第9話 エトス
結局ハルトの
「全く
「確かに、魔法使いなんて別にならなくてもいい立場なのにわざわざ魔法使いになるなんて」とログが同意した。
「なあレミリアはどうして魔法使いになったんだ?」そうハルトが質問した。
「なんで? 魔法使いの家に生まれたからに決まってるでしょう」
「それだけ?」
「それだけってそれ以外にある? 魔法使いはこの世界の秩序を司る、素晴らしい存在なのよ。あんたこそどうして魔法使いになろうとしてるの?」
「どうしてってなんとなく、というかなりゆきで」
「なんだそりゃ? わざわざならなくてもいい魔法使いになるなんて酔狂なやつだ」そうログが言った。
ウェシルは木にもたれながら寝ていた。
するとケイトが息を切らして走ってきた。
「よしハルトわかったぞ。
「よしハルト、魔力を覚醒する修行をするぞ」
「ちょっとハルトはわかるけどなんで俺までいなきゃならないんです? レミリアやウェシルは寮で休ん――自習なのに。俺はメディオケじゃないんだぞ?!」
「ログも上手く
「ちぇっ」
「それでハルト、お前に教えるのに適任を呼んできた」
「適任?」
「そうだ。
「おーい、ケイト!」と遠くから叫びながら優男風の男が走ってきた。
「おいスタンダール遅いぞ」
「いやケイトが速いんだよ」
「そんなことで初等生の見本が務まるか?」
「ごめん、ごめんって」
「まあいい。紹介しよう。彼はスタンダールといって私と同じ上等生だ」
「よろしく」と優男のスタンダールが挨拶した。
「彼は
「ああ、そのつもりです。それでハルトくんっていうメディオケは?」
「ああ、僕です」
「こういうのは今はどの段階なのか見極める必要がある。ハルトくん、なにか感じるか?」そうスタンダールが聞いた。
「どういうことです?」
「それじゃあ君は?」
「あんたが
「いま彼は僕の
「感覚がない? どういうことです?」
「例えば樹木はものを見ることができないだろう? 花は言葉を聞くこともできない」
「はあ……」
「それと人間だってどんな美味しいスープでも指を突っ込んだだけでは味がわからない。味は舌に触れて初めてわかる、それと同じだ。つまり君はまだ
「当然だ。俺はメディオケじゃない」
「ならログくん、
「ふん、そんなの簡単だぜ」するとログが気張った「はああああ!!」
「駄目だなログ、
「……」とスタンダールは呆れていた。
「おいおい何だケイトじゃないか」不意に声が響いた。ある上等生が広場の上から4人を見下ろしていた。
「エイハブ……」そうケイトが反応した。
「おやおやこれは珍しい奴がいるな。ええ?、スタンダール」
「えっああ、エイハブくん。ごきげんよう」そうスタンダールが笑顔で答えた。
「ほう、今年の初等生どもか……どうしたスタンダール? いつからお前が人に教えられるほど出来た人間になったんだ? ええ?」相手は悪意を持って相対している。
「いや、実はケイトから頼まれて……
「はははははっ!
「エイハブ、なんて物言いだ! 魔法使いには掟に反するぞ!」そうケイトが反論した。
「魔法使いの掟だ?
「……」
「だがそれが
「……そんなつもりは毛頭ないよ。僕はただ初等生のためになにか力になりたいだけさ」
「ふん、同窓の面汚しがお前が一丁前に魔法使いぶるなよ。俺はお前が魔法使いだなんて認めてねえ」
「……」
「うるせえな」そうログが呟いた。
「ああ?」
「何かと思えばくだらねえこと言いやがって」
「なんだと?」
「邪魔なんだよ。用事がねえならさっさと消えろよ。そもそも誰なんだお前? いきなり出てきて人の非難してるんじゃねえ」
相手は静かに怒りの表情をして
「初等生のクソガキが、ぶち殺されてえのか?」
「上等だ。やってみろよ」
「ログ……
「ふん、ケイトお前もこんな奴らの指導役なんて……落ちたものだな」そう吐き捨てて帰っていった。
「なんなんだあいつ?」とログが言った。
「エイハブは魔法使いの名家の生まれでプライドが高いんだ」そうケイトが説明した。
「プライドが高いって……掟では魔法使い同士は争っちゃいけなかったんじゃないのか? 随分と仲が悪いこと」と軽い調子でログが言い放った。
「魔法使いも人間だ。掟通りにはいかない」とスタンダールが答える。
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