第56話 志賀草津有料道路
国道292号線、草津有料道路の料金所で現金を支払って草津へ向かう。今は無料開放されているがちょっとしたバイパスはすぐ有料道路になるのが昭和だ。現在もまぁまぁ高規格な道路が山の中をクロソイド曲線を描いて登っていくわけだが、日本初のクロソイド曲線の道路は国道17号線の三国越えなのを思い出した。
「そっか、これから新潟を越えるのに国道17号線で越えるなら初のクロソイド曲線道路を通ることになるのね。それにしてもあそこは最初から無料だったのに。」
ちなみに国道292号線のもう一つの道は六合村(くにむら)経由で太子を通って急カーブのつづら折れを乗り越えて草津に至るのだが、昭和46年までは太子線という国鉄吾妻線支線が六合村まで続いていたのだ。
などという、時代背景を思い浮かべてるうちに草津温泉に着いたがまずは志賀草津有料道路を走りたいのでそのままドン突きの交差点を左折して高度を上げていく。
志賀草津有料道路は草津から志賀高原を結ぶ有料道路だが、昭和40年に一応の開通はしたが未舗装だったりで開通時は結構な酷道だったことがうかがえるが、近年は関東一円では群を抜いたパノラマ観光道路として名高い。冬は冬季閉鎖になる豪雪道路なので5月下旬でもところどころに残雪が残っている。草津温泉スキー場から登り始めてロープウェイの発着場を右に見たあたりから景色が一気に広がる。
「わぁ、これは快適だし、何と言っても景色の広がり方が半端ないわー。」
ロープウェイと交差して見晴らしのいいところで止まって景色を眺めている綾。令和の今では無料開放された道路と噴火によってロープウェイも廃止されてしまったが、それ以外は昭和と令和では特に変わりがない。人の営みと隔絶された場所は時間が止まったように昔と変わらないから人は引き付けられるのかもしれないな。などと絶景を眺めているとただただ悠久の時間を感じざるを得ないが、翻って自然自らの力によって一瞬で景色も変わるものである。
草津白根山を抜けて万座三差路から草津セクションから横手セクションに入る。なんとここからまた別料金で草津口から料金所が3回目である。昭和のツーリングは本当に小銭が必要でこの時代こそETCみたいな無線通過ゲートが欲しいけど、料金所の雇用というのもあって今は大分縮小されたジャンルだと思う。
山田峠を越えて渋峠が志賀草津有料道路のハイライトだ。草津から進行すると右手には上州の山々、左手には妙高連峰を望み道路は緩やかな曲線を描いておりまさにマウンテンライド。といったツーリングライダーが夢見る景色そのもので、谷筋に残雪がちょこっと残ってるのも高原道路を走っているという実感が湧くものだ。志賀草津道路最高標高地点を通り過ぎる時にこの時代はまだ麦草峠が国道最高地点なんだなと思ったが有料と言えど国道292号線なのに。とも思った。
渋峠まで来て休憩する。ホテルのゴールデンレトリバーのインディ君はまだいないようで時期もスキーも終わってハイカーが数人うろうろしてるくらいで静かな時期だ。このホテルはホテルの建物で群馬県と長野県の県境が存在しているのでも有名だ。なので、長野県にちょっと足を踏み入れたかったのでここまで来たと言ってもいいだろう。この先の熊の湯までも絶景だが折り返すには渋峠くらいまでがいい頃合いだと思ってここで昼食をいただくことにした。6月初旬とはいえ、やはり標高2000mは寒い。暖かい山菜うどんを食べながら次の行程を思案する綾だった。
来た道を折り返して草津温泉に来た。草津温泉と言えばやはり湯畑だろう。湯めぐりとか温泉がテレビで紹介されまくる時代はもう少し後で昭和の温泉はまさに湯治場で若者はほとんどいない。いつから温泉巡りや日帰り温泉が老若男女楽しみにする時代になったかというと90年代中盤くらいからだと思う。日帰り温泉施設。というものが昭和にはほとんど無くて温泉場で日帰りするか?しないか?という選択肢の感覚だったようで、当然ながら草津温泉もオートバイは見れども温泉に寄る人は少なさそうである。尤も、平日なのでオートバイが沢山走ってるわけではないのでたまたまなのかもしれないが。早速綾は湯畑すぐ横の白旗の湯に入った。
「あっつーーーーーーい!!!!」
共同公衆浴場の湯は結構熱い。ゆっくり慣らしていけばどうにか入れるくらいの湯の温度である。周りのおばあさんの入り方を見ながら真似て入ってみればなんとか湯船に浸かれた。湯あたりするのもわかる気がする。ぬるめの温泉ならゆったり入ってリラックス。なのだがここは湯につかってる間もピリピリする熱さで、出たり入ったりを繰り返すのが定石なのだがさすがにそんな時間の余裕もないし何よりリラックスというよりも疲れが出そうなので2回くらいで止めておいた。
高原のやや冷たい空気が火照った体を冷ましてくれるこの感覚が実は一番いい時間だ。と思いながら温泉饅頭が飛んできたのでいただきながら湯畑を見つめながら次のルートを考える綾だった。
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