第75話 突然の引っ越しフラグ
朝。昨日までの疲れもあったが、若干の二日酔いで目覚める。時間は午前9時。思ったよりも寝過ごさなかったが、もうちょっと寝ておきたい眠さはある。横を見ると寝袋の上で寝ている裕子がいる。そうだ、昨日一緒に帰ってきたんだ。夢の中では、近くにサーキットがあってなんか楽しそうに走る自分がいた夢を見てて昨日の流れからは全く切り離されたけどどこかリアリティのある感じの夢で、そうはいえ近くにサーキットなんかは存在しない。それはそうと、裕子をどうするか考えないといけないので今日はバイク屋「ようこの」に二人で行くつもりだったことを思い出しながらまたも夢の中に落ちてしまった。
それは海っぺりにサーキットがあり、周りは一大レジャー施設があって、海にくっついた巨大プールが有ったり巨大な滑り台があったり、今でも十分レジャー施設としては巨大レベルであろうと思われる先にサーキットがあった。夢の中なので何故かNSRに跨ってサーキットを走っていた。夢なのでメチャクチャなのだが、峠小僧っぽいのが話しかけてきてここは天国ですか?!と何か叫んで自由にサーキットを縦横無尽に走ってて、なんだか昭和のいいとこどりみたいな都合のいい夢だった。走っていて転倒しそう!あー。というところで目が覚めた。
裕子が顔を覗いている。
「綾ちゃん、なんだか嬉しそうなんだけど苦しそうな顔になって起きたけど大丈夫?」
綾は赤面しながら、覚えてる限りの夢を裕子に話してみた。
「それはきっとこのあと行くところの夢かもしれないね。昔は一大レジャー施設があって、今もその痕跡で競馬場も残ってるし。といっても競馬場しか残ってないんだけど。」
時間は10時半だった。お昼くらいにバイク屋に行けばいいからちょうどいい時間だ。遅い朝食を裕子と一緒に食べて準備をする。ドアを開けたら令和5年だ。今日はツーリング日和というのはちょっと厳しい感じのどんよりした天気模様。そろそろオートバイ乗りには憂鬱な梅雨の季節が近づいてきてるらしい。VTZ250に跨ってバイク屋を目指す。
到着して裕子は飛び降りて、すぐさま陽子さんに飛びついた。
「ただいまー!!!帰ってきたよ~!陽子さん!」
陽子もにこにこした笑顔で裕子を迎えていた。二人の再会は何年ぶりなのだろうか。裕子にとっては5年ぶりだけど、陽子にとってはつい最近あったかもしれない。
二人の話を聞くと、元の裕子はまだ陽子には会ってないらしい。ここで今回のタイムスリップの全貌が分かったようでわからないようで、陽子さんには謎がまだあるのだが、この半年後くらいに裕子と初めて会うことになるらしい。そこでRZ250を買った裕子が昭和58年に飛ばされて、その時代でオートバイが動かなくなって戻ってこられなかったらしいのを陽子さんは何らかの方法で知っていたから近い時代に戻ってこられる手立てが綾こと自分であった。ということで手紙を渡しに行ってほしい。という流れだったようだ。
「つまり、陽子さんはこのCB72を貸せば昭和37年に飛ぶことを知って貸したんですね?」
ちょっと綾はむっとした顔をしながらも、あの昭和37年の光景を思い浮かべながらまぁいいか。という表情になっていた。まんざらでもない旅だったからだろう。
そして、一番の問題は裕子が令和5年現在だと2人いることになる。そうなると厄介なことになるわけなのだがさっそく陽子さんから提案された。
「綾ちゃん、しばらく裕子ちゃんを預かってくれない?部屋が狭いならうちの貸家の一軒家を貸すから~」
突然の陽子の提案に戸惑った綾だが、そうなると家賃も多分タダになるだろう。問題は貸家の場所がどこにあるかくらいだろう。アルバイトで稼いだお金が家賃で消えなくなるとなると使えるお金も増えるので場所次第。という返答をしてみた。
陽子は早速地図を出して、指を差したところは今住んでいる綾の近くにある古びた古民家だった。今住んでるアパートもかなりの年数でいつ取り壊しされるかわからない不安があったが持ち家の貸家なら当面は住むこともできるというメリットもあって、すぐさま同意することにした。
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