第35話 横浜新道から国道134号線へ

 権太坂を抜けると戸塚である。戸塚と言えば開かずの踏切があったが近年立体化で踏切は消失したが、戸塚の駅前を走ることなく国道1号線は右に曲がって横浜新道に入る。横浜新道は元は日米安保条約まで遡る道路で、今でいう戸塚バイパスはワンマン道路と呼ばれていた。何がワンマンかというと、吉田茂首相が大磯に居を構えていたので先ほどの戸塚の踏切を通りたくないから出来た。という曰くつきの道路である。こうして政治家の力によって良くも悪くも道路が高速化していくのだが、やはり戦後最大の政治家の力によって決まったと言えば田中角栄の関越自動車道と上越新幹線だろう。スキーヤーと新潟に用事のある人は田中角栄の恩恵を大きく受けることになるがこの時代は当然ながらその段階にはない。


 快適な横浜新道を戸塚まで走る。ここまで走った中ではダントツに高規格道路であるが、いかんせん距離はさほどないので戸塚警察署あたりであっさり終わってしまった。


 「併用軌道ももう多分ないと思うから早く箱根に行きたい!あといい加減疲れた!」


 当初予想しているよりも遥かに箱根は遠い場所であった。まだようやく藤沢に入ろうというところである。時間はもう10時前だ。出発してからかれこれ5時間は経っている。


 藤沢を飛ばして藤沢バイパスに入って辻堂から国道134号線に出るつもりだったが、地図には書かれてないし、実際工事中だった。藤沢の街に下りるとこれまた新藤らしき道に出るが舗装されていない。湘南新道とは藤沢から浜見山交差点を抜けて茅ヶ崎市の浜須賀に抜ける道路で今でこそ全く新道でもないしバイパス感も無いが出来たばかりの未舗装路とほとんど通らない交通量なのでゆっくり走るにはよかった。浜須賀でようやく国道134号線に出る。ようやく湘南を感じられる景色になった。まだ夏には早い時期ではあるが、日が照ってる初夏の陽気になり始めていたのでちょっとした夏を先取りした気分を味わっている綾。まだ防風林が育っていないので道路沿いに湘南の海を見ることができるが今は防風林に柵やネットで走りながら観られる場所は限られてしまっているし少なくとも江ノ島より西側は海を見渡しながら走れない道路になってしまっている。理由は単純で綾も走っていて気付いた。


 「わ、砂が浮いてる!こわぁ。。。」


 そう、防風林が整備されていないと砂が道路に入り込んでしまうのである。冬場は北風なので山からの風になるが南風が吹くと目も当てられない道路になってしまうのだった。

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