顔

顔

｢人面犬っているだろ？｣

｢何、突然。｣

｢いやさ、学校の怪談とか小学生の時流行ったじゃん？｣

｢あったなー。懐かしい。なんとかって芸人が人面犬の役やってたような……｣

｢そうそう｣

｢で、それが？｣

｢犬じゃないんだけど、ほら、タケルんちって養豚場やってるじゃん？｣

｢あー、そういややってたな｣

｢ 数年に1回、そういうのが生まれるらしい ｣

｢人面豚？遺伝子の異常とかなんかね。ネットでも人面なんちゃら〜ってたまにみるよな」

｢詳しいことは俺にはよく分からないんだけど、その人面豚ってのがさ｣

｢うん？｣

｢全部同じ顔らしい｣

｢全部同じ顔？｣

｢うん。親の代、じーさんの代、下手したらもっと前から、数年に1回、毎回毎回同じ顔した人面豚が生まれるらしい｣

｢……なにそれ｣

｢わからん。で、生まれてすぐ、鳴き声すら聞く前に親父が処理するんだと｣

｢そりゃ……まぁそうだよな……｣

｢でも1回だけ鳴き声聞いたらしい。男か女かわからん声で『ダシテ』って｣