第59話 越後湯沢までのロード
二居温泉に着くと、左にかぐら田代スキー場のロープウェイ、右手に旧道沿いに旅館が立ち並んでいる。このあたりの道の出来具合は過去にさかのぼってる綾としては気になる配置。二居の先は三俣地区になるのだが、高度差が結構あって、しかも二居峡谷なる人が踏み入れられない空白地帯が長く続く。宿に着いてから調べた話だが、二居トンネルが開通したのはやはり昭和37年でこの年は道路の改良・新設のオンパレードの年だったようで、それまでは二居峡谷の断崖を縫うようにして三俣地区を通していたのが国道17号線だったようで通行止めになることもしばしばあったようだ。一つ前の長大トンネルである三国トンネルは昭和34年開通なので一足早い開通だが、つまり昭和34年より前は群馬と新潟を車で行き来する事が出来なかったわけで三国トンネルが唯一の群馬・新潟県境を通行可能な一般道と考えると最近まで新潟は距離こそ近いが行くには遠い地だったことがわかる。
そんな道路も昭和63年では関越トンネルの危険物積載車両の代替路、スキー場アクセスのための道路になっていたが、10番台国道にしてはとにかくトンネルが狭い。二居トンネルもご多分に漏れず狭小トンネルだった。二居トンネルを抜けると急勾配のヘアピンカーブの道路になっており、クロソイド曲線はどこへ行ったのか?というコーナーだが峠のコーナーとしてはなかなか楽しいコーナーを下る上にこの国道17号線の新潟県側としては開けた景色でツーリング気分を存分に味わえる区間でもある。
ヘアピンを4か所下り終えるとまた直線で緩やかな下りとなる。三俣地区に入ったと思われるがここから延々とスノーシェッドという覆道で雪崩や落石、土砂崩れから道路や線路を守るために作られた、トンネルに類似の形状の防護用の建造物でところによっては洞門とも呼ばれてる半分トンネルの中を走っていく。
「ああ、雪国らしい道路。中途半端なトンネルで変な気分だな(笑)」
緑萌える6月上旬では不必要な道路設備はより違和感を感じるものである。左に清津川の清流が流れているのを見ながら山の中にも関わらずほぼ直線をクルージングしているのもここならではだろう。
三俣地区の中心部に来ると左手にかぐらみつまたスキー場のロープウェイと広大な駐車場が見えた。先ほどの二居温泉にあったロープウェイとこの三俣地区のロープウェイは実は同じスキー場で日本屈指の大きさ且つ、日本屈指の一番遅い時期まで営業している(例年だと5月末まで営業)スキー場である。そんな豪雪地帯だが、6月ともなると雪など全くないので何もない場所に巨大な駐車場だけがあるのは奇妙な光景でもある。
芝原トンネルを抜けると景色が一気に変わって越後湯沢にあるスキー場のゲレンデや山並みが広がって見えた。芝原トンネルから街中の南端である神立地区までは一気に高度を下げるのでここも峠のコーナーらしい雰囲気でとても国道とは思えないクルージングを楽しめる道路。というのが綾の感想だった。願わくばもう少し眺望があるといいな。と思ったが、時間に余裕さえあれば関越自動車道よりもこの国道17号線を走りたい。と思わせる道路だったのでクロソイド曲線に感謝せずにはいられない。
越後湯沢の駅前に15時半ごろに綾は着いた。
「ふー、宿までもうあと少しなんだけどおなかがすいちゃったな。」
駅前のロータリーは駐車禁止ではなく、駐車場になっていたのでここにオートバイを置いて遅い昼食と越後湯沢駅を散策してから宿に行こうと決めた。
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