第30話 平気で人殺す系の人

「死んだのですか?」そうハルトが狼狽しながらカンハに尋ねた。

「こいつの息の根は止めた。だが」

「だが?」

「フレイドのくせに歯応えがなさすぎる。あいつはこんな簡単にやられたりはしない」

 男の胸からは赤黒い血が流れていた。目は見開いて口からも血があふれている。間違いなく死んでいた。


「もしかしたら魔法でこの男を操っているってことですか?」

「はあ……」カンハがため息を吐いた「魔法で人間を操れることはできない」

「え?」

「魔法で操れるのは下等な生物だけだ、トカゲや蛇ぐらいが限界だろう。人間のような高度な生物を操れることはいくらフレイドでも絶対にできない。この私でもな」

「ならこの男があなたの弟子だったフレイド本人なんですか? あなたが殺したと言っていた」

「さあな」と素っ気なく言った(だがこの男からフレイドの魔力を感じた。それにこのハルトとかいう学生からもフレイドに近いなにかを感じる)

「そもそもあなた自分の弟子を殺したっていってたじゃないですか」

 カンハは倒れている死体を見下ろした。そして彼女はその死体を持ち上げると肩に抱えた。

「この死体は私が預かる。色々と調べたいことがあるからな」

「はあ」

「それと今日の出来事は学校や魔法協会に言うな」

「えっ?」

「色々と面倒になるからな。こいつがお前を襲ったのは明確な事実。殺されても文句はない。それにお前の仲間も無事だから適当に言っておけ。だから事を荒立てるな」

「そんなこと言ったって……」

「ハルトとかいったな」

「はい」

「今後貴様と話すことがあるかもしれないな」

 そう言ってカンハは歩いて去っていった。


(フレイド、そうだその名前だ。夢の中でその名前を呼んでいた。もしかしてあの夢に出てくる女性はカンハという先生なのだろうか? だがどういうことだ? わけがわからないぞ)と困惑しながら去っていくカンハの背中をみていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る