第99話 奥多摩から相模原へ
深山荘で綾はカツ丼、裕子はラーメンを注文した。昭和らしい休憩所だ。奥多摩湖のほとりにあり、場所はいい感じなのだが、令和の現在は営業をしていないようだ。なんで営業を止めたのか、いつ終わったのかはネットを調べてもなかなか見つけられないが、さすがに昭和ではまだ営業をしていた。こういう昭和のドライブインも令和になるとかなり数を減らした。遺構が残って廃墟になってるものもあれば、更新されて新しくなり、業態も今風になってるものもあるが、更地のまま消えたままの場所もある。ちょっと早い昼飯なので次のルートを綾と裕子は決めることにした。勿論、裕子の期待している奥多摩有料道路は通るつもりだが、その先の甲武トンネルは開通していないので、檜原街道を東進して五日市に出る以外次の目的地には行けない。ここは2話から4話でも通った道路。
「え?甲武トンネル無いの?うへぇー。」
と、裕子が残念そうに嘆息する。甲武トンネル前後の道路もグネグネしていて裕子好みだからで、遠回りになるからではないのだが。
「上野原に出られたら、もっと相模原の方に早く行けるのにね~。うーん。」
微妙に意味がずれてるが、残念なことは同じだ。地図を見ていくと素直に国道16号線に出て南下するのが相模原方面に抜けるには最も最短のようである。今日も天気はいいので下界に降りたら暑さが厳しいだろうとちょっと引いてしまうが、それでも国道16号線なら多少はペースよく走れると思う。時間的にも渋滞が起きにくい時間帯だ。
「それよりも!奥多摩!きっとすごいんだろうなぁ。」
裕子は夢を描いた奥多摩を想像している。深山荘の窓からは何台もオートバイが通り過ぎており、まるでオフ会でもあるかの如くかなりの台数のオートバイが奥多摩有料道路を目指しているのを見ているからだ。綾は一度走っているので実態を知っているので走るまでは裕子に夢を見させてあげようと思っている。
食事も済ませていざ奥多摩有料道路へ向かう。左折して三頭橋に入れば奥多摩有料道路だ。さっそく、前も後ろもオートバイが迫っている。川野の料金所で100円を支払っていよいよ有料道路だが、とにかくオートバイが多い。ペースは一向に上がらない。そう、あまりのオートバイの台数の多さに追い抜いたとしてもさらにオートバイがいる、ブーム絶頂期だから初心者から走り慣れた人もここの集結するわけで、そうなるとオートバイの渋滞である。進んではいるが、各々のペースで走るなんてことは到底できなかったのだ。
「えー、ナニコレーーーー。思ったのと違う…。」
裕子にとっては夢を打ち砕かれた様子。あまりにも集まるオートバイが多ければ観光道路でもある奥多摩ならそういうことになるだろう。尤も、時間帯をうまく選んだり平日に行けばそんなことは無いのだろうが、休日ともなればまさにオートバイの渋滞である。
駐車場もいくつかあるが満杯といった感じで、横目で数多のオートバイを見ながらただひたすら通過するほうが賢明だと思い、そのまま五日市駅まではしることにした。
「終わり、終わりー。あたしの思った道路とは違った!」
裕子は気持ちを切り替えて次のスポットに夢を託したようだ。それにしても、五日市まで出てしまうと市街地でクソ暑いし、旅の終わりを実感し始める。このツーリングが終わったら、陽子さんに甲府で出会った女子高生の沙織の話をしたいな。と思った。
国道16号線は幸いに思ったほど混んでなくスムーズに相模原まで行けた。途中八王子バイパスが有料道路だったのでちょっとびっくりしたが、本当に昭和時代は高規格バイパスはすべからく有料道路として開通していたのを考えると昨今の高規格道路が最初から無料で開通していることに感謝をしつつ、なぜ昭和時代は有料でみんな文句を言わなかったんだろうと思う。相模大野あたりで東京方面に左折して、グーグルマップを見ては開通してない!と戻ったりしながらもなんとか着いた場所はTBS緑山スタジオ近くだった。
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