第12話 海賊(2)
『分かったー!』
『やろやろー』
イルカたちは狙いを定めた1隻の船の下へと泳いでいくと、列をなしてグルグルとまわり始めた。
一体どうやって沈めるつもりなんだろ。
『そーれ、そーれ、グルグルまわれ!』
『そーれ、そーれ、グルグルまわれ!』
イルカ達のまわる動きに合わせて、海水もまた、グルグルと大きな渦のような流れが出来始めた。
水面に顔を出して船の方を見ると、海賊船のうちの1隻が舵を失いくるくるとまわり始めている
。海賊たちは何が起こっているのか分からず騒ぎ立てている。
なるほどねぇ。渦潮を作って沈めるってわけか。流石は頭脳派。
メッテが感心しながらまわる船を眺めていると、ブシューっと言う潮吹きの音と共に巨大な影が現れた。
『よおメッテ、久しぶりだな。アイツら何やってんだ?』
「あら、マッコウクジラさん久しぶり。今ねイルカ達と船を沈める遊びをしているの」
『はぁん? そんな事して何が面白いんだか。アイツらは本当、よく分からん事するの好きだよな』
「でもあんなに大きな船を沈められたら、すっごくカッコよくない?」
チラリとマッコウクジラの方を見ると、ウズウズしだした。
『あれを沈めたらカッコイイのか?』
「ええ、とっても。惚れちゃうくらいに。貴方みたいに身体の大きなクジラが船を沈めたら、すごい眺めになりそうね」
『よぉし、分かった。見てろよメッテ。俺がいっちょ、あの船をドカンと1発で沈めてきてやる』
「ほんとぉ? でも無茶はしちゃダメよ。それから沈めていいのはこげ茶色の船だけね 」
了解。と尾びれで返事をすると、マッコウクジラは船の真下へと潜り込んで一気にその身体を急上昇させていく。
どーーーんっ!と言う音と共に一気に船体が押し上げられると、あっという間に海賊船がひっくり返った。
それと同時に、隣でイルカたちの作る渦に弄ばれていた船も、とうとうバランスを崩して横倒しになった。
「みんなすごーーい!!」
『でしょでしょ!あぁ楽しかった。メッテ、また楽しい遊び思いついたら教えてねー』
『ばいばーい』
イルカたちに手を振って見送ると、マッコウクジラもやって来た。
『見てたかメッテ?』
「もちろんよ! 本当に1発で船を沈めるなんて、流石はあのダイオウイカを食べるだけあるわね!!」
チュッと目の横にキスをすると、マッコウクジラは腹ごしらえしてくると言い、盛大に潮を吹いて照れくさそうに去っていった。
本当は残りのもう1隻も沈めてもらいたかったけど、友達に無理をさせる訳にもいかないしね。あとは自分で何とかしよう。
残っている海賊船の下に潜り込むと、メッテは持ってきたトライデントを船底へと思いっきり突き刺す。
「かったいわね!こんな事ならもっと筋トレしとけばよかった」
何度もトライデントを突き立てるが、なかなか分厚い板に穴は開かない。
すると突然隣に、ドンッ!とメッテが突き刺したトライデントとは別のトライデントが突き刺さった。
横を見るとニカッと男性が笑いかけてきた。
「手伝うよ」
「お義兄さま!?」
男性は長女の旦那様で、メッテの義兄だった。
「メッテーー! 手伝いに来たわよー」
下を見ると、5人のお姉様達が揃って手を振っている。そしてその周りには男衆も。
「この船を沈めればいいの? さあみんな、思いっきりやっちゃって!」
長女が男衆に声をかけると、一斉にトライデントを船底へと突き刺し始めた。
「え? どうして……お姉様?」
「あなたの愛しい王子様がピンチなんでしょ? エラがメッテの様子がおかしいって言うから魚たちに話を聞いて来たのよ」
「たとえ結ばれなくたって、叶わぬ恋だって、好きな人が死んだら嫌よね」
「喋ってないでとっととこの船しずめちゃお!」
皆で海賊船の船底をトライデントでこれでもかとつつきまくる。
するとバキバキバキッと音をたてて、船が崩れて沈んできた。海賊達の悲鳴と助けを求める声が、先に沈めてもらった船に乗っていた海賊達に加わって更に騒がしくなった。
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