第34話 横浜市電
川崎市電の存在を知り、それを目にした綾は感慨に浸る間もなく、生麦駅あたりまで来るとまた路面電車が現れる。横浜市電だ。横浜市電については某アニメ映画でも出てきたので知ってはいたが、生麦駅にも通っていたのは初めて知った。第一京浜国道は近代交通網の要であり、先進的な交通のデパートではあったが明治からの近代公共交通網の終焉を迎える時代にあるんだなと思えるくらいには車両もさることながら構築物の老朽化が著しく感じた。近いうちに市電やトロリーバスは一斉に姿を消すことになる。
ゴミゴミした街並みは品川からほとんど無くならずに横浜まで来た。こうして走ると千葉の高規格道路である京葉道路はその街並みとも思えない田畑を突っ切る最新技術の道路という違和感はニュータウンの開発期のそれだったんだな。と綾は思い出した。川崎〜横浜は第一京浜国道こそ高規格ではあるが併用軌道が存在、踏切も多数と今まさに改革期に入ろうとしている直前の時期だからこその郷愁感を感じざるを得ない。もちろん、令和にはすでに無い公共交通網と知っているから感じる郷愁感でもあるが。
横浜駅に到達する前に第一京浜国道は終わり、東海道である国道1号線になり横浜駅を横にする。このあたりは今でもやや名残はあるが横浜駅とは思えない殺風景な場所だった。時間も普通に朝なので車の混み具合もかなりの様子になってきたが今より遥かに排気ガスが臭い。これはマフラーやエンジンの性能もあるしガソリンに添加されたアルキル鉛などガソリンにも由来してるのだろう。やがて高島町交差点に出る。ここを直進すれば某アニメ映画でも出てきた桜木町駅でリアルタイム聖地巡礼が出来そうだが、今日は箱根ツーリングなので16号線には進まず東海道である国道1号線をさらに進むのだが、さすがに排気ガスが辛いので一旦停車してスカーフを口に巻いた。
見渡すとめちゃくちゃ複雑な交差点で市電のクロス具合も半端無かった。この高島町が複雑なのは初代横浜駅が桜木町駅で2代目の駅が現存はしないが高島町駅で現在の横浜駅とは大分違ったスイッチバックしないと進めない仕様だったのもあるだろう。
蛇足だが千葉駅も東千葉駅が千葉駅で内房線や外房線はスイッチバックしないと行けなかった時代である。
やがて、横浜の街並みからようやく抜けようというあたりが保土ケ谷でここで市電はプツッと切れていた。綾にとって新鮮であった併用軌道はここで終わり、権太坂をCB72で駆け上がっていく。
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