第27話 休憩中な安西さん
安西さんとの勉強会を続けることになった俺は、今日もへとへとになりながらバイトを続けていた。
「いらっしゃいませ!」
『あ、兄ちゃんちょっといい?』
「はい、どうかいたしましたか?」
『この店、メニュー多いっすね。迷っちゃいますわ。それで注文なんすけど、まずは、ポテサラ一つとレモンサワー。あ、それと刺身五点盛ってのも、あとは――(何いる? これ? オッケーオッケー) カルピスサワーも追加でお願いするわ』
「分かりました。では少々お待ちください」
『頼んだで』
関西風の厳ついお兄さんに頼まれて、カーテンをくぐり厨房へと入る。厨房は
「町さん、また注文が入って」
「分かったわ。伝票をそこに置いといてくれる? ドリンクは斉藤くんが注いでくれると助かるわ」
「分かりました」
「あ、それと、
「いいんですか? こんなに人多いですけど?」
カーテン越しにちらっと店内を確認してみたけれど、どう見ても満席状態。席のいたるところからお客さんたちの笑い声が聞こえてくる。いつ注文が入ってもおかしくない状態だ。町さんもさっきから料理の方を向いて話してるし。
「いいのよ、ルールだからね」
「……分かりました。じゃあ、これ持っていったら休憩行ってきますね」
「いってらっしゃい」
町さんはそう言って、疲れた表情も見せず、汗をぬぐいながら盛り付けを始めた。
こうしちゃいられない。町さんが頑張ってるんだ、ドリンクを作って、早く休憩に行かないとだよな。
俺はドリンクを作り、関西風の厳ついお兄さんの所へ持っていった。
『お、ありがとな』
「料理の方は後でお持ちしますので、少々お待ちください」
『分かった、待っとるわ』
~~~
「今から休憩?」
「うん、町さんが行ってこいって。今日はやけに忙しいな」
休憩スペースに入ると、安西さんが声をかけてきた。宿題をしている最中だったらしく、机の上には英語の教科書が置いてあった。
「そうだね。いつもよりもちょっと多いかも」
そう言いながら、安西さんは教科書を鞄に仕舞い始める。
「キミが戻ってきたってことは時間だよね?」
「……そうっぽいけど、そんなに焦らなくても――」
「じゃあ、いかなきゃね!」
店内は満席状態。いくら手馴れている安西さんとはいえ、何かあったらいけない。
そう思って止めようとしたけれど、安西さんがそそくさと店内へ駆けていってしまった。
「あ!」
心配しすぎだったかな。安西さんなら大丈夫だよな。
「頑張って!」
俺は小さく拳を握りながら、安西さんを見送ることにした。
さ、俺も少しだけ勉強をしようかな――
「おい、どうしてくれるんじゃ!」
そう思った瞬間だった。店内から男性の大声が聞こえてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます