第43話 内浦三津

 口野から内浦までは距離にして4kmほどであるが、日もかなり暮れて見えるものがシルエットなり始めていたので走っていても海岸線から見える日没後の黄昏時であった。道はかなり海岸線に沿ってうねった道で舗装もままならない感じで進みが悪い。たったの4kmでも道が悪ければ時間は想像以上に掛かるものである。


 「ああー、最後の最後で日没しちゃったナ。でも宿まであと少し!」


 千葉から全部下道、しかもバイパスらしいところはほとんどないので疲れも予想を超えているがあと少しという振り絞るような気持ちで走るのだが、これで見えた!でも実はゴールじゃない!とか落とし穴が有ったらめげてしまって動けないかもしれない。そんな落とし穴のような道だが、右に目をやれば雄大な駿河湾の黄昏が後押ししてくれるようだった。


 なんとか、宿に着いた。時間は19時ジャストくらい。オートバイ、しかも女性で来るというのは相当レアだったのもあるが日没後になっても来なかったので心配されつつ、予想以上の出迎えをされた。老舗旅館だけあって、サービスは格別によく宿の雰囲気もロケーションも抜群である。綾もここがどういう宿なのかは知っているが、そういう宿になるにはあと60年以上先なので綾の心の中にそっとしまっておくのだった。


 食事を終えて一段落して、海岸線に向かい砂浜でしゃがみこんで夜空を見上げると星が目の前に降ってきそうなくらいの満天の夜空だった。


 「さーて、明日は沼津と三島をじっくり回って帰るぞー。」


 そう、三島は三嶋大社までは来たがその先の街中には一切立ち寄っていないのでお楽しみは最後に。というわけでもないが箱根で踵を返す予定だったのがせっかく沼津まで来たので街散策はしたいと思ったからだ。勿論、明日は日曜なので早い時間に帰らなければ月曜以降の予定に狂いが生じてしまう。


 とはいえ、せっかくの旅行で先のことを心配して楽しめなくなっては損なので、見たいところは余すことなく見て帰りたいな。という気持ちの方が優先されるのが綾の性分ともいえよう。


 砂浜でラクガキしたあと一呼吸して気持ちを切り替えつつ今日の疲れをしっかりとるために明日の事前調査をして早めに寝ることにした。


 早速、昭和の内浦三津がどうなってるのかを調べるとなんと三津シーパラダイスはすでに営業していた。正確には三津天然水族館。という名前のようである。だいぶ固そうなイメージだがその前は中之島水族館と呼ばれて、1930年から営業開始という歴史のある水族館なのをここで初めて知った。日本で初めてハンドウイルカを展示飼育した水族館であり、日本で2番目に歴史の長い水族館らしい。ちなみに一番は魚津水族館だそうだ。


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