第7話 魔法学校に到着

 馬車の切符を盗まれて仕方がないから夜通し魔法学校まで歩いてきた。ハルトは足が痛くて疲れてもう何もかも嫌になってきた。


 そしてなんとか魔法学校にたどり着いた。魔法学校は小高い山の上にあってその下に町がある。町の門をくぐって入るとすぐに奇妙な様子に気がついた。この町は白を貴重とした建物だけが建っていて空が青くて美しい街並みであった。しかしそんなことではない。町に誰一人いないのだ。店のようなところも全部閉まっている。人の生活している痕跡が消えている。


「おかしい……静かすぎる……どうして人影がないんだ」


 ふとハルトは噴水のところにやってきた。透明な水が流れていて美しさすら感じた。そこで突然足音が響いてきた。

「待てー」という女の子の声が響いてくるとハルトの前まで走ってきた。

 その女性は何か丸い飛び跳ねるボールみたいなのを追いかけて噴水を一周するとハルトの目の前で転んだ。

「だっ……大丈夫?!」

「イテテッ」と彼女は立ち上がった。

 ハルトはなんて美しい人なんだと思った。綺麗なカールをまいた金色の髪に、おっとりとした瞳。こんな綺麗な人をハルトは人生で見たことはなかった。

「どなたか知りませんが気遣っていただきありがとうございます」

「いえ」と緊張しながら答える「なにをしてるの?」

「いまアリストン魔法学校の入学試験をしてまして」

「はあ」

「あの玉を捕まえるのが試験なんです」

 ハルトがボールを見てみるとなぜか自律的にボールが飛び跳ねている。

「あなたも入学試験を受けているんじゃないんですか?」

「いやちょっと遅刻して」

「あらそうですか」とおっとりとした口調で答えた。

「それで試験はどうやって受けたらいいかわからなくて」

「そうですか、ならまず学校へ行ってください」

「学校?」

「ええ、あの丘の上にありますでしょう。あれがアリストン魔法学校です」

 ハルトは丘の上を見た。大きな建物が町を見下ろすように建っている。荘厳でなかなか歴史を感じさせる建造物だった。

「ありがとう」

「どういたしまして。もし入学できたら同じ学年ですね」

「ああ」

 

 ハルトは学校まで走り出した。急がなくてはならないもう入学試験は始まっている。早く手続きを済ませて、入学試験を受けなくてはならない。

 周りは緑色の芝生で、そこの石畳の道をかけあがっていった。すると学校の門の前に律儀に『入学試験受付』と書かれている天幕が立てられていてそこに人が数人の大人が待機していた。


「あのー」とハルトは天幕にいる男の人に声をかけた。

「あ? なんだお前?」

「いやあの」

「おいおい今日がなんの日か知っているのか? 入学試験だ、この街全体部外者は立ち入り禁止だぞ。さあ帰った帰った」

「その魔法学校に入学したいんですけど……」

「もう入学試験の手続きは終わったぞ」と毅然と言い放った。

「えっ? それってつまりどういうことですか?」

「また来年っていうことだ、残念だったな」

「そんな……」

「わかったら帰るんだ」と無下に言われた。

「僕は入学しないといけないんです」とハルトは言い放った。

「そんなこと知ったことか」

「あっそうだ。実は紹介状を貰ったんです。今日までにこの学校に来るようにって」

 男は無造作に書面を確認した。そして後ろにいる女性にこういった。

「これルイス・クロスの推薦状です。どうします? カンハ先生」

 その女性が長椅子椅子に横になって魔法使いらしい黒い大きな帽子で顔の上半分を覆っていてやる気のなさそうに座っていた。

「推薦状だと?」と半目で答えた。

「ええ、けどもう手続きの期限が過ぎてます……」

「ルイス・クロスか……まあいい、合格だ」

「えっ?」とハルトは驚いた。


「カンハ先生、試験も受けずに合格などと」と同僚が反論した。

「この私が今年の入学試験の全権を任されている。私が合格だといえば合格なのだ」

「くっ……いいんですかカンハ先生、私は今回のことを校長に報告しますよ」と男が言った。

「構わん。さあこいつを案内してやれ」

「さあお前、こっちだ」とハルトは男の後ろに歩いていった。

 校内は芝生が敷かれていて歩いている横に大きな校舎があった。その校舎沿いを歩いていると校舎の左側に別の講堂というか塔のような場所があった。

 校舎の中に入るかと思ったが建物を通り抜けてどんどん鬱蒼とした森へ入っていった。

「あのーどこにいくんですか?」

「初等生はこっちの森の寮で生活してもらうことになる」

「寮?」

「そうだ。アリストン魔法学校は全寮制の学校だ。三年間みっちり魔法使いとしての心を学んでもらう」


 新入生たちは学びの森と呼ばれる学校の北側にある森で生活することになる。校舎から離れたその森には家が点在していてハルトのような初等生はそこで生活をすることになり。

 だが上等生と中等生は学校に隣接している寮に住むことができるが初等生たちはその学びの森にある不便な家でグループに別れて生活することになる。各家は2階建てで数人が生活するのに十分な広さがある。

 ハルトは鬱蒼と生い茂る森の中を進んである家に到着した。木々が生い茂り、光がささないその空間に歴史を感じさせる木造の家がぽつんとあった。

「さあ、ここがお前の暮らす寮だ。後で指導役が来るからそれまで大人しくしていろ」

 ハルトはその家の扉を開けるとすぐに机と椅子が目についた。そこに2人の新入生が座っていた。

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