第12話 甲冑野郎
夜になってハルトはベッドに横になっていた。まだロウソクの明かりをつけてログと談笑していた。
「どうだハルト、
「いいや全然、未だに感じることすらできない」
「はははっお前は魔法使いの才能がないんだよ」
「うるさい。なあ本当に
「なにが?」
「僕を騙しているんじゃないの? だって同じ人間なのに感じられる人間と感じられない人間がいるなんておかしくないか?」
「おかしいのはお前だよ」
「止まれ! いい加減にしないか!」割れた窓の外から女性の声が響いてきた。
「なんだなんだ?」とログが言った。
「ケイトさんの声だ」
ハルトは燭台を持ってログと一緒に割れた窓から外へ出ていって声の方向へ向かった。しばらく進むとケイトが道の真ん中で誰かを呼び止めていた。
それはあの例の騎士だった。頭から足まですべて銀色の甲冑に包まれていてその素性が伺いしれない。そして右手に持った剣を地面に引きずりながらたどたどしい足取りで向かって来ていた。
「ケイトさん!」とハルトが背後から呼んだ。
「ハ、ハルト! ログ、どうして来た!?」
「だってケイトさんが騒いでるから」
「知ってるぞこいつ、俺達の部屋の窓を割りやがったのもこいつだ」とログが言った。
「なんだと? 止まれ! もうイタズラは学校から禁止されているはずだ。バレたら退学になるぞ」そう静止させようとしたが以前として甲冑は向かってくる。
「もうめんどくせえな。こんな奴は学校に突き出して退学にしてもらえや」
「ログ! 私と同じ上等生や後輩の中等生なんだ。仲間を退学にすることなどできない」
「ウォォォォ!」甲冑が吠えると剣でログとケイトに切りかかってきたが冷静に避けた。すると今度はログに襲いかかってきた。まっすぐと向かってきてためらいもなく剣を振った。
「わっ! なんだなんだ」避けながら言った「馬鹿野郎、殺す気かよ」
二人とも
ハルトは燭台の火に顔を照らされながらなぜ自分だけ攻撃されないのか不思議に感じていた。
三人は後退し、説得したが相手はお構いなしに切りかかってきた。
甲冑はやたら滅多にケイトに切りかかったがケイトは避けていた。
「おい、いくらなんでもやりすぎだ! 一体誰だ? 顔を見せろ!」とケイトが初等生たちの前に立って体を張って騎士を止めようとした。
「いい加減にしろよこの野郎!」そうログが甲冑に向かって叫んでいた。
しかし甲冑はお構いなしに鈍重な動きでケイトに切りかかったが軽く避けた。しかし後ろに下がったはずみで木の根につまずいて尻餅をついた。
(まずい! 蹴り飛ばすしか回避方法が……だが同じ学校の生徒を)
騎士は地面に倒れているケイトに対して剣を振った。だが剣が当たる寸前、その時に不思議と騎士の動きが止まった。
その場にいた人間は奇妙なある方向に圧迫感を感じていた。騎士が振り向くとその視線の先にはレミリアが立っていた。
「フッ……ずいぶん暴れているようだな」と余裕のある表情でレミリアは体内に
「ウォォォォ!!」甲冑がレミリアに向かって行った。
「レミリア危険だ! やめろ!」そうケイトが静止した。
「こんなわからずや、実力行使しなきゃ」
しかしレミリアは更に
ハルトはその時、生まれて初めて
「ハルト、魔法使いって者がどういうものなのか見せてやる」
レミリアは更に
「レミリア、何をしている! 無茶するなっていっただろう」そうケイトが駆け寄って叱った。
「だってもうイタズラは禁止されています。それをやって、しつこいですし、こうでもしなきゃ止まらないでしょう」
「同じ学校の仲間なのだから話してどうにかしないと」
「はーいわかりましたって」
「……おいあれ動かないけど、大丈夫か?」と倒れた甲冑を見てログが言った。
「気絶してる……のかな?」とハルトがいった。
ログが兜に手をかけて恐る恐る外すと人間の顔が現れた。
「し……死んでる……」
甲冑を着ていた青年は青白い生気のない顔をしていた。目を見開いてどこかを見つめている。周りの生徒達が騒然とする。そしてハルトにはこの顔は見覚えがあった。以前ログと口喧嘩していた上等生のエイハブだった。それがなんと鎧を着たまま死んでいたのだった。
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