第72話 長野駅と信越本線
国道117号線はほぼほぼ旧道を通って予想よりも時間が掛かるので千曲川沿いに走る国道を走るのは止めて、現在は国道292号線である県道で一直線に中野市街まで南下する。ようやく立ヶ花まで来た。時間はもう夕方と言っていい時間だった。今日は日曜日で明日はアルバイトを休むし明後日はアルバイトは無い曜日なので、こうなるともう2日くらい掛けて走りたい気分になったし、沼津からの帰りで苦労した経験が全く生かされていない。昭和63年ならもう少しマシだろうと思ったのが甘かったようである。
「裕子さん、ちょっと休憩しない?疲れちゃった。」
裕子はそれなら長野駅近くで泊まりたいと申し出た。長野市にもゲームセンターがあるはずだから。とのことである。さすがゲーマー。昭和にはコンビニはあるが地方に出ると一気にコンビニは今のように点在はしていない。国道18号線に入ってリンゴ畑のど真ん中を南下するように突っ切る直線に見える休憩所はほとんどない。仕方がないので道路脇にあった自動販売機がある広場にVTZ250を止めて数時間ぶりにオートバイから降りた。
「お尻痛い~。暑いのは陽が落ち始めて大分薄らいだけど休憩するコンビニが本当に無い。」
裕子はグーグルマップを開いてこのホテルなら豪華な割に安そう。と指を差す。善光寺の近くになるホテルのようだ。ここからだと市街地を突っ切ることなく、ホテルに着けるのでそこを裕子に予約してもらって向かうことにした。休憩したところから思った以上にあっという間に着いてしまったが15時からのチェックイン時間は過ぎているのでささっとチェックインをする。裕子がご飯を食べに行こうと誘ってくる。
「綾ちゃん、駅前の方に行ってご飯を食べよう。あと、ここにちょっと寄りたいのよね。」
裕子が指差したのはバスストップというゲームセンターらしい。泊まるホテルからはちょっと歩くと駅前の繁華街に出た。中央通りと呼ばれる駅から善光寺まで一直線の道路のちょっと奥に入ったところにいかにも昭和っぽい食堂があった。お昼は長岡ラーメンをいただいた二人だったので、裕子はカレー丼、綾は牛丼を食べた。
「わぁい、ごはん、疲れを取るにはやっぱりご飯よね。裕子ご飯大好き!」
どこかで聞いたようなフレーズを耳にしながら昔ながらの食堂の雰囲気と大盛り気味の量の丼飯をお腹に収めて、瓶ビールで今日の道程が無事であったことを二人で祝うために乾杯をした。
1杯だったのでほろ酔いとまで行かない心地よい酔いの中、裕子はバスストップというゲームセンターでゲームをしたいらしい。綾は長野駅の様子が気になるので宿で再び合流するまでは各々好きなことをしよう。と別れた。裕子と綾の関係はまだほんの2日だが、人との距離感や気遣いの度合いが同じと感じると気兼ねなく話せて長い付き合いができるんじゃないかなと思いながら駅へと向かった。
長野駅はまだ長野新幹線は出来ておらず駅舎も昔の長野駅だった。長野新幹線、現在は北陸新幹線が長野駅で開業するのは1997年、平成9年のことなのでまだまだ先の話だ。駅舎の見た目はなんだかお城みたいな作りだ。長野電鉄はもう地下化されていた。JRの入場券を購入してホームをうろつく綾。一番善光寺口から近いホームにキハ40が止まっていた。飯山線のこの当時はキハ40や52が走っていた。今はキハ110に統一されている。一通り構内を眺めるとまだこのころはJRで統一されていた時代で、115系や489系の在来線特急のあさまが停車していた。このころの在来線は信越本線で直江津まで直通だったのだ。ここで綾は気づいて、帰りは軽井沢・横川駅を見ておきたいなと思った。令和の今では物理的に横川と軽井沢間、会社的には軽井沢から篠ノ井、長野から直江津までしなの鉄道として分離、分断されて今や高崎から横川、直江津から新潟までが信越本線だがこの時代では全線が現役だ。
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