第14話 テスト後に寝ていた安西さん
中間考査の日程がようやく終了して、テストから解放された俺は、クラスメイト達が活気づいてたむろする中、問題用紙を広げた。数日後には回答用紙が帰ってくるけれど、回答を間違えた気がしてくすぐったい。
「正解しててくれよ」
そう思い、教科書を出して、間違いがないか確認しようとした時だった。
「
「えっ⁉」
隣の席の子からいきなり声をかけられ、思わず変な声が出てしまう。
振り向くとそこには、クラス一のイケメンと名高い男子、
「悪い、今大丈夫だったか?」
「大丈夫だけど……何だった?」
「あ、そうか、悪いな。じゃあ聞くんだけど、テストどうだった?」
「テスト?」
思わず聞き返してしまう。
テストが終わったときに友達に聞くことはあるけれど、まさか聞いてくると思わなかった。
「今回が初めてのテストだろ? この学校、部活の先輩から聞いたんだけど、廊下に順位表が貼り出されるみたいでさ。うちのクラスの誰かが一位取ったら嬉しいじゃん。それで全員に聞こうと思ってたんだけどさ……」
これ見てると、と立橋君は俺の机の上に置いていた問題用紙を見ながら続ける。
「斉藤は自信ありそうだな」
「自信ないっていったら噓になるけど、そこまでかな。数学の最後の問題とかむずかったし」
「あれな~。ほとんどのやつができなかったんじゃないか? 俺、一応数学は得意だけど、あれは無理、自身無くした」
数学の最後の問題はどこだったか覚えていないけれど、大学名が書かれていた。もしかしたら大学入試の過去問だったのだろう。
「国語とか難しくなかったか?」
「あお、斉藤気が合うな。あれだろ作者の意図をくみ取れってやつ」
「そう、それ。授業中、先生が黒板にここ重要だよって言ってたから、ノートに書いてはいたんだけど」
「それマジ?」
「うん、今ノート見る?」
「いや、大丈夫」
そう言いながらも、立橋君は「……マジかぁ」と頭を抱えていた。
いつもは帰って本ばかり読んでいるけど、こうやって誰かと少しだけ話をしたりするのは悪くないな。
そういえば、
あのノートを見せられたら、どれだけ勉強を頑張ったかは分かるけれど。
「……ぐーぐー」
って、寝てるし。
「眠り姫は、まぁいつもどおりか」
「そうみたいだね」
「まさかテスト中も寝ていたりしてな」
「どうだろう。そんなことはないと思うけど」
まさか立橋君の言う通り、テスト中に寝てたわけじゃないよな。いつもこの時間に寝ているから寝ているだけだと思うけれど。テスト中に寝てるか確認するべきだったか? いやでもカンニングを疑われたらそれは逆に迷惑をかける気がする。
「
そんなことを考えていたら、廊下からサッカー部らしき男子達が立橋君に向かって手を振っていた。
「悪い、斉藤、部活行かなきゃだから。また今度話そうぜ」
そう言って、立橋君はサッカー部の子たちの方へ駆けていく。
「うん、また今度」
小さく手を振って見送り、立橋君がいなくなったのを確認した俺は、途中になっていたテストの見返しを始めようとした。
「ふゎぁ~」
その瞬間、隣から大きなあくびが聞こえてきた。
「……あれ? 斉藤くん、おはよう」
隣を見たら、安西さんが眠たそうに口を押えながら身体を起こしていた。
「おはよう。……って、えっと、安西さん。テスト中寝たりしてないよね?」
「……? もちろん。斉藤くんがノートも見せてくれたからね、ばっちりだけど……」
「それは良かった」
本当に良かった。
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