第59話 安西さんと休憩と

「今日はありがとう」


 安西あんざいさんにプールに無理やり入れられて監視員に怒られた俺と安西さんは、流れるプールやウォータースライダーで遊んだ後、休むことになった。

 飲食スペースのベンチに座り、買ってきたドリンクを安西さんに渡す。

 隣に座る安西さんは、遊び疲れたのだろう、少し眠そうだった。


「いや、俺の方こそ、今日はありがとう。安西さんに一緒に行こうなんて言われてなかったら、プールなんて行かなかった気がするよ」


 母さんたちの仕事が忙しくなってからは、外で遊ぶことなんてなくなっていた。

運動が苦手過ぎて、桜井さんからチケットを貰ったときも、安西さんに一緒に行こうとは言えなかったが、プールで休もうとしていたときも、安西さんに引っ張られて、疲れるまで遊んだ。

 ここまで楽しんだのはいつぶりだろう。

 きっと安西さんが居なかったら分からなかったことだ。


「プール、楽しかったでしょ?」

「うん、おもっていたよりも楽しかったよ」

「それにしては、途中で疲れて休もっていってたけど?」

「いや、安西さんの体力がすごすぎるんだって」


 違うタイプのプールを全て回ろうとしていた安西さんをどうにか止めて、ようやく休憩することができたぐらいだ。


「……それは、久しぶりだったから」


 久しぶりか。

 毎日、夜中まで家の手伝いをしている安西さんだ。きっと俺と同じで外で遊ぶことも少なくなっていたんだろう。

 いつも学校で寝ていたくらいだし。

 きっといつか、またここに来れたら。


「今度も安西さんと一緒にプールに行きたいな――って、やば」


 すぐに口を手で覆う。

 思わず呟いてしまったその言葉を聞かれてないか心配になって、安西さんの方を見ると、安西さんの頬が真っ赤に染まっていた。

 いつもだったら、安西さんはこういうとき寝てくれてるのに、どうして今日は寝てないんだよ。


「また一緒に行ってくれるの?」

「いや、さっきのは思わず声に出しちゃったことっていうか、その――」

「どうなの?」


 まだ安西さんの水着もちゃんと見れていない。

 最初からちゃんと一緒に遊べてもいなかった。

 どうなのって言われても、そんなの――


「また一緒にプールに行ってくれる?」

「うん」


 今度はちゃんと楽しませて見せるから。


―――――――――――


 お久しぶりです。約1週間ぶりの投稿ですね…。

 近況ノートにも書きましたが、繁忙期で執筆する時間がありませんでした。

 ごめんなさい。

 一段落しましたので、今日から毎日投稿をまたスタートさせたいと思います。

 安西さんと斉藤くんの付き合うまでの日常、後半戦!

 ぜひ、お楽しみください!

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