第23話 月曜日
月曜は憂鬱だ。なぜなら次の休み迄最も遠い曜日だからだ。
綾は大学生であるが社会への一定の切符を得るために行ってるという気持ちがどちらかというと大きいし、生活や遊興の糧として、アルバイトもしなけばならない。
VTZ250のエンジンを掛ける綾。
「キュキュキュ・・・・。」
エンジンが掛からない。キルスイッチがオフになってたり、ガス欠だったりと初歩的なミスでエンジンが掛からないことはよくあること。一旦気を落ち着けて再びセルスターターを掛ける。
「キュキュキュ・・・キュ! ブロロロ!」
掛った!掛ったがどことなくエンジンの回りが悪い。朝早い時間なのでバイク屋「ようこの」の陽子さんに電話するには時間が早すぎるし、とりあえずエンジンは掛るし走りそうなので今日は午前中は大学で午後はアルバイトで夜遅くまで働くというつまりに詰まったスケジュールなのがわかってるので、無用なトラブルを招くのもよくないので、電車で通学することにした。
「月曜の朝からアンラッキーなことが起きると一週間が余計に長く感じるわね。」
こういう時は血液型がA型だと頭の隅にオートバイの不調が常に頭をよぎって終始集中できなくなる。という気になることを気に病み続けるところが実に良くない。駅までは歩いて15分ほどでJRの最寄り駅に着く。大学までは大凡1時間弱で電車でも着けてしまうのでオートバイが無ければ不便なのは最寄り駅まで歩いて15分の距離くらいなものである。
E231系に乗る。朝はかなり混んでいるが昔ほどではないらしいので読み物をする、外を見て思いに耽るくらいの余裕がある日もまぁまぁあるが酷い日は圧縮され挟まれた作用で最終的に体が宙に浮いてしまうなんて恐ろしい日もごくたまにある。よく電車が止まる路線だからだ。通学は大きな川を3度渡るが、1度目はジャングルから人並みの街、2度目は海に沈みそうな街に浮いた川、3度目はドブ川から復活した都心の川。といったところだろうか。朝の透き通った光が川面に反射して朝の不運を浄化してくれるかのように綾の顔に反射する。
大学は都心のど真ん中にあって駅から歩いて5分くらい。楽器店が並ぶ通りからすぐにあるし、昨日行った神田神保町は隣町である。今どきの都心の大学は高層ビルになってる大学が増えてきたが、綾の大学もその一つ。昔は何故か高い壁で大学を囲っていたせいでバリケードストライキとか学生運動しやすい環境だったらしい。今はすっかり通りに面して土地の広さ以上にキャンパスが広く感じるオープンな環境となっている。
朝から眠い目をこすってほぼ3時間講義を聞くのは結構な体力と気力を奪われるが、同級生と一緒なら多少は気が紛れるものである。
「綾ちゃん、今日は師弟食堂で食べる?!」
話しかけてきたのは同級生であり、部活仲間の紗友里だ。
「うん、今日はちょっとお金が無いけど学食なら大丈夫。」
師弟食堂なる歴史のある名の学食で食べるのだが、昔は地下に有ったのに今や17階という見晴らしのいい場所に移ってるのだが、綾としては最初からここにあるから特別感は感じないが、学生向け値段なのは変わらないようである。今日は八宝菜丼390円をいただくことにした。
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