第68話 二人乗り

 夜は綾と裕子とゲームセンターの店員の3人で最後の夜を居酒屋で過ごし、裕子が5年間昭和時代を生活していた時の話に明け暮れる。オートバイが廃車になった理由が実は事故って置いて移動していた間にハイエナにエンジンやカスタムパーツを盗まれて結果廃車というよりも野に返すことになったのが事実だったり、たまたま助けてくれた店員がゲームセンターの店員だったことをいいことにそこでアルバイトし始めて、結果5年間住み込みしていたとか、昭和では最新だが、令和ではレトロゲーとして裕子はやり込んでいたのでハイスコアラーを叩き出したり、裏コマンドを知っていたりと、一目置かれるようになって事実上の店長になっていたけど実際はただのアルバイトのままだったとか、幸いなのか?不幸なのかギャンブルには興味が無かったので知っている大穴とかを当てたりすることは無かったようだ。


 日を跨ぐ頃にお開きとなった。裕子は初夏にしては嫌に澄んだ空を眺めながら5年間が走馬灯のようによぎりつつ、これから戻る令和に向けてどうするか考えてるような顔をしていた。


 「綾ちゃん、ありがとう。明日はよろしくね。」


 店員とまだもうちょっと話すことがあるようで、綾は一人宿への道を歩くことにした。


 翌朝、お酒を飲んだ割にはすっきりした目覚め。居酒屋のお酒の質がよかったからだろうか。裕子とはゲームセンターの開店前の9時半に待ち合わせることなっていた。オートバイもゲームセンターの駐輪場に止めたままだった。そういえば、これでそのオートバイが盗まれていたらシャレにならないな。とちょっと考えだして不安になったので早々に朝食を済ませてゲームセンターに向かった。


 幸いなことにオートバイはちゃんと止まっていた。


 「よかった・・・これでオートバイが無かったらあたしも裕子さんと同じ轍を踏むことになるしなにより間抜けだ(笑)」


 9時過ぎに裕子が現われた。これで二人乗りして帰れば裕子は元の世界に戻れるはず。


 「綾ちゃん、早いわね。今日はよろしくー。」


 開店前のゲームセンターを最後に見送って二人乗りで新潟を出発した。朝早く出発したのはこの時代は何年免許持っていても高速道路を二人乗りできないのである。

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