第48話 沼津駅南口

 沼津港からは幹線道路で駅まで一直線。という道はまだなく、地図も簡略なのでいまいちわからない。この時代の地図は正直ナビレベルを求めると厳しいところがあるのだが、グーグルマップで大体の位置を確認しながらなんとか国道1号線に再び戻ってこられた。


 「あ!海鮮ものを食べたかった!しまったー。」


 沼津港線(蛇松線)の衝撃が大きすぎて忘れてしまったのもあるがまだ時間は余裕で午前中なので、昼飯という時間にはまだまだ早すぎるので気持ちを切り替える。浅間町の交差点まで来て、道を確かめ、御成橋通りを右折してようやく行きの道に戻って国道1号線まで戻った感じ。


 大手町交差点で国道1号と伊豆箱根鉄道軌道線の併用軌道が見えている。このまま沼津駅に向かって南口の駅前まで来た。併用軌道は今でいうイ~ラdeの横に付けた感じで2線に分岐した終点としての電停が存在していた。近くにオートバイを止めていよいよ本丸の沼津駅散策だ。


 西武百貨店沼津店は開店中で人の入り具合もなかなかだ。「沼津で東京のお買い物を」というキャッチコピーで1957年に開業しているのでまだ開業から5年といったところか。肝心の伊豆箱根鉄道軌道線だが、動いてる気配がないというか、車両の手前にバスが止まっている。車両が止まってる建物には「海底透視船龍宮丸で三津水族館へ」とコピーが書かれている。沼津から三津水族館はこの時代でも立派な観光拠点だったんだなぁと思いながら、あの道なら沼津港から船で行ったほうが確かにいいよな。なんて思いながら、電停できょろきょろしていたら声を掛けられた。


 「三島に行くずらか?ならバスしかないずらね~。台風で止まってからすっかり動かなくなったままずら。」


 田舎臭いようなしゃべり方だが、見た目は結構かわいい少女から声を掛けられた。どうやら同世代くらいと思われて声を掛けられたようだ。


 「あ、オートバイで遊びに来たついでにうろうろしてるだけなんですよ。」


 しまった!都会人だったか?!といったような顔をして顔を赤らめながらも軌道線の話をしてくれた。どうやら1961年の集中豪雨で黄瀬川の橋が流されてからずっと軌道線は休止中らしい。朝の国道1号線で感じた違和感はこれだったのか。と納得する綾。それにしても休止から2年くらい掛けて廃止に至ったのか。と沼津側の軌道線の最後はなんとも寂しい終わり方をしたものだ。


 せっかくなので、北口も散策しようと思ったのでかわいらしい少女ともここで別れた。令和5年現在の少女の年齢は77歳くらいになってるということを考えると今も存命で有ったら嬉しいな。と思ったし、こうして歩いていると人々とすれ違うたびに存命の人は少な目なんだなと思うとちょっと寂しい気持ちになった。長寿の引き換えは別れの積み重ねになるのかな。と少しだけセンチメンタルな気持ちになったが、改札を通るのでとりあえず入場券を購入した。10円だった。

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