第33話 安西さんと色分け
「1年生4組は赤組に決まりました」
雨がいつ降り始めるか分からない、妙な雲が空を覆う中、来月に控えた体育祭の色分けが発表された。
この学校では3学年が赤、緑、青、黄、橙、白の6つの色に別れて、得点の高さを競うらしい。体育館でクラスの色が決まった瞬間、各クラスの生徒たちが騒ぎ出していた。
「ねぇ、
「赤組っていってもな」
帰宅部だから先輩と関わったことが一回もない。俺にとってはどの色でもほぼ同じだ。
「2年2組には部活の先輩がいるんだよね~」
「あっ、そうですか」
「あっ、そうですか、って、つれないな~芳樹は。安西さんに言っちゃうよ?」
「なんでそこで安西さんが出てくるんだよ!」
少し声のトーンをあげすぎたのか、先生たちが睨みつけるようにこちらを見てくる。
「しー、静かに」
「お前なぁ」
それにしても体育祭か。安西さんに下手な姿は見せたくないが、花形種目はそもそも運動部が行うイメージだ。俺の出番なんてほぼない気がする。安西さんはいつも寝ているけど、何の種目を選ぶんだろう――。
ちらっと左後ろを確認すると安西さんが体育座りをしなから、顔を隠していた。
この場所でも、寝てる?
「芳樹、色別に分かれるって。私たち赤組は柔道場らしいよ」
そんな種目のことを考えていたら、天江に肩を叩かれた。周囲にいた人たちは、指定された場所に動き始めている。
「安西さんは――」
……いない。さっきまで寝てたのに。もう移動したってことだろうか。
「芳樹、早く行くよ!」
「そうだな」
俺はゆっくり立ち上がり柔道場へ急いだ。
「はい、全員注目!」
柔道場に移動した赤組を待っていたのは、赤いTシャツを着た小柄な女生徒だった。先輩らしき女生徒がジャンプしながら手を挙げたと思うと、パンッとその場で手を鳴らす。その瞬間、騒がしかった場内が静かになり、全員が彼女に注目し始めた。
「みんな、そろったね! 今回赤組団長に選ばれました、3年の
「「「「お~!」」」」
彼女の掛け声で、全員が拳を上げた。
どんなことが起こるか分からないけれど、できるだけ頑張ろう。
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