第68話 斉藤くんとサプライズ計画
海の家での一週間を終えた翌日、俺はバイト前に夏祭りの日について調べることにした。
もちろん、安西さんへのサプライズのためだ。
プールを全種遊び尽くすまで楽しんでいた安西さんだ。きっと夏祭りもあまり行けていないことだろう。
ただ問題が一つ。
「安西さん、いつもお手伝いしてるから、夏祭りなんて行けないよなぁ」
安西さんの居酒屋に行ってからというもの、安西さんが働いていないところを見たことがなかった。
もし安西さんがいなかったとしたら、町さんだけになっちゃうしな。町さんがどれだけこなれているとはいえ、あの居酒屋で町さん一人は無理がある。
夏祭りは午後からがメイン。
屋台だけじゃなくて、花火も楽しんでほしい。
海の家の前に町さんが言っていた、手伝ってくれる人っていうのも、俺たちが戻ってきた今はもういないだろうし。
「夏祭りは諦めて違うことにするか。でもなぁ」
そんなことを考えていたら、誰かから電話がかかってきた。
スマホの画面を見ると、そこには「町さん」と表示されていた。
「……もしもし」
『斉藤くん、聞こえているかしら?』
「はい、聞こえてます。お久しぶりです。といっても1週間しか経っていないですけれど。どうかしましたか?」
『ちょっと聞き忘れていてね、電話したの』
「聞き忘れていたことですか?」
『そうよ。斉藤くん、今週の予定を決めていないと思ってね。いつもは今日と同じ金曜日に入ってもらっているけれど、来れるかなと思ったの』
あ、そうか。もうバイトに行く準備をしていたけれど、まだちゃんと相談してはいなかった。
「……えっと、もう行く予定でした」
『あら、そうなの? じゃあ、今日はどうしようかしら』
「えっと、何かあったんですか?」
『……ちょっとね。斉藤くんには悪い話ではないと思うのだけれど。でも、斉藤くんがきたらあの人は――』
あの人って海の家に行っていたときに来てくれていた人の事だよな。
だとしたらそんなに困らなくても。
「町さん?」
『うん、大丈夫だわ、きっと斉藤くんだもの。あ、ごめんなさいね。斉藤くん、じゃあ今日も来てもらえるかしら』
「分かりました」
そう言って、町さんからの電話は切れた。
いったいどんな人なんだろう。
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