第3話 野盗襲来

 ハルトは仕方がないから一人で魚を食べて村へ帰ってきた。下を向きながらとぼとぼと帰ってきた。しかし村を歩いていると様子がおかしいことにような気がした。みんな自分のことを見て何やら噂をしているように感じて。みんなどこかよそよそしいような気がした。

「ほほっほハルトどうした? 何やら落ち込んでいるな?」と老人が話しかけてきた。

「村長」

「どうしたなにかあったのか?」

「いや別に」

「ミーグリもなにか様子がおかしかったがな」

 ミーグリは村長の息子である。

「別になんでもないって」

「ハルト、もしかして魔法でも使ったんじゃなかろうな?」

「え?」とハルトはギクリとした。

「魔法を使ってはならない」

「どうして?」

「魔法は魔法使いしか使えぬ禁忌の術だ」

「も、もし使ったら?」

「その時はこの村を追放となる」

「ええ!」

「どうして」

「なんだハルトお前さん知らないのか? 魔法は魔法使いしか使ってはならない法律なのだ」

「そんな……」

 村長は笑った。

「ははは、まあ魔法なんて魔法使いしか使えぬ。いくらお前が魔法を試そうとしても発動などせんから安心しろ」

 すると村の出入り口のほうが突然騒がしくなった。

「うるせえ! 大人しくしろ!」と叫び声が響いてきた。

 ハルトが目を向けると村に4人組の野盗がやってきた。


荒々しい格好をした野盗の4人組が村に入ってきていた。

 ハルトと話していた村長はすぐに彼らの元へ向かった。

「なんなんだお前たちは?」と村長が言い放った。「お前たち、こんなところに来ても金も何もないぞ」

「安心しろ、危害を加えるつもりはねえ。金なんていらねえ。ただ食事と医療品をくれればいい」その中でも一番体格のいい男がいた。彼は脇腹から血を流して怪我をしていた。刃物を手に持った彼がリーダーのように振る舞っていた。

 そこで少年のユーグリがやってきた。この日は働き盛りの男たちは町へ行っていて、女と子供と老人しか残っていなかった。

「ふざけるな。誰がお前たちの命令に従うか! さっさとこの村から出ていけ!」とユーグリが言い放った。

 頭領は手に持っていた刃物でユーグリの頭と胴体を切断した。

「ミーグリ! ミーグリ!」と倒れたミーグリに村長が呼びかけた。

 しかしもちろん返答などない。ミーグリはただの骸となっていた。息子を殺されたが村長は気丈であった。

「いいか、危害を加えないというのはこっちの要望通りにしていたらということだ」

「村人を集めるように言うんだ」

「わかった」

 脅された村民たちは逃げないように一箇所へ集められた。

 村長というのはこの村で一番立派な家に住んでいて、家の敷地は村の広場も兼ねていて村の祭りや集会なんかが開かれる場所となっていた。そこに残された村民が集った。


「ねえハルト」と隣で座っていたユイが小声で話しかけてきた。

「うん?」

「ねえハルトったら!」

「ミーグリのやつが死んだんだ」と茫然自失としてハルトは呟いた。

「ハルト……」


 リーダーのような男は脇腹を抑えて苦しそうにしている。薬草などで治療したが効果は無いようである。そこで見張りをしていた手下が急いでやってきた。

「どうした?」とリーダーが聞いた。

「魔法使いが向かってくる……この道の先から歩いてくる」

「クソが」と吐き捨てた。そして村人に向かって「おいお前たちは普段通りにして魔法使いを気にするな。魔法使いに俺たちの存在がバレないようにしろ。いいか、もし教えたり、不自然なことをしてみろ。この娘は殺す」と今度はユイの手を引っ張った。

 ユイは恐怖に怯えていた。

「ユイ! 待て、人質なら僕がなる」とハルトは言い放った。

「黙れ! おいガキ、妙なことをしてみろ。この娘は殺す」とユイの首元に刃物を突きつけた。

「ハルトやめるんだ。落ち着け」と村長が諭した。「おいお前さんたちこの村に魔法使いが来ることは珍しい、普段通りにしていたら逆に怪しまれるが」

「確かにそうだ」とリーダーは納得していた。

 この村長は馬鹿なのかとハルトは思った。

「おい村長、服を脱げ、上着だ」

 村長は言われた通りに脱いだ。

「何をするつもりだ」

「おい、お前これを着て村長のフリをしろ。それであの魔法使いを追い返せ」と手下に命じた。「それに村人だ。お前たちは魔法使いが来たら不自然にならないように、魔法使いをもてなすんだ」

 そうしてリーダー格の男はユイを引っ張って村長の家に入っていった。

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