剣と魔法のふきだまり
不世出の凶悪な大悪魔、ウロキオスが放った暗黒のエネルギーによって空が禍々しい赤色に染められてから、もう二年ほどが経っていた。
世界の果てに位置する、闇の瘴気に包まれた孤島。その断崖の頂上には、一際強い邪悪な気配を纏う城が居を構える。
その最深部、数多の勇気ある者たちが破れ去った魔王の間に、今日また正義の魂を宿した猛者達が姿を現したのであった。
「ふはははは! またしても無謀な愚か者共が我が城へと死にに来たか! ここまで辿り着いた事を誉めてやろう、名乗るがいい! 実力次第では我の記憶の片隅に留めてやろうぞ!」
今まで戦ってきた部下どもとは訳が違う、圧倒的な魔力の気配に緊張が走る勇者一行。全員が身を震わせる中、一人が口火を切る。
「俺は勇者ハルトに仕える戦士、ゴダン! 貴様の配下で四天王一の豪傑ボスタンを葬ったこの斧で、致命の一撃を食らわせてやろう!」
それに続けとばかりに、仲間達も名乗りを上げる。
「同じく勇者ハルトの眷属、魔術師シューラー! 生まれ落ちて以来、すべてを捧げて研鑽してきた魔術の全てを以て貴様を打ち倒す!」
「アタシは武闘家ハンナ! ウロキオス、アタシの姉リスタはあんたに殺された! この恨みを晴らすために何もかも捨ててきたんだ、ここで決着をつけてやる!」
「ジャタグはバケモノサソリのジャタグだ 元々まものだったけど悪さがいやになったからこっちでやっていく感じだぞ がんばるぞ」
三人と一匹を舐めるように見回すと、ウロキオスは下卑た笑みを浮かべる。
「威勢のいい連中だ、うぬらの顔が絶望と悲嘆に染まるその時が楽しみでならんわ、ふはは! して、勇者ハルトはどこだ?」
「………」
「何か言わんか 恐ろしくて声も出ぬか?」
「………」
「フン、なるほどな。すぐには姿を見せず、後方から隙をうかがっているというわけか。小癪な真似を、そんな策は魔王には通用せぬわ! さあかかって来るがいい勇者ども! 無の煉獄へ叩き落としてくれるわ!」
臨戦態勢に入るウロキオス。周囲に轟音が鳴り響き、常人では耐えられないほどの闇のエネルギーがあたり一帯に広がる。
勇者一行は怯むことなく、各々の武器を抜いて雄叫びを上げた。
「いくぞ! ぶっ倒してやる!!」
「全ての魔力を解き放つ…うおおおおおお!!」
「姉さんの仇! ここで仕留める!」
「わーーー」
ゴダン、シューラー、ハンナ、ジャタグが一斉に走り出すが、まるで歯が立たない。
全ての攻撃を捌きながら、ウロキオスが凄む。
「どうした勇者ハルトォ! 仲間が苦しんでいるぞ! 正々堂々と戦わぬか!」
しかし、返答はない。
凄まじいエネルギーのぶつかり合い。ここで、ウロキオスは違和感を覚えた。
「ええい、これでも食らえい 魔将の炎術『ヴォルカニコ』!」
吹き荒れる火炎の奔流に、全員が吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
「きゃあっ!」
「痛え!」
「きかない」
床に叩きつけられた全員を睨みつけるウロキオス。
「妙だぞ…うぬら以外の人間の気配がまるでせん。気配を消しているとは説明がつかぬ、この場に来ていないのは明らかだ! 何のつもりだ!」
すると、倒れ込んだハンナが起き上がって口を開いた。
「ハルトは…ハルトは…もうこの世にはいないよ…!」
「何ぃ?」
事態が飲み込めないウロキオス。
「勇者がこの世におらぬとはどういうことだ」
するとシューラーは苦悶の表情を浮かべた。
「ハルトはこの城で…お前の部下と相討ちになったんだ…だからここには来れなかった 許さないぞ、ハルトのためも絶対にお前を倒すんだ!」
虚を突かれる魔王。
「我の部下が? 我が最強の部下たる四天王は既にみな敗れているというのにか? なんということだ! 一体誰だ、そんな余計な大金星を上げたのは!」
「そんなもの知るか!」
吐き捨てるゴダン。
「どんな奴だ、見た目の特徴を言え!」
そう言われると勇者一行は顔を見合わせた。
「急すぎてあんま覚えてないぞ」
「やたらと動きが速かったのは覚えてるが…」
「首が長かったよね?」
「あとみそのにおいした」
「味噌? 味噌臭いと言ったか! 首が長くて速くて味噌の臭いというと発酵エミューのソイビーだな! あいつがか! あいつが!?」
混乱したウロキオスは一旦玉座に落ち着き、口元に手を当てた。
「糧食担当のソイビーが一体どうやって…? ふん、勇者の命を断つという我が至上の楽しみを奪っただけでも気に入らぬというのに、あんな取るに足らぬ者にどうしてそんなことができようか」
そこでウロキオスは我に返り、勇者一行が微妙な顔で下を向いたり、目を逸らしていることに気づいた。
「何だうぬら、何を隠している! 言わんか!」
するとシューラーが首をぶんぶん振った。
「絶対言わない 何も言うことはない!」
ウロキオスは舌打ちをした。
「ええい埒が明かぬ! これを受けるがいい、魔将の禁術『カイアモン』!」
「ぐぅ!?」
胸を押さえて悶絶し、倒れこむシューラーに、
「シューラー! 大丈夫か!?」
「おのれ魔王、何をしたんだ!」
「げり?」
駆け寄る仲間たち。
「カイアモンは過去にその者が見た光景を問答無用で暴くのだ! 勇者ハルトとソイビーの戦いの真実を、今ここに映し出さん!」
「やめろウロキオス! やめろ…!」
「拒んでも無駄だ! そら、我の眼に勇者の姿が浮かんできたぞ!」
~~~~~
「何とか魔王の側近を全て倒し、いよいよ残すは憎きウロキオスのみ…! だがもう空腹が限界だ!」
伝説の剣を杖がわりに立ち、顔を歪めるハルト。
「もうひと踏ん張りだハルト。無事に帰ったら故郷の国で、うまい肉と酒を存分に楽しむとしようじゃないか!」
そう言って拳をかかげるゴダン。だが、
「でも現実問題、アタシたちの体力はもう底をつきかけてる。気持ちだけで倒せるほど甘い相手じゃないのも確かだよ」
ハンナがそう苦言を呈した。
「ではどうしろというんだ。手元にあるのはわずかばかりの回復薬だけだ。腹を満たすなんて呑気なことも言ってられまい!」
「アタシは事実を言ったんだよ! このまま突っ込んでもちゃんと実力を発揮できないのは明らかじゃないか!」
「何だと!」
「何よ!」
「はいはい揉めるのナシ! 揉めてもいいことないよ! 今のは俺が余計だったわ! ごめん!」
立ち止まって向き合う一行。
「本当、一言多いの俺の悪いクセだな。士気下げるようなことしてごめん」
「ハルトは悪くないよ。本当にみんな疲れているのはその通りなんだし」
慰めるシューラーだが、ゴダンは浮かない顔である。
「シューラーはハルトに甘すぎるんだ! いくら恋仲だと言ってもな」
すかさずハンナが口を挟む。
「テメエの方が余計なんだよ筋肉ダルマ」
「何だ貴様!」
今にも掴み合いになりかねない空気のゴダンとハンナ。気まずくて下を向くしかないシューラー、くしゃみが出そうで出ないジャタグ。
そこでハルトがあることに気づいた。
「何か匂いしないか?」
全員が辺りを見渡した。
「確かになんか匂うな…料理でもしてるのか?」
「馴染みのある匂いだな」
「やだ何これ 何?」
「みそしるじゃね」
「味噌汁だ! 魔王城の最上階で何で味噌汁?」
ハルトが微笑む。
「そりゃ、魔王だって飯は食うだろ。専属の給仕係がいてもおかしくない。近くに食堂があるかもしれないな!」
そう言ってハルトは匂いのする方へ歩み出した。
「ハルト!? 何する気?」
「決まってるだろ! パパッと腹を満たして、万全の状態でウロキオスに挑むぞ!」
リーダーのこの提案に、
「えぇ~~大丈夫か?」
「魔物が食べるようなもの口に入れていいの?」
ゴダンとハンナは疑わしい様子である。
「大丈夫だって! ほら行くぞ!」
仕方なく全員はハルトについて走り、やがて匂いの元と思われる部屋に辿り着いた。
「ここだな! 邪魔するぜ!」
ハルトが扉を蹴破ると、中には鍋を覗きながら火加減を確かめている魔物がいた。長い首と足を持ち、顔が小さい、ダチョウのような姿をしている。
「だだだ誰ダ貴様ラ!? ココに貴様ラの求めル物はなイ! 立ち去レ間抜けどモ!」
「そう言うなよ。俺達は腹が減ってるだけなんだ、そいつを少し分けてくれよ」
ハルトは戦う意思がないことを示すため、剣を床に置いた。それに従い仲間達も、渋々武器を手放す。
「ならン! これハ魔王ウロキオス様ニお出しすル為コシらえたモノ! よそ者が食らウ資格はなイわ! キュイイイイイ!」
魔物は憤慨し、一行に襲いかかってきた。
「危ねっ!」
「もぉーだから嫌だって言ったじゃないか!」
「言ってる場合か!」
武器を捨てたばかりに、なす術もなくいたぶられるハルトたち。
「分かった分かった! もうどっか行くからやめてくれ!」
「何だこいつ、妙に力強いぞ!」
「ハルト! ハルト大丈夫?」
「ちょっと髪ひっぱんないでよ!」
「かゆい」
皆が戸惑う中ハルトは、暴れる魔物の攻撃をくぐり抜けながら、先ほど置いた剣を何とか手繰りよせ、
「悪いな、切り捨て御免!」
魔物を袈裟斬りにした。
「ドギュ!?」
倒れる魔物。
「すまない…こんなつもりじゃなかったんだ…」
剣を構えたまま、申し訳なさそうに佇む。
「アンタはもう…ついさっき余計なこと言って揉めたばっかなのにこんな事して」
「本当にごめん」
「責めなくてもいいじゃないか。ハルトはみんなのことも思って動いたのに」
シューラーのフォローが癪に障ったらしく、ハンナが声を荒げる。
「アンタさあ、ハルトの事ばっか全肯定して、ちょっとは主体性持ったらどうなの!?」
「そ、そんな…」
「アタシより後にパーティ入りしたくせに! 知らないところでヤる事やって! そんなにっ、そんなにアタシに二人の仲見せつけて楽しい!?」
「誤解だって! そんなつもりじゃないよ!」
二人の諍いを尻目にため息をつくゴダンと、何も言うことができないハルト。
「嫉妬というものは見てられんな。そう思わないかジャタグ?」
「くっせ」
「そうだなあ。モンスターのお前でもこのきなくささが分かるか」
「いやちがくて マジでくさい」
「ん? 本当だ…肉が焦げている…?」
ガッ!!!
「ぐっ!?」
突如として魔物に飛び付かれ、不意を突かれたハルトの体に大きな爪が食い込む。
「オのレ凶悪な人間メ、この命に代えテ貴様ひとりデモ消し炭にしテくれルわ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 痛たたた、ゴダン助けてくれ!」
「きっ貴様、離れないか! この!」
魔物の頭を殴り付けるが、離れる様子はない。
「私の体内でハ特殊な腸内細菌にヨル発酵が常に繰り返サレテいる! これヲ暴走させル事にヨり私の細胞全てガ強烈な爆薬とナって敵を道連レに吹き飛ブぞ! それよっコいしョ~! ほらどっこイしョ~!」
徐々に魔物の身体が熱を帯び、光り始める。
「いかん、離れるんだみんな!」
「え 勇者は?」
「と、とにかく離れろ! このままでは全員共倒れになりかねん! ほらお前たちも!」
「アンタのそうやって被害者ぶるのが前からマジで気に入らないんだよ!」
「そ、そんなこと言われたって…」
「だあーーっこっち来い!」
「えっ!?」
状況が飲み込めない二人を抱え、全速力で部屋を出るゴダン。
「何なにどういうこと!?」
「え、ハルトは? 何してるの!?」
「奴なら大丈夫だ、ただでは死なんさ! あれ、ジャタグ?」
「待ってえええええこれなんか駄目なやつな気がするううううう」
ゴダンはその風体に見合わぬ俊足で部屋を脱出し、瞬く間に遠くまで逃げ出した。そして、
「ウロキオス様に栄光アれ! フヒィーーーーー!!」
魔物の身体は徐々に輝きを増していき、
「うわあああーー!! シューラァァァアア!!!」
「きれい」
とびきり派手な爆発音が鳴り響いた。
~~~~~
「なる程なる程…食欲をかいて要らぬ所を突つき、みすみす敵の前で無抵抗を曝し、挙げ句仲間割れで注意を欠いたところに自爆を受け、よりにもよって勇者が見捨てられ他の者どもが生き残ったと…そういうわけか」
宙を見つめる魔王。
「何ということだ ここまで程度の低い連中に玉座の間への侵入を許そうとは。我も落ちたものよ」
押し黙る勇者一行。ややあって口を開いたのは、今までで一番の憤りを漂わせたハンナだった。
「だってさあ! アタシにはどうしようもなかったんだもん! ハルトは勝手に動くし! シューラーは口答えばっかだし、ジャタグは何もしないし! ゴダンは武器持ってあの鳥ぶっ飛ばせばよかったのに普通逃げる!?」
「俺のせいだと言うのか! それを言うなら自分だけでも逃げられたものをお前たちを抱えてきたんだぞ! 感謝こそされても責められる筋合いはない!」
「ハルト…ハルトぉ…うぇぇぇ、何で…何でこんな…」
「被害者ヅラして泣くな!! アンタはぽっと出のくせにアタシからハルトぶん取って! 何もかもうまく行ってんのに何が不満なの!? アンタが一番許せないんだけど!」
「落ち着けハンナ! 取るも何も、そもそもお前とハルトは付き合ってない! 何度告っても普通に振られていただろう!」
「アイツが最期に叫んだのもアンタの名前だったぁ!! アタシ幼馴染なのに! アンタよりずっと前から好きだったのに! 何が悲しくてこんな、もぉぉぉぉおお!!」
「ッ、僕が、僕が盗ったみたいな言い方しないでよ! 第一、告白してきたのはハルトの方だ!」
「それが余計にムカつくってのよ! つーかアンタだって優しくされる度にメスみたいな顔してたじゃんマッジで目障りだったわぁ~!」
「そういうさぁ! 悪意でしか人を見れないところが! ハルトに受け入れられなかった原因なんじゃないのかなぁ!」
「はぁ~~~!?」
「やめろお前ら! 流石に見てられん!」
争いの止まらない勇者一行を見て、ウロキオスはもはや罵倒する気にもなれなかった。
「過去最も骨のない奴らだ。醜い部分はもう十分見たことだし、あっさり片付けてやるとするか…痛っ何だ」
首筋に違和感を感じるウロキオス。手を当てると、生暖かいものが触れる。
「これは…血か? 我の血か!? 何が起こった! はっ!?」
うろたえる彼の足元には、怪しい紫の液をたたえる針を揺らす、サソリの姿が。
「貴様まさか…」
「首からなら一分あれば脳に毒がいくよ」
空いた口が塞がらない魔王。
「馬鹿な…世界のすべてを手に入れかけた我が…歴史上のどの悪魔よりも凶悪な力を…持つ…このウロキオスが…こんな…こんなみっともないにも程がある言い争いに…気を取ら…とろらむ」
ウロキオスは泡を吹いて倒れた。
「うぇい」
「さ、さすがだジャタグ」
「嘘でしょ?」
「ていうか、毒効くんだ…」
一行は、悲願の打倒を果たした状況ではあるものの、戸惑いと消化不良感でいまいち喜ぶ気になれなかった。
「まあともかく、これで世界に平和が訪れたわけだ! さあ故郷に帰ろうじゃないか! ハルトの事はまあ…激闘の末に名誉の戦死を遂げたということにする他あるまい」
「そ、そうだね。そういうことでいいよね?」
「え? う、うん」
「ちがうね」
三人の視線がジャタグに向く。
「ジャタグよ、そうは言ってもだな…」
「なんも言ってないよ」
「え? じゃあ今喋ったのだれ?」
「なんか…上から聞こえなかった?」
戸惑うシューラーの言葉に、全員がいっせいに上を見上げた。すると天井に、
「は、ハルト!?」
「ちがうネ ちがうネ ちがうネネネネネネ」
「待て! 様子がおかしい!」
天井に張りついていたそれは、頭を数回震わせるとそのまま落下し、グシャリと音を立てて着地すると、糸で吊られているかのような奇妙な動きで一行に向き直った。
「私はソイビー 私ノ本体は鳥の体でハナく発酵を促進する細菌の群れなノダ 爆死シた人間の身体にトリつき蘇っタゾ」
話すうちに全身をぶるぶると震わせ、熱と光を発し始めるソイビー。
「やばいこいつまた自爆するぞ!」
「今度は今度ハ逃ガサんぞ こやつノ身体ハ魔力ノ量が段違イ 部屋ゴト城ゴと貴様ラ全員巻き込むなンテ訳ナいわい はードッコいショッタらどっコイしょ!!」
「や、やめろ早まるな! 魔王は死んだんだ、今から争ってもなにも始まらん!」
「もう嫌あ! アタシの人生なんにもうまくいかない! 最悪! 最悪! 本っ当に邪魔ばっか入る!!!」
「ハルトが生き返ったハルトが生き返ったハルトがハルトがハルトが僕のハルトが」
「おいやめろ怖い! 全員一旦落ち着け! やめろ! お願いだから! やめろおおおおおおおおお
百年後…
「ジャタグとうちゃん ここガレキだらけだね まえはなにがあったの?」
「ここはお城があったのさ」
「おしろ? おしろはどうしてなくなったの?」
「それはそれはすごい爆発があったのさ それも父ちゃんの目の前でね」
「めのまえで? とうちゃんはだいじょぶだったの?」
「父ちゃんにはな、属性攻撃が効かなんだ そういう体質だからな」
「ふーん」
小さなサソリは、小さなハサミで石ころをもてあそびながら、空を見上げた。
「とうちゃん、こうかいしてる?」
「何で?」
「だってさあ まおうとたたかったなかまはみんなやられちゃったんでしょ」
そう言われ、ジャタグは少しだけぼうっとしてからこう答えた。
「父ちゃんな 所詮はモンスターだから人間の価値観とかわからんのな ノリで仲間でいたけど、魔王が気に入らなかっただけで別に勇者たちに思い入れとかはなかったのな」
「ふーん かなしいね」
「悲しいと思うか?」
「うん」
ジャタグは、息子の頭を大事そうに撫でた。
「お前は人間らしい心があるな それだとあの人らみたいに醜く揉めるかもしれんから、気を付けろよ」
「こころがあっちゃいけないの?」
「いいけどな 魔物で心を持ってやってくのはなかなか厳しいぞ でも父ちゃんはお前を見捨てたりはしないから安心するんだぞ」
「もしも おれがにんげんだったらみすててる?」
「さあな! ははは 意味のないもしもだ お前は間違えなく俺の子供だからな」
「そっか!」
魔王の軍勢が滅びさってからというもの、人間は人間同士の争いで普通に絶滅した。恐ろしいスピードでいなくなったので、モンスター達はドン引きする他なかった。
世界には、すべてが始まって以来の平和な時間が、いつまでも流れ続けていた。
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