村を追放された僕は魔法学校に入学してS級美少女たちと学園生活を送る。

タガネ安

アリストン魔法学校編

第1章 村を追放される

第1話 魔法なんて知らない


「…………ド……イド……フレイド……フレイド、フレイド」真っ暗な空間で女性の声が響いてきた。


「なにを言っているんだ?」


「『初級炎魔法レイ・フレイディア』炎を求めた最初の魔法……」


「誰なんだ!?」


 ハルトの目が覚めるといつもの自分の部屋だった。いつものベッド、いつもの天井、窓からはいつもの村の音が聞こえてきた。

 呼びかけてきたのは見知らぬ女の声だった。最近は奇妙な夢をみる。脈絡のない意味不明な夢だ。だが内容は夢から覚めて時間が経つにつれて忘れる。

 

 ハルトはベッドから起きて居間へ向かった。

「なにハルト、まだ眠いの」と母親が言ってきた。

「寝付きが悪くてまだ眠いんだよ」

「また変な夢を見たの?」

「ああ」

「まったく呑気な子だね」

「そういえば父さんは?」

「今日は朝早くからみんなで町に向かったよ」

「ふーん」椅子に座って水を飲んだ。

 

 父さん仕事で忙しい、母さんも家事や村の仕事で忙しい。ハルトは退屈で暇だったから森にいって釣りをしようとした。家を出るといつもと同じ寂しい農村だった。

(ああ、平凡だ。退屈だ。実際僕の人生は平凡な毎日)とハルトは思った。

 村に生まれて畑仕事に精を出して、たまに村の同年代の仲間と魚釣りをしたり、川で泳いだり、狩猟をしたり、新しい料理を作ったりしているだけだ。しかし実のところ、毎日同じことの繰り返しだ。将来は家の跡を継いで父のような平凡な人生を送るのかな。


 川の大きな岩の上に座って釣り糸を垂らしていた。しかしだいぶ時間が経ったのに何も釣れない。

 少し川下の方では同年代の三人組が岩から滝壺に飛び込んだり川遊びをしていてハルトはやかましいと思っていた。


「ハールト、何をしてるの?」と声をかけられた。

 振り向くと幼馴染の女の子であるユイが釣り竿を持って立っていた。

「釣りだよ」

「ふーんそのわりには全然釣れてないじゃん。ハルトは釣りがヘタね」と隣に座ってユイが言った。

「あいつらがミーグリたちがうるさいからだよ」

「ねえ、ハルトって将来どうするの?」

「はあ? なんだ唐突に」

「だってあんたって何も取り柄がないでしょう。それじゃあお嫁さんだって貰えないでしょう、将来どうするつもりなのかなって」

「辛辣だな」

 

 そこでユイが大きな魚を釣り上げた。

「ねえ、ミーグリ! 魚が釣れた! 一緒に食べない!」と遠くで遊んでいる友達に声をかけた。

「おう! 釣れたのか」とミーグリが大声で返した。

 少年少女たちは集まって魚を焼いて食べることになった。友達たちが砂利の上にそこらに落ちていた枝を積み上げた。

「ハルト、また釣れなかったんだろ」とこの中では一番年長者であるミーグリが揶揄してきた。

「うるさい。お前たちが騒ぐからだよ」

 魚を焼こうとしていたが火をつけるのに手間取っていた。

「どうした?」とミーグリがつけようとしている男の子に言った。

「全体的に湿ってて、つかないよ」と火打ち石を手に持ちながら答えた。

 そこでハルトは今日は珍しく夢のことをここで思い出した。そして夢では炎って言っていたと気がついた。

「なら僕がつけてやる」とハルトは木の棒を持って薪に向けながらふざけて言い放った。

「『初級炎魔法レイ・フレイディア』」

 木の棒の先から赤い閃光が飛び出て薪に当たると燃え上がった。

「な、何だこりゃ……」とハルトは驚いていた。

「なっなに!」とミーグリが叫んだ。

「何なんだ、これはどういうことだ?」とハルトは自分でも信じられなかった。

 ユイとミーグリたちは目を丸くしていた。もちろんハルトもみんなも魔法を使ったことがなければ直接見たこともなかった。しかしミーグリだけは魔法の存在は知っていた。

「これは魔法だ……ハルト、お前魔法を使ったのか?」とミーグリは狼狽しながら尋ねた。

「魔法? これが?」

「お前……魔法だぞ……魔法を使ったらどういうことになるのか、わからないのか?」ミーグリが魔法自体よりもあのハルトが魔法を使用したことに驚愕している。

「え? いや」とハルトは平然としている。

「お前これはとんでもないことだぞ」とミーグリは顔面蒼白だった。

「みんな帰るんだ」と年長者のミーグリが言い放った。

「ハ、ハルト……」とユイが呟いた。

「ユイ来るんだ!」そんなユイをミーグリが手を引いてみんなは去っていった。

 森の中でハルト一人で残された。

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