第22話 夜の底
上野バイク街を巡るうちにすっかり日が暮れてしまった。上野バイク街も夜はやはり早く20時にはゴーストタウンになってしまうようで中古バイクを眺めてることに夢中になってるうちに喧騒から静寂の闇に包まれ始めていた。
綾はこの時代の人間ではないことを自身が理解しているからかわからないが夜に対していささか恐怖というか闇に飲まれてしまいこのまま令和に戻れなくなるのではないかという不安を感じるからか足早に上野を後にするのだった。
夜の底が抜けたような上野バイク街。やがてこの上野オートバイラプソディが終焉を迎えるまでは10年程のちだが、夜闇がこの街を飲み込むような錯覚を覚えた。
帰宅は昭和通りから蔵前橋通りで帰ることにした。
5月はやはり日没後は肌寒い。買ったばかりのKADOYAのNCジャケットが早速役に立っている。そういえばこの時代で形に残るもので買ったものは昭和63年の地図とジャケットのみだ。お金もあまり無いのもあるが、令和に生きている綾にとって昭和の物品は不必要または使えないもの、わけのわからないものが多いからでもある。
こち亀の話ではないが東京都と千葉県の県境である市川橋まではネオンサインや街明かりが煌々として車線も4車線あるのだが、千葉県に入ってまもなく2車線になって街明かりも急激に閑散としだすのであからさまな郊外化で夜はそれを際立たせる。夜の底が抜ける感覚とは違い、こちらは白いキャンバスのようにこれからデジタルで描くモニターのスイッチを入れる前のモニターのような感覚だ。ジャングルこそないがこち亀の言ってることはあながち間違いではないな。と綾はつい納得しながら帰途に着いた。
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