第47話 斉藤くんと加賀谷くん
「
「まずそこから!? あれ? 言ってなかったっけ?」
安西さんからの予想外の返答に思わず突っ込んでしまう。
天江が居酒屋に来たときに幼馴染だって話していたはずだけど……。まぁ、いいか。
「その天江ともう1人、加賀谷って言うんだけど、その2人と俺は小学生のときから遊んでた」
高学年になってからは公園でドッジボールやサッカー、家ではゲームをしたりしていた。
「ただ、中学に上がったときだったんだよ。加賀谷が他クラスの子からいじめを受けるようになってさ。理由は分からなかったんだけど。教科書に落書きをされたり、スリッパに画鋲が入ってたりしてた」
特にリーダー格の生徒が加賀谷を休み時間に連れ出していたのを覚えている。
「ただ、俺は昔からお節介を焼いちゃう子だったんだよ。それも空気が読めないほどの。それでも皆が助けてくれてありがとうって言ってくれてさ」
それが嬉しくて、困っている人を見かけたら、大丈夫ですか? と声をかけていた。今さら思えば、ただの自己満足だったんだと思う。
「……そのいじめを止めようとしたんだ。絶対に止められると思って」
ほんと言っていて情けなくなるが、正義のヒーローにでもなりたかったのかもしれない。ただ救えたら嬉しくて、それが幼馴染の加賀谷だと分かったらなおさら。
「それで、いじめてた子達に言ってやったんだよ。いじめはやめろって。そんなことやって恥ずかしくないのかって。先生にも加賀谷がいじめられていることを伝えた」
それがいけなかったと思うのに時間はかからなかった。
「だけどさ、先生はろくに取り合ってくれなかったんだよ。そして加賀谷はさらにいじめを受けるようになった」
安西さんにはここで伝えることができないほどのいじめが行われていた。それを遠くから見てしまったときに、俺はなにもできなかった。それが悔しくて何度も泣いていた。
「その後、加賀谷が引っ越したんだ。俺や天江になにも言わずに。あいつが俺のせいでさらにいじめを受けるようになったのに。そのことをなにも言わずにさ……」
しばらくは加賀谷のことで学校に行くのが怖かった。
天江に説得されて、なんとか学校に行くことはできたけど、友達を作るのも怖くなった。
「…………ただ、その加賀谷と最近、偶然会ったんだよ。それから安西さんもしっての通りだけど、ミスが多くなって」
加賀谷がいじめられていたときのことが脳内で再生されて、失敗が重なった。
「だからさ、安西さんは心配しなくてもいいんだよ。これは俺の罰で――」
「そんなこと言わないで!」
(後編へ続きます)
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