第47話 昭和の沼津港
某アニメでも出てくる「びゅうお」や観光名所になっている沼津港であるが、いまいち細かく記載されてない地図を見ながらなんとかたどり着いた沼津港は今では考えられないが港まで鉄路が伸びていた。今見ても沼津港の水揚げする沼津魚市場と書かれた構築物の道路側はまるでプラットホームの高さになっているが、それがそのプラットホームだった。佐政水産の前の道路に今も沼津港線(蛇松線)の線路がそのまま残されているはずだが、この辺りは民家がひっきりなしに密集したところで、線路際を人が歩いていることもあった。踏切は遮断機が有るのが当たり前だが、なんとここでは踏切は無くどうするのか興味深くなった綾は港の反対側の魚卸店が集まるほうにオートバイを駐車して散策することにした。鉄路は道路を挟んで魚市場がプラットホームになってるが、さすがに歩き回る雰囲気ではない場所だったのでそのまま千本港町交差点の方に歩を進める。道路と交差するあたりは併用軌道のような感じで遮断機は無く線路も路盤が見えないくらい草がボウボウと生えている。線路際は人が歩く程度の隙間があるので時折人が線路沿いを歩いてて生活道路の一部にもなってるようだ。
地図には「びゅうお」は無いし、港の作りが全く異なってることに気づいた。「びゅうお」があるあたりは元は陸地で対岸の埋め立て堤防が繋がってるようで、港湾改造で堀ったようである。
いずれにしても、あの景色はこの時代には無かった。ので衝撃だった。元から港の出口は「びゅうお」と思い込んでいたが逆に今の港の構造を見ると狩野川とは完全に分離されてることを考えると水害や高潮対策で「びゅうお」は出来たんだなと理解ができる。元々の目的が観光施設ではないのだからそりゃそうである。
再び千本港町に戻って遮断機の無い踏切に来ると貨物列車が来るようで。というか来て停車している。係員が降りてきて旗を振って自動車や通行人を止めていた。安全が確認できると汽笛が鳴り、ゆっくりとディーゼルカーが轟音を鳴らしながら道路を悠々と跨いでいる。
「えー!?そんなのありなの?!」
綾はびっくりしてしまった。沼津港線(蛇松線)のほとんどの踏切には遮断機が無いのである。行きでも遮断機が無いのを見ていたのでもしかしたらこの時代でももう廃線になってたんだっけ?という疑問符はあったのだがまさかの人力遮断である。
こういった秩序の無いながらもルールがあるというのが昭和の風景なんだろうなぁと思う。線路上を人が歩いていてもさほど人は気にしないのも納得で、その上でのルールがあって人々はそれを守って事故を起こさない。それが昭和なのだ。
沼津港で昭和のなんたるかを改めて思い知った綾はいよいよ沼津駅へ向かうことにした。
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