ばたかせて飛び立つと勇人の真上を旋回し始めた。


勇人は手始めにスライム襲撃して瀕死にさせる。


「行け、ミミ!」


ミミは旋回するのを止めて降下するが猛禽類のように急降下するようには接近できず、接敵した時には翼をバタつかせまくった挙句、結局降りて爪を立てながら鳥脚で蹴りを入れる始末だった。

それにも関わらずミミはスライムを殺しきれなかった。

慌てて勇人がスライムに蹴りを入れてミミが殺られないようフォローする。


こうしてミミは何とかスライム1体を倒すことに成功するが勇人はミミが何度も死にかけたことにハラハラドキドキしていた。


―あっぶねぇ!フォローしてなかったら絶対スライムに付着されて死んでたぞ!だが、おかげでミミがレベル2にレベルアップした。とりあえず地道にレベリングすれば上手くいくだろう。それと...。


勇人はミミに近づいて体を使ったジェスチャーを行う。


「鷹とかトンビは獲物を襲う時、こんな感じで翼を畳むんで急降下するんだ。その後、こういうポーズで爪を立てて相手を殺傷するんだ。ミミ、できるか?」


ミミは首を大きく傾げながら勇人の話を聞く。


―そ、そんなに首が回るのか?!相変わらず、変なところで生態を披露して驚かせ来るな。


ミミは羽ばたいて飛び上がると空中で練習するように急降下を繰り返した。

しばらくすると様になってきて昼を過ぎた辺りにはちゃんと形になっていた。


「いいぞ、ミミ。戻ってこい」


二人は昼食を取った。

その後で異変に気付く。


ミミのステータスに変化があったのだ。


―〈引っ掻く〉が〈切り裂く〉に代わっている?!


先程と同じように瀕死のスライムを攻撃させると猛禽類のような急降下攻撃が出来るようになっていて、瀕死のスライムなら一撃で倒せるようになっていた。


その後も同じようににスライムや小動物ザコモンスターを狩ってミミをレベル4までレベリングした。


「相変わらずステータスはゴミだけど攻撃が決まればまともなダメージは入ってるようになったみたいだ。ミミの攻撃がレベルアップしなくても上位互換に切り替わったのを見る限り、この世界はレベルアップが全てという訳じゃないみたいだ。けど、レベル差が大きすぎれば敵にあまりダメージが通らないと見るべきではあるだろう」


―ゲームでいえば非ターン制のアクションロールプレイングといったところか。それならFPSとか戦車ゲーやフラシム勢の俺でも得意とするところだ。


「そういえばミミのアビリティの〈運び屋〉って何なんだ?」


―使えないスキルだと認識していたが使い道を探ってみるのも悪くないかもな。試しに岩を持たせてみよう。


試しに勇人はミミに1kgの岩を鳥脚で掴んで飛ぶよう指示した。

ミミはいつもより翼をバタつかせたもののちゃんと飛び上がって飛行できた。


次は5kgの岩だ。

流石に5kgとなるその場で飛び上がるのが難しいようだ。

そこで岩を身に付けられるアタッチメントを作って取り付けたところ、助走して飛び上がることに成功した。


最後に10kgを試そうとする。

この時点で勇人は実験を通してあることに気づいて興奮していた。


「もし、ミミに手榴弾や迫撃砲弾を持たせられるなら。それを投擲させて敵を空爆することができる!?」


どうやら勇人はミミと自身のアビリティの組み合わせに大きな価値を見出したようだ。


ミミは10kgの岩を身に着けるが流石に細い鳥脚では立てるけど助走が有意に遅くなっていた。

頑張って助走しながら翼を羽ばたかせ、なんとか飛び立つことに成功するのだが真っ直ぐ飛ぶのが精一杯であるらしく、旋回して戻ってくるのに長い時間がかかった。

その上に着陸に失敗してこけた。

幸いケガはなく勇人はミミを精一杯ねぎらった。


―ミミの揚力だと小回りを利かせて飛ぶなら5、6kg余りの物を担ぐのが限界といったところか。科学的に言えばハーピーが飛ぶなんて物理的に無理なんだから、10kg以上も余剰揚力があるのは驚異的だ。もしかしたらこれが運び屋のアビリティによるものなのかもな。アビリティは個体ごとに違ってくるはず。だとしたらミミと出会ったのは幸運だったのかもしれない。俺の武器生成アビリティと組み合わせれば最強だ!5kgなら81mm迫撃砲のHE弾を持たせられる。敵の周囲に落とせば十分な致命傷を与えられるぞ!


勇人はミミの方に手を回して抱き着く。

ミミは少し嬉しそうな表情をしていた。

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