第7話「作者の頭が悪いので成立しない勉強回」
「私に負けない頭の良さね、なら試してみる??」
「悪くない...勝ったほうが緋美華を貰う... ... ...ということで」
水無は自分もひよりに負けないくらい頭が良いので、緋美華に勉強を教えられると主張。
だがそれが別にひよりの逆鱗に触れる程ではないが、"闘志"に火を付けたようだ。
「いや、緋美華の意思を無視するわけにはいかないでしょ」
「ひより...」
「あっ、あっ、えっと、別に私はアンタが欲しいとかじゃなくて、飽くまでも私自身のプライドの問題というかっ...!!!」
「もう〜!ひより〜!!」
「...」
この幼馴染コンビの掛け合いに、水無は、なんか戦う前から敗北感に襲われた。
「とにかく戦おう風見 ひより。じゃあまず私から、一+一は?」
「なんかやる気失くしてる!問題適当すぎるでしょ!!」
「はいはーい、一+一は二でーす!!」
緋美華は元気よく挙手すると、すかさず回答してみせる。
「アンタが答えるの!?」
「わーい、ひみか、天才、正解」
「正解しちゃった!!」
「よってあなたが不戦勝です、おめでとうー」
水無はジト目のまま、ひよりに超むず痒いテンポの拍手を送る。ささやかな嫌がらせ。
「なにもおめでたくない...というか、どのみち緋美華の頭は凄く悪いから勉強会はやるわよ!」
「そんなあ~っ、殺生なあぁ!!」
「諦めることね...ったく、スポーツ得意な人も大抵の場合は頭もよかったりするものなんだけど」
「ごめんー!!」
「ま、まあそのぶん、アンタに勉強教えて、一緒にいる時間が増えるのは悪くない...とか思わないことも、ないんだからねっ」
「あからさまなツンデレ感が増してる...」
結局どう転んでも、緋美華には地獄の勉強会が待ち受けていて、逃げる事など許されないようだ。
「鎖国をしたのは!」
「よしだとくじろう!」
リビングから二階にある緋美華の部屋に移動。その部屋の主は頭の良い幼馴染から、勉強を教えてもらっていた。
早退した本日受ける分だった箇所に加え、今まで習ってきたところの復習もする。
そうやって数学、現代文、英文、化学などを教えていたひよりはいま、緋美華に日本史を教えているところである。
「ばーつ!徳川家光よ!!ちなみにこの時はまだ鎖国なんて言葉はなく、1801年に志筑忠雄が使ったのが初めてだと言われているわ」
「はーい!」
緋美華は間違えたところをノートに書いてゆく、意外にも字は綺麗で見やすい。
「次の問題よ、刀狩令を出したのは??」
「たなべさくろう!」
「違いますね、豊臣秀吉です!!」
「ちぇーっ!!」
勉強会開催から既に三時間が経過しており、水無なんかはもうベッドの上でスヤスヤ寝ていると言うのに、緋美華は馬鹿なりによく頑張っている。
「三問目!生類憐れみの令を出したのは?」
「で・れーけ!」
「なんでさっきから土木偉人の名前ばっか答えてんの!?ある意味凄い気がしなくもないわ!!」
このあとも勉強会は続き、時計の針は既に二十時をさしていた。
「やば...熱が入りすぎたわ」
「おつかれさまっ、ひよりっ、今日はありがとね」
「アンタは元気よねえ、授業中は寝てばかりなのに、勉強会のときだけ!」
人に教えるのもかなり疲れるから、ヘトヘトなひよりだが、頭悪いのに五時間以上も勉強した方だって相当に疲労している筈なのに、緋美華は全くそんな様子を見せない。
「だって大好きな幼馴染の授業なら、勉強自体はかなり嫌だけど、全然マシ的なー?」
「...もうっ、教えるこっちは色んな意味で疲れるってのにっ」
大好きどころか愛する相手を個人指導中は、冷静さと期待を抑えつけるのと、どう勉強を教えるかというのを一つの脳でやらねばならないので、そのぶん、かなり負担は大きくなるわけだ。
「春野、お前今回は赤点を余裕で回避したな」
それから暫くして、緋美華は担任から答案を返された。お褒めの言葉のオマケ付きで。
「うん!ひよりに教えてもらったんだよ〜!」
「そんなことだとは思ったが、よく頑張ったな」
「ありがと〜!!」
それから一日中、ニコニコ満面の笑みを浮かべ続ける緋美華の顔を、隣の席から幾度となくチラチラ見て授業に集中する事ができない風見 ひよりであった。
それでも彼女は、次回もクラスどころか学園内でも一位の成績だったのだが、非常に羨ましい限りである... ... ...。
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