ふとしたきっかけで生まれた小さな衝突。
すぐに収まるかと思われたそれは、見る見るうちに大きくなって……
勢いが凄い。
その勢いたるや「パラシュートなしでスカイダイビングしてみた」である。
最初こそは高さのおかげか地上の風景も点のように小さく、安心していられるかもしれない。
しかし、終わりに近づくにつれ分かるはずだ。あまりの加速度と、自分の致命的な状況が。
猛烈な勢いを支えるのは、
コンビニにある商品や小道具を中心にした、風景・心理の描写である。
一読しだだけで、こちらにも、じとじと加減が伝わってくるのだ。
この適切な描写により、短い間で主人公には共感することになるだろう。
共感させた上で劇が進み始めるのだから、読者の振り回され具合は尋常ではない。
呆然とさせることが、優れたホラーの特徴なのだとするのなら、この作品は間違いなくそれに当てはまるだろう。