第17話 俺達のサーキット

 タイミングのよかった綾は雨にほとんど濡れることなく1階の地図コーナーで地図を探した。よく考えたら古書店に入って昭和63年の地図を探すわけではないので、時間がかかることはなかった。今は昭和63年だったから。


「あ、そうか今の地図を買えばいいだけだったんだ。」


 すでに手元にある地図は昭和50年の地図だったわけだがこれが湾岸地域では全く役に立たなくて難儀して神田神保町にたどり着いたわけだが、これでこれから先は悩まなくて済む。


 雨が止むまで綾は三省堂の中を探検するのだが、とりあえず1階は雑誌コーナーもあるのでここで立ち読みするのがこの時代のトレンド知識を溜め込むには都合がいい。今はない雑誌がたくさん並んでいる。オートバイ・車コーナーに真っ先に向かった。そこには電話帳くらい厚い月刊オートバイが置いてあった。この時代は圧倒的に月刊オートバイだ。分厚い雑誌だがそのほとんどが広告なのだが、この広告も読んでいて実に楽しいが、メインは俺サ(俺達のサーキット)というコーナーで、峠=公道で走った読者投稿写真をコーナーとして使う企画。この時代はこれが売れるらしいが、先週走った奥多摩を思い出しながら首を垂れるのであった。


 綾的にはファッションも気になったのでファッション雑誌コーナーも覗いてみるのだが、令和のファッションとは当然違ってイケてる子は聖子ちゃんカットかなと思ったら、ワンレンやソバージュらしい。今の綾はおさげにしているので違和感こそさほどないがどちらかというとこの時代だとダサいヘアスタイルらしい。


 ほどなく、雨が止んだので神田神保町を散策することにした。

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