第7話 寮生活の始まり
「おや君も合格者か」と女の子が駆け寄ってきた「よろしく」
「えっ? あっああよろしく」
「今日から僕たちはルームメイトだ」
「えっはあ」女の子も一緒の家に住むのかとハルトは思った。
「後ろにいるのが同じくルームメイトのログ。おい、君も挨拶しないか、ルームメイトだぞ」と後ろの男に向かってその女の子が言った。
もう一人の方は気だるそうに椅子に座って行儀悪く足を机の上に置いている男だった。
「へいへい、うるさいな。挨拶なんてどうでもいいだろ」と男はやる気なさそうにそっけなく言った。鋭い目をして茶色の髪が逆だった男だった。
「全くログは仕方がないやつだな。礼儀をわきまえないと家名に傷がつくというのに。僕のことは挨拶しなくてもわかるか、僕の名前はレミリア・カーバインである
と帯剣したレイピアの柄に手をおいて食い気味に仰々しく挨拶された
「はあ」
「君も名前は聞いたことがあるだろ? あのカーバイン家の者だ」
「いえ……知らないです」
「知らない! 魔法学校に入学希望者でまさかカーバイン家を知らぬ者がいるとは……ものを知らないにも限度があるぞ」
「はあ」
「それで君の名前は?」
「ああハルトです」
「ハルト? よろしく頼む。これから僕たちは魔法使いであり、ルームメイトだ。一緒にアリストンを尊敬し、魔法界の発展のために尽力しよう」
魔法使いの家系出身でないハルトにはどうしてこんな初対面でこの女が馴れ馴れしくしてきて理由のわからないことを言ってくるのか理解できなかった。
突然扉が開いた。するとあのときハルトの馬車の切符を盗んだ女の魔法使いが入ってきた。相変わらず大きな本を背負って冷静な顔つきをしていた。
「あっ! お前!」とハルトが叫んだ。
「なんだお前、受かったのか」と平然とした口調で言った。
「なんだじゃない。お前が切符を盗んだせいで大変な目にあったぞ」
「盗まれるほうが悪いんだ。そんな呑気にしていると魔法使いなんて務まらない」
「話をすり替えるな!」
「それにしてもどうやって入学した? お前が魔法を使えるとは思えないが」
「あっなんだと? ふざけんなって泥棒が!」
相手は何も答えず少し奇妙な間があった。なにか空気が凍りついたような気がした。
「おい! なにをしている」とレミリアはその盗人女に向かって叫んだ。
ログは神妙な顔をしてその女を見ていたがハルトにはなんのことかわからない。
「ほら
「
「魔法使いは掟と修羅の世界だ。お前のような一般人が好き好んで魔法使いになる理由はない。さっさと自分の村に帰るんだな。それが懸命だ」
「ハルト……まさかお前」とレミリアがつぶやいた。
「えっ? なに?」
また扉が開いてまた女子生徒が入ってきた。すでにこの学校の制服を着ている女の子だった。ハルトたちよりも年長の生徒で背も高かった。
「よし、揃っているな。ええっとログにレミリア、ウェシルとハルト。私のこの学校の上等生で、名前はケイト、君たちの指導役になった」と女生徒は4人に告げた。
その女生徒はメガネを掛けて、髪は首元で揃えられていて顔は利口そうであり、真面目そうな人であった。
「それで指導役? なんだそれ」そうログが言った。
「まず初等生である君たちは指導役である上等生に師事して、魔法使いの心得や、学校のことなどを学ぶことになる。それで指導役である私も君たちを寝食をともにする。つまり君たち4人でなく私もここで生活をともにする。これはアリストン魔法学校の伝統であり、魔法使いの教育法だからだ」
「なんだよ授業だけじゃなくていつでも指導されるのかよ」とログが不審げにつぶやいた。
「指導役って確か成績優秀者しかなれないのですよね」そうレミリアが尋ねた。
「ま、まあな私はそうでもないんだがな」そうケイトが照れた。
「僕もケイトさんのように優秀者になりたいです」そうレミリアが意気込んだ。
「いいか、お前たち魔法使い同士は特別な絆で結ばれているんだ。それをこの共同生活で身につけてもらう、そのためにアリストン魔法学校は全寮制になっている」
「私は馴れ合いなんてするつもりはない、この学校を卒業さえできればいい」そう泥棒女が言った。
「全く、こういう和を乱す人がいると困ったわ」とレミリアが反応した「あなたはアリストンの教えを知らないのか?」
「もちろん知っているがたまたま同級生になっただけで仲間だなんておこがましい」
「あんたがそうやって非協力的な態度なのは構わない、けどくれぐれも僕の足を引っ張るなよ!」
「勝手にしてくれ」
「いい加減にしないかふたりとも!」とケイトが一喝した。
ログとハルトは女性二人が険悪で呆れ気味に目を見合わせた。
「それでまずは部屋の割り振りだな。指導役である私は2階の一人部屋を使うから、男子のログとハルトは1階の部屋で、あとはレミリアと残った2階の下手で寝泊まりしてくれ」とケイトが言った。
「ちょっと待ってくださいケイトさん! こんな人と一緒の部屋だなんて」そうレミリアが反対した。
「ならレミリア、俺と一緒の部屋でそのでかい本を持ってるやつとハルトが一緒になればいいんじゃないか?」
「はあ? 男のあんたと一緒なんてもっと嫌だよ」とレミリアが一蹴した。
「なんなんだよ……」そうログがつぶやいた。
「レミリアとか言ったな。不満があるのなら外で寝ればいい。広いぞ」とウェシルが言い放った。
「外で? あんた何言ってるの?」
「魔法使いたるものいかなる場所で休息を取らなければならない」
「あんたね、それとこれとは別なのよ、なんで学校生活で野宿しなきゃいけないの」
「お前たちいい加減にしろ! ログとハルトは1階の部屋、それとウェシルとレミリアは2階の部屋だ! 異論は認めない」
ケイトはバッチを取り出して机に置いた「このバッチは初等生のバッジだ。それぞれ今日からつけるように。魔法学校で初等生が授業が受けまで少し時間がある。だがその前に指導役である私が魔法使いの心得を教える。心しておけ」
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