第34話 種目決めと安西さん

「じゃあ、今から種目決めを始めます!」


 決起集会後、教室に戻った俺たちは、体育祭の実行委員になったクラス委員長の掛け声で種目決めをすることになった。

 黒板には右端から400メートルリレー、障害物リレー、男女混合二人三脚、綱引き、棒倒し、借り物競争と書かれてある。


「選べるのはこの6種類ね。他にも男子全員参加の騎馬戦や、各部活の対抗リレー、全員参加の色別対抗リレー、応援ダンスもあるけど、今回はこれだけかな。ちょっとだけ決める時間を取ります。考えて選んでね! あと、皆最初は1人1回だから。一番やりたいものに手をあげて!」


 委員長がそういうと、クラスメイト達が前後ろのグループで何を選ぶのか話し始めた。


斉藤さいとうは何に出るか決まったか?」


 前の席に座っていた立橋たてはし君が話しかけてくる。


「いや、まだだけど。そっちこそ決まったのか?」

「いや、俺もまだだよ。けど、他の人が選ばなさそうなのを選ぼうと思ってる」


 こういうところがモテる秘訣なんだろうか。平然と言ってのけるのがすごい。


「じゃあ、400メートルリレーあたりか。すごいな、俺は走れる気がしないよ」

「斉藤も部活入れば、できると思うけど。体格いいし、今からでもサッカー部に入らないか?」


 嘘を吐いているわけではないんだろうし、立橋君が建前でいっているとは思えない。正直、部活には入ってみたい気持ちもあるけれど――。


「俺は、部活に入るつもりはないよ。バイトしてるし」


 安西さんとの時間の方が大事だ。そんな安西さんは今でも隣でお休み中だった。


「バイトか、それは残念だな」

「悪いな。あ、委員長が時間だって」


 教卓では委員長が「今から種目決めを始めるからこっちを向いて!」と手を叩いていた。


「お、そっか。じゃあ斉藤、同じ種目になったらよろしくな」

「こっちこそ」


 そうは言ったけれど、どうするか。

 安西さんにはカッコ悪いところは見せたくない。二人三脚とかも足を引っ張る気がするし、借り物競争はハードルが高い。無難に綱引きの方がいいか。


「じゃあ、まずは400メートルリレーがいい人!」


 やっぱりいないよな。

 手を挙げている人は立橋君とバスケ部の男子が一人だった。


「うん、やっぱり少ないね。じゃあ、残った人がやるってことで。次は障害物リレーをやりたい人――」


 そうして挙手制で種目が埋まっていき、じゃんけん大会も行われ、無事に種目が決まっていったんだけど――。


「じゃあ、400メートルリレーはこのメンバーで決定だね」


 安西さんは、寝ている間に400メートルリレーの参加が決まっていた。

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