第18話 英語を頑張る安西さん

「一人称とか、二人称とか分からない? isとかamとかareなんだけど」


 これが分からなかったら初歩から分からないってことで危険区域だ。予習した範囲だけしか分からないけど、これから他の教科も暗記だけではついていけなくなる。とくに英語と数学は英文や計算が増えていくはずだから、これが分からなかったら他の教科も心配になってくる。


「……えっと、安西さん?」


 安西あんざいさんは首を傾げて何かを考えているようだったが、すぐに手をポンッと叩いた。


「それなら、分かるよ! 前に習ったよね」

「うん、そうだね」


 良かった。これならまだ安心だ。ひとまず初歩は脱出。あとは基礎がどこまで分かってるか。


「じゃあ、この問題は分かる?」


 そう言って、俺が見せたのは「He taught me English.」と書かれたノート。

 これくらいの英文は分かってほしいけど。


「え? そんなの簡単だよ! 彼は私に英語を教えてくれました。って、これ、今の状況だよね」

「うん、分かりやすいかなと思って」

「もちろん、こんなの簡単だよ。さ、次、いこ、次!」

「うん、そうだね。じゃあ、次の問題だけど、っと、これは? できれば英語で答えてほしいかな」


次に見せたのは「Did you study English?」。あなたは英語を勉強しましたか? というさっきの問題を変えた簡単な疑問文だ。


「えっと、こうかな。I study English?」

「何で最後、疑問形にしたの?」

「英語の勉強はしたけど、テストの点数がのびなかったから、かな」

「いや、そのときはhoweverとかbutで繋げればいいから」

「そうだね。わかった。次からそうやってみる」


 そう言って、安西さんはニコッと笑う。

 やっぱり、アクセント問題や英単語はほぼ満点だったし、英単語が分かるってことは、簡単な英文も答えられるよな。長文でも英単語が分かれば意味が分かることだってある。少なくとも安西さんは今ここで答えられているわけで。だったらなんで、点数が低かったんだろう。英語のテストは四限だったけれど――。


「杏里、もうこんな時間だから、斉藤くんを送り届けてもいいかしら」


 まちさんにそう言われ、時計を確認してみると一時を過ぎていた。

 明日も学校で朝早く起きなければいけない。授業中寝てもいいんだけど、もう少し、安西さんと勉強していたいけれど、そうはいっていられない。


「じゃあ、ごめん安西さん。また今度教えるから」

「うん、ありがとうね。じゃあ、また明日」

「また、明日」

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