第87話 ラストブロンクス-東京番外地-

 夏のツーリングも最後の最後に地獄の渋滞に遭いながらもなんとか帰宅できた二人。夏休みはまだ長い。とはいえ、裕子が昭和58年に飛ばされるのが令和6年の春なので残りの8カ月の同居をどう過ごすか考えていた。


 「裕子さん、そういえばスポット周りをしてみない?」


 スポットとは、要するにローリング族が集まる場所のことだ。ローリング族という名前が出回ったのはいつからだろうか?当時は走り屋。と呼ばれるクラスタのことで、高校生から社会人なりたてくらいの世代が集っては膝スリとしたり、だべったりギャラリーしていたりしていたそうだが、怖いもの見たさで一度は考えたが、やはり怖いというイメージがあるのでツーリングが終わるまでは忘れることに勤めていたが、一人で行動しない分行ってみたい気持ちが改めて沸き上がった感じ。


 裕子はスポットって言われてもなんだかわからないので何のことか聞いてそんなものがあるのか?と目を輝かせていた。こうなるともう行くしかない。令和の夏はとにかく暑い。特に令和5年は梅雨ってなんだっけ?という感じで6月くらいからすでに梅雨明けの様相でただただひたすら暑いのでオートバイに跨ってどこかに行きたいなんて気分にもならないし、夜も暑さが残ってて夜走りという気分にもなれなかったので、スポット回りに行きたいとは思ったが、朝出発しないと昭和には飛ばないのでつけっぱなしのエアコンの部屋で今日は裕子とレトロゲームを二人で遊ぶことにした。


 ゲームはよくわからないが、裕子が好きなゲームは格闘ゲームとドライブゲームとシューティングらしい。ゲームセンターにはRPGゲームは無いのでアーケードゲーム派は大体そんなジャンルが好きな人が多かったのかもしれない。今日やってるゲームは「ラストブロンクス」という格闘ゲームだ。架空の東京の街が舞台で荒くれものが抗争をする。というものらしい。声優が今更ながらにメチャクチャ豪華だな。というのが綾の感想だ。気になる読者はぜひWikipediaで調べてみるといいかもしれない。綾の好きなキャラは黒澤透で声はあの若本規夫だ。木刀で相手を削るのがいいらしい。裕子は草波リサを使っているがこちらも冨永み~なという豪華っぷりである。二人は結局午前3時までラストブロンクスでひたすら対戦していた。裕子の方が圧倒的にうまいかと思いきや意外と接戦出来てしまってるので綾は格闘ゲームの才能が有るのかもしれない。


 二人は昼まで寝こけてほぼ夕食の時間に昼食を食べるというまさに怠惰な日々を送っていた。外に出る趣味の人間にとっては外に出る用事が無いと途端に堕落してしまうのはよくあることだろう。さすがに朝起きないと昭和のスポット回りが出来ないので2日目もラストブロンクスを延々対戦するのは止めて、遅い昼食だったので軽く乾杯をして早めに寝て朝起きようということになった。

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