第79話 ビーナスライン

 諏訪湖SAまで行くつもりだったが、裕子からインカムでこんな話をされた。


 「綾ちゃん、そういえばビーナスラインは行ったことある?とてもきれいな景色だから寄ってかない?」


 確かにビーナスラインは話でも聞いたことあるし、キャンプアニメにも出てきた聖地でもあるのでそういえばそうだ。と寄ろう寄ろう。と返事したので諏訪ICで降りることにした。諏訪という名前だがほぼ茅野市なのだが市境が複雑に入り組んだ変わった場所に設置されている。グーグルマップで試しに見るのをおススメしたい。茅野は思ったほど道路の変化は感じられなく、このあたりは一向にバイパス建設が進んでないというのがわかる。高速に沿ったバイパスを走ってすぐに左に折れると国道20号をアンダーパスする茅野道路があるがなんとアンダーパスを抜けるだけで100円も取られた。昭和の道路はバイパスするだけでお金を取られる有料道路銀座な時代だ。ここから先もしばらくは緩やかに登っていくだけで峠道という感じはないが次第に山が大きくなっていく。時間はまだ朝だが昼に近い朝なので日射しが痛いしじりじりと暑さを感じ始めているので早く標高を上げたい気持ちが高まっていく。


 田舎なのに複雑な道路があってオーバーパスしたり不思議な場所を越えると扇状地の終端らしき集落が見えてくる。ここから一気に高度を上げるようで、確実に涼しくなってきた。


 「これ、これだー!やっぱり夏は高原よね。」


 二人とも同じ気持ちだった。夏の高原を走るのは本当にオートバイでは清々しいもので、それまでの暑くて辛い行程も吹き飛ぶ気持ちよさ。


 白樺湖を右に見て大門峠を左折する。ここからがビーナスラインの本番なのだが料金表らしき看板が立っている。そう、ビーナスラインも有料道路だった。


 「えー!またお金取るの?!昭和の人ってみんなお金持ちだったのかしら?」


 ちなみにビーナスラインの白樺湖~霧ヶ峰までなんと620円もする。さらに霧ヶ峰~和田峠が470円、和田峠~扉峠まで410円、扉峠~美ヶ原までさらに460円も取られるので、全線走るとほぼ2000円も掛かる高級道路だったのだ。なお、周辺の林道も有料で蓼科山の北側から大河原峠に抜け佐久市に至る夢の平林道も今は通れない鹿曲川林道も有料だ。


 「綾ちゃんごめん、これはさすがに美ヶ原までは行きたくないよね~。さすがにこんなに高いとは思わなかった。(汗)」


 ツーリングするにも小銭をたくさん用意しないとならない、それが昭和。という世知辛い話は置いて、車山肩の駐車場にオートバイを止めて景色を堪能する。ここは冬はスキー場になったりしているが、夏は緑一色の草原で青と緑のコントラストの先には富士山や南アルプスが一望できる。もう車山山頂まで上がれば北アルプスも一望できるが、道路周辺からだと見ることはできないが、それでも十分すぎる景色と自然のクーラーで癒されるが、車とオートバイの多さに山にいる気分というよりは観光地の一つという感じでそこだけは興がそがれてしまう。令和の最近でも車の渋滞でニュースになってるくらいだから首都圏在住の人々には長く愛されてる観光地なのだろう。近くにレストランがあったのでここで休憩しようと思ったが、その奥にはキャンプアニメでも有名になった小屋があるのだが、そこで休憩することにした。この時代では聖地でも何でもないので静かなものだ。


 それはそうと、こういった自然の景色にいると昭和か令和かという差はあまりないが、服装、へアスタイル、乗り物だけは違っていて令和の今でも当時モノの乗り物とファッションで集まったら昭和そのままの写真が撮れるなーとかどうでもいい事を綾は思った。

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