第1.5話

妻兼現魔王であるライラさんから、自身の感情が天気に現れると気付いたと報告されたのは、つい最近のこと。オレは彼女が魔王になってから数日で分かっていたから、今更気が付いたのかと思ったら、怒られた。ーーというよりは拗ねられたに近い気がする。どちらにせよ可愛かったので、自分で気付くまで黙っていたのは正解だった。

……とまぁ、そんな惚気話は置いておいて。

買い出しに出た時は晴れていた魔王城周辺は、帰る頃には地面にそこそこ積もる程の雪が降っていた。雪が降る時は、寂しい時やオレに構ってほしい時だと知っているから、急いで城に入る。しかし、大抵そういう時にある出迎えが今日は何故か無かった。何となく嫌な予感がして、荷物を玄関に置きっ放しで謁見の間に向かうと、そこには椅子に腰掛けて膝を折り抱えて眠っているライラさんがいた。

……、一体この人は何をしているのか。

いつ勇者が攻めてきてもおかしくはない状況なのに、この人は何故無防備にこんな所で寝ているのか。雪が降っているから身体が冷えると思うのに何も防寒をしていないし、縮こまり方がまるで初めて会った時の彼女のようで。ステータスで体力はまだまだあることを確認したのに怖くなるのは、瀕死の彼女を知っているからか。一つ溜息をついてあの時と同じようにお姫さま抱っこで彼女を抱き上げ、彼女の自室を目指す。その途中で一度目を覚ましたが、天候の制御で少なからず疲れていたのだろう。すぐに眠りについたライラさんの額に口づけをする。

「おやすみなさい、ライラさん」

彼女が次目覚める時、何故か晴れている空を見て首を傾げるのだろう。そう窓から差し込む光を見て思うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王と従僕の結婚生活 まゆずみ @0yzm_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る