【雑記】DIC川村記念美術館
https://kawamura-museum.dic.co.jp/news/08-notice/
DIC川村記念美術館が休館するそうだ。本当に悲しい。株主からの提言で、縮小移転、あるいは美術館運営自体の停止の、ふたつの選択肢が検討される、と。
企画展はいつも上質。天井が高く広々した白い展示空間はミニマリズムやカラーフィールドの作品ととてもよく調和する。アクセスがやや悪いのはデメリットと言えばばデメリットだが、東京駅から美術館まで直行バスに揺られる七十分ほどの時間は、平日の
けれど私にとっては、DICと言えば、なによりもまず、「ジョゼフ・コーネルの作品を見られる場所」だ。手前側が開いた四、五十センチほどの木箱の内側に、思い入れのある大事なものばかりを繊細な手つきで組み合わせたように、小さな傷つきやすい世界が築かれている。作品を鑑賞するときには、自然、腰を屈めて箱を覗き込むようなかっこうになる。大型の絵画作品などとはまるで逆で、展示空間のなかで自らの存在を誇示するのではなく、静かにそこに佇み、そっと鑑賞者を招き入れる。2 年前、新たな作品の収蔵にあわせて開かれた、美術館所蔵のコーネル作品全てを一室のうちに展示する小企画は、私がこれまでに観た展覧会のなかでも、一、二を争うくらい深く印象に残っている。
その美術館が、なくなってしまうかもしれない。コーネルの作品をあの空間で観ることが、できなくなってしまうかもしれない。それどころか、もしコレクションが国外に売却でもされてしまったら、私はもうあの作品たちを二度と観られないかもしれない。とても悲しい。私は、あの作品たちは、あの場所に行けば、いつまででも観られるものと思い込んでいた。
先日、DICを訪れた。休館まではまだ五ヶ月ほどある。けれど、私が訪れていたときに展示されていたコーネルの四つの作品は、一週間後には展示替えになってしまう。それまでに私がもう一度美術館を訪れることはできそうにない。別れが惜しくて、帰りのバスの時間ぎりぎりまで、彼の作品を見ていた。
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