第69話 新潟交通電車線

 新潟の街は駅と繁華街が結構離れている。鉄道は後からできたため、古くからの繁華街からわざと遠ざけて敷設されてることが地方の街では多い。昔は鉄道=蒸気機関車だったため、煤や火の粉、騒音などまき散らすので敬遠されて少し離れた場所に駅が出来たことが多い。万代橋を越えて古くからの繁華街を抜けると県庁がある。駅から見ると川向うという位置だ。ここから白山前に来ると新潟交通電車線の供用軌道が見える。県庁前に突如普通の電車が路面に停車している様は今まで綾が見てきた昔にあった路面電車とは全く異なり、小田急2200形そのまんまが道路の脇に止まってると考えるとまさに異形と言える。


 「ひえー、小田急が道路に止まってる!裕子さん、これは何?!!」


 裕子はゲームマニアでバイク乗りなだけなので鉄道のことを聞かれても当然わからないし、新潟駅周辺で5年間過ごしていても川向うの私鉄に乗る機会なんかはまずないので裕子も初見であった。


 「もしかして、綾ちゃんは鉄道マニア??」


 綾は近代歴史に興味があるアニメ好きな大学生なのだが、調べてるうちに鉄道にも詳しくなってしまった。という程度だ。それにしてもこの新潟交通電車線は突如と変な場所に現れて、とんでもなく狭い道路を併用軌道として2kmほどを走る。東関屋からは一般の鉄道として国道8号線に比較的並行して燕まで走る私鉄である。併用軌道区間は1992年に廃止され、最終的に1999年に全廃となった鉄道で、本来は万代橋経由で新潟駅前まで結ぶつもりだったので萬代橋は非常に広い幅員で設計されてるという足跡だけが残っている。


 関屋大橋で新潟交通電車線と並行して走ったところで左折するとあとは長岡・小千谷までほぼ真南を南下していくのだが、新潟平野のど真ん中を走るのでひたすら景色は変わらない。行きは北陸道でショートカットできたが、帰りの国道17号線での南下は過酷であるが、裕子が持ち続けていたインカムが有ったので会話しながら走ればさほど気にならない代わり映えのしない景色を走ることができた。5年間の新潟で思い出深い話をしてくれたが、そのほとんどがレトロゲーの話で何を言ってるのかちょっとわからないことが多かったが、飛ばされた昭和58年はファミコン黎明期で家庭用でもゲームセンターのゲームが楽しめる時代になり、逆にゲームセンターにも人が訪れる時代だったそうだ。特にゲームセンターは大型筐体化してちょっとした遊園地のような気分を味わえる時代になったり、レーザーディスクのスーパーインポーズ機能を利用したアニメーションゲームとか今とは全く考え方の異なった進化をしたゲームもあったそうだ。裕子のお気に入りはタイムギャルとサンダーストームだったそうだ。令和の今で遊べるゲームセンターが有るかというとおそらくシステムの特殊性から維持管理が困難なのでほぼプレイは出来ないのではないだろうか。というか綾にはちんぷんかんぷんだったが、LDに収録されたアニメーションとスーパーインポーズでゲームが成立するというあたりが謎なので後で調べようと思った。


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