第49話 沼津駅北口と沼津機関庫

 改札を抜けて北口に繋がる長い跨線橋を歩いて北口に抜ける。令和の今はロータリーがあって右手にBiVi沼津が有り南口とは対照的で開放的な駅前だが降りてみるとすぐ目の前に道路が有るだけだった。跨線橋がメチャクチャ長かったので見える景色を見ながら渡っていたが、右奥に扇形に広がった線路が見えていた。それは国鉄史上に輝く大機関区沼津の姿だった。 昭和の初めに存在した超特急「燕」を動かし、整備していたのがここ沼津でそれは国鉄の中でも最先端を誇る路線の東海道線の機関区に他ならない。


 「南口と違って全然違ってる!イベント会場のキラメッセぬまづもない!!」


 当たり前である。ちなみに北口の変遷は1998年に初代キラメッセぬまづが出来、その後2006年にBiVi沼津が完成し、一応の北口整備が形になって2014年にプラザヴェルデ=現在のキラメッセぬまづが完成して令和に見ることができる沼津駅北口が形成された。駅を降りて面した道路を右に曲がって進むと沼津機関区、扇形機関庫・転車台が有るのだが、興味深く覗いていると、国鉄社員らしき人が近づいてきた。


 「機関区に興味ある?!それなら、ちょっとだけ見ていくといい。ついてくるといい。」


 と、機嫌のよさそうな老いた国鉄社員が案内してくれた。そこには一面の蒸気機関車と電気機関車が止まっていた。圧巻である。扇形の機関庫と言えば京都の梅小路機関庫くらいしかイメージが無かったがよく考えたら蒸気機関車には転車台は必須で沢山の機関車を保有している機関区であれば扇形が必要になるのは言うまでもない。殊に沼津は東海道本線で大動脈を担う動力庫であるのだから当然である。とはいえ、東海道本線は鉄道の最先端を走る路線で新幹線も東海道から始まったくらいなので、この時代でも蒸気機関車よりも電気機関車が圧倒的に多い感じでD52、C58が残ってる程度だった。


 「どうだい、壮観だろ。お嬢ちゃんも機関車が好きなのか?」


 綾は歴史に興味があるだけで機関車はその中で調べた中で知った程度だったが、やはり蒸気機関車が現役で残ってることにただただ感動してて、南口のモニュメントにある動輪はなぜC58なのかが合点がいった。最後の沼津機関区所属の現役蒸気機関車がC58だったからだ。


 「やっぱり蒸気機関車はいいですねー!合点がいきました!」


 老いた国鉄社員が少し首をかしげながらも、好きモノには優しいという今の時代とは違う朗らかな対応で、他にも見せられるところまでは案内してくれた。


 「今月で国鉄を退職する身なんでつい案内しちゃったよ、お嬢ちゃんかわいいからつい(笑)」


 いつの時代もかわいいは正義なんだな。と綾は思った。綾自身年齢よりも若く見られるので子ども扱いされがちでコンプレックスを持っていたが、役得なことが最近多いのでコンプレックスを長所に跳ね返すってのはこういうことかな?と考えつつ、老いた国鉄社員に謝辞をして道路に戻り西に向かって歩き始めた。


 「そうか、キラメッセぬまづ=沼津機関庫の跡地だったのか。」


 ライブ会場にもなるキラメッセぬまづの前身である沼津機関庫に入れたのはライブ会場で楽屋に案内されたようなそんな高揚感を抱きながら、今度は改札を通らないで南口に戻ろうと歩みを進めた。令和の今はあまねガードと呼ばれるガードを抜ける。あまねガードと呼ばれるようになったのは2004年で結構最近で由来は幕末・明治期の思想家・西周(にし あまね)の屋敷があったからで声優さんのあまねさんから来てるわけではない。


 機関庫の見学もしてたので思った以上に沼津駅前に滞在してしまった綾だったが、思った以上に楽しめたことで満足感も並々ならないものであったが、伊豆箱根鉄道軌道線が沼津では営業していないのだけが残念だった。

 「よし!まだ軌道線が走ってる姿を見てないから三島に行くぞ!」


 CB72のエンジンを掛け、三島に向かう。

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