第15話 勉強できた安西さん
「……十位」
廊下の壁に貼られているテスト順位が綴られている紙を見て、俺は呟いていた。
「もうちょっと頑張れたかもしれないな」
数日前には答案用紙は戻ってきていて、点数は把握済みだったが、もう少しで一桁順位だったと思うと何とも言えない悔しさがある。
順位も見たし教室に戻るか。
――嘘だろ? おい、あそこ見てみろよ。
――ん、何だよ、あれ、ってマジか? この順位表間違ってるわけじゃないよな? いつも寝てるだろ、なのに俺より順位高いのかよ。
そう思い、教室に戻ろうとしたら、どこからかそんな声が聞こえてきた。
「
安西さんほどではないにしろ、授業中に寝ている人はそれなりにいる。ただ、いつも寝ているというほどだ。聞いたことはないけれど、他のクラスにもいるのだろう。
「……そういえば、安西さんって何位なんだったんだ?」
テスト返却のときも寝ていていたが、一度、起こして取りに行ったときは嬉しそうな顔をしていた。
よっぽど点数が良かったんだろうけど。
大きな文字で書かれた順位表を五十位から順にみていく。ちなみに順位は五十位までしか張り出さていない。
五十位台。そもそもなのだが、ここに名前が載っていたら、クラスの中でも頭のいい方に分類されると思う。
四十位、三十九位、三十八位、三十七位――。
「ないな」
三十位台には名前がなかった。だとしたら、もっと上の順位ってことなんだろうけれど。
――おい、あれ見たか? あれだよ、眠り姫の順位!
――当たり前だろ? ずっと寝てるのにすごいよな。あの噂、絶対嘘だろ。
――だよなぁ。こんなの見せられたら、あんな噂、すぐデマだって分かっちまうぜ。
二十位台に入ったところで、教室に戻ろうとしている三人の生徒からそんな声が聞こえてきた。
すぐに順位表に目を戻し確認してみると――
「二十五位」
安西さんの名前が見つかった。
本当に、すごいな。
お店も手伝って、お客さんの相手をして、勉強もして、学校では寝ているけれど、相当頑張っているんだろう。
「今度、何かプレゼントでもしようかな」
迷惑かもしれないけれど、何かをプレゼントとしたら喜んでくれるかもしれない。
「
なのになんで、こんな状況になってるんだろう。
放課後、俺は安西さんにお願いされていた。
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