第80話 霧ヶ峰から松本に抜ける
Windowsのオープニングのような景色の霧ヶ峰の風景はお金を払っても見たい。という景色ではあるが令和だと無料なのでどこか損した気分にはなったが、その後松本に出るにはこのまま霧ヶ峰から下ると、諏訪市街に出てさらに岡谷から塩尻峠を越えなければならない。扉峠まで行けばダイレクトに松本市街に降りられるのとクソ暑い市街地を走りたくないから綾も裕子もそこは同意して引き続きビーナスラインを走る。
霧ヶ峰から和田峠までは見晴らしよりもコーナーを楽しむ感じの道路で景色こそ見えるが草原が広がる道路ではなく淡々と走ることになるが高原らしい涼しい空気、緑の中を緩やかなコーナーで走る分にはお金を払ってよかったと思わせる道路だ。和田峠から扉峠は再び草原を走る道路が現われる。右に車山のレーダー施設が遠くに見えていつの間にか結構な距離を走ったんだな。と思わせてくれる。ここまで来ると車の量は大分少ないが、それでも山の中にしては多すぎる。というレベルだ。三峰茶屋を越えてほどなく高度が下がるあたりからまた緑の中を走る。扉峠からはビーナスラインを外れて狭い下り基調の林道を走るがここは我慢の道路となるが、気温がじわじわ上がり始めて先ほどまでのツーリング気分から一気に我慢大会の気分に早変わりする。
松本市街に出たと思ったらあっという間に松本城の前に出る。これはいいショートカット道路だなと思った。松本は地方都市の規模の大きさの割に道路整備がままならないので、市街地はいつも渋滞気味だ。特に国道19号線は明るいうちは渋滞しっぱなしなのだが、そんなことは知らない2人はかなりショートカットできたといってもいいだろう。ほどなく国道158号線に出ると市街地からまた一気に田園風景に様変わりして山がまた大きくなっていく。関東平野に住んでいるとこんなに高い山に囲まれた街は特異に感じるが、松本は特段に高い山に囲まれており、令和の今でも新幹線が通ってなく唯一は在来線特急か中央道で都心に行くしか手段がないいまだに遠い場所である。
「裕子さん、ちょっと止まろう。」
止まった場所は松本電鉄新島々駅。ここが北アルプスの玄関でもある。元々の終点の島々駅はもう少し山側にあったが、昭和58年の台風災害で廃止になって、松本側にある新島々駅が終着駅になったのだが、元は赤松駅だった。令和には駅前にあるセブンイレブンは波田赤松店という店名になっているのは新島々ではなく地名としては赤松だからだ。駅前の広場に止まって、地図を広げる。一応確認で上高地に行けるのか調べてみた。ギリギリ行けるそうだ。土日祝日はマイカー規制、98日間の規制だけど今日だけはどうも入れるそうだ。ちなみに上高地のマイカー全面規制は平成8年、1996年のこと。
「よっしゃ、裕子さん上高地にまず行こう!!!」
綾は勝った!というような顔をしているが、裕子的にはもう少し計画をちゃんと練ればいいのに。という顔をしていた。
松本電鉄と並行しながら田園風景を走っていた景色は、新島々からは一気に山岳路に変貌する。島々という地名はちょっと山に入ったところに存在してて昔はここが北アルプスの玄関口で徳本峠(とくごうとうげ)を越えてダイレクトに上高地に入るルートだったのだが、かなりの距離を歩かないと上高地に行けないので、今はすっかりここを通る人はほとんどいないだろう。
稲核ダム(いねこきだむ)の築堤を越えると人里が終わり、国道158号線が酷道に変わる区間だ。ここの酷道っぷりは主要街道でありながら冬季閉鎖で閉ざされてしまう、トンネル区間が異常に多い、トンネルからは湧き水で年中びちゃびちゃ、トンネルの中に分岐がある。とかかなり想像を絶する道路なのでもう少し紹介されてもいい道路だとは思う。安房峠道路(あぼうとうげどうろ)が出来てからは通年通行可能になったがそれまでは松本~高山というメイン道路は雪に閉ざされて通れなかったのが1997年と思ったよりも最近というのがこの山岳道路の急峻さを物語ってると言えるだろう。
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