私の決断

前回、自宅療養で絵をもう一回描こうと決断したりんは心療内科の日お父さんにドライブに誘われた。ドライブは田舎道を抜けて海沿いの街へとやってきた。そこで出会った吉村さんと愛華さんはとてもいい人そうで私たちのところへお父さんと一緒に来ないかと言われる。でも、そのためには学校を転校しないといけない。そんなことを言われたりんは考え込んだまま病院へ。病院の斎藤先生も転校した方がいいと言っていた。この時点で転校した方がいいと悟ったりんだったが果たして彼女の下す決断は...?


病院を出た後、私はずっとこの後のことについて考えた。

とりあえず学校は転校するとして問題は転校先だ。

こんな生徒を受け取ってくれるところなんてあるんだろうか...?

でも、どこか受け取ってもらわないと中卒で就職先はない。

しかも、私は大学や専門学校へは行きたいしどうすればいいのかな...

そこで、家に帰って調べてみることにした。

私の中で通信制学校のイメージはあまり環境が良くなくどこか落ち着かない生徒が行くようなイメージを持っていた。

そんなイメージは私の中で勝手に形成されてきたものだけど

お母さんもテレビで通信制高校については酷評してたし...

でも、変えるって決めたんだから新しい場所を探さないと...

そう思い、パソコンを開いて調べる。

幸いにも立地がよく子供が多い街なのですぐにたくさんの学校が見つかった。

そこから自分の望む条件を当てはめてみた。

生徒の雰囲気、大学進学、その他講師の質...

色んなものを当てはめてみた。

欲張りかもしれないけど当てはめてみると候補が2校ぐらいになった。

その2校のうち「鈴の宮高校」は大学進学に強く大丈夫そうな感じがした。

もう一個の「柏木の森高校」は専門学校に強く個性を存分に出せるところだ。

どっちでもいいな...

でも、どっちかでしょう...

とりあえず、どっちも体験説明会が2週間後にあるからどっちも行ってみるか。


「お父さん、申し込みは保護者の確認が必要だから電話お願いできる?」

私はリビングでネットを見ているお父さんに声をかけた。

「あぁ、もちろん!番号はいくつなんだい?」

そう言ってきたので私はパソコンから抜き取った番号を教えた。

「もしもし、体験説明会を希望するものなのですが...」

と、2校に電話をかけてくれた。

でも、柏木の森高校の電話をかけた時お父さんは鈴の宮高校の時と違った感じがした。

鈴の宮高校の時はとても笑顔で気安い感じの対応だったと好評だったけど柏木の森高校はずっと硬い表情だった。

どうやら、思ってたよりも対応がそんなよろしくない感じで後ろの生徒さんの声であまり聞こえなかったみたい。

でも、一旦行ってみることにした。

2週間後まではまだまだ先だ。

その日まで私は1人で絵の勉強をすることにした。

毎日、毎日描いた。

描きまくった。

そうして10枚くらい上げ続けたら見てくれる人が増えてきた。

みんなリプに感想まではくれないけどいいねとかで私にいい絵だね!っていうことを伝えてくれた。

そんなこんなでいるとあっという間に2週間は経った。


14日目

まずは、鈴の宮高校からで思ってたよりも近いところにあった。

鈴の宮高校はすぐに見つかり入口で担当の人がすでに立っていた。

「はじめまして、私、鈴の宮高校の代表を務めさせていただいている大村と申します。本日はよろしくお願いします。どうぞ、こちらの席へ」

開口一番に案内された。

この対応は100点と言ってもいいくらいのやつだった。

まるで、ホテルのロビーさんみたいな感じがした。

「本日はよろしくお願いします。りんさん、今日は来てくれてありがとうございます早速なのですがりんさんはなぜ通信制の学校へ転校を考えているのですか?」

「大学進学とかは考えていますか?」

「好きなこととかはありますか?」

などと、私に聞いてきた。

これに対してはちゃんと私は答えた。

そうしたら大村先生はすぐに喜んでくれた。

そして、ちゃんとした人なんだなーって思えた。

横を見るとお父さんも安心した表情を浮かべていた。

はっきりとした学部とかについては全く決めていなかった。

進学をしたいとは明確にしていたけどそれでも学部とかは全く決めていなかった。

こうして話してたらあっという間に45分くらい経ってた。

帰る時も頭を下げてお見送りしていて丁寧の一言を濃縮したかのようだった。

帰ってる時もお父さんはずっと

「あの人すごくいい人だよな。教室とかも結構良さそうだし」

「うん、そうだね!」

そう結構良い返事で返した。

確かに結構思ってたよりもしっかりしていた。

もうここでいいやっても思ったけどもう一個の柏木の森高校も見ておきたい。

柏木の森高校次第だな

でも、考えてると眠い...

もう今日は寝よう...


15日目

柏木の森高校は午後から説明を受けるので午前中はゆっくりとできた。

お父さんは午前中だけ仕事をしてお昼頃には帰ってくる。

午前中今日は身体が重い。

起きてすでに1時間ぐらい経つけど重すぎる。

まるで、初期の症状みたいな感じだった。

昨日動きすぎたのかな...

とりあえず、お昼までには治したい。

そう思い、私は布団に入る。

暖かい...

呆然と過ごしているとおとうさんが帰ってきた。

帰ってきたので起き上がった。

起き上がったらふらつくけど大丈夫になった。

「りん、今日は大丈夫か?」

お父さんが私のところへ寄り添う。

「うん、大丈夫。4時からだったよね...?」

「そうだよ、それまでゆっくりしていな」

そう、声をかけてくれた。

行く直前には元気になっていた。

私は自分の体調に気を付けて行った。

そこから柏木の森高校まではあっという間だった。

着いてパッと見た印象はどこか落ち着いたところにあるなと思った。

中に入るとそこは外観から予想がつかない物があった。

生徒は自由に歩き回り勉強をしている人はいない。

この空間にいる生徒はみんなパソコンで何か文字を打っていた。

プログラミングかな...

そう思いながら私たちは案内された。

案内されたところは客室みたいなところで鈴の宮高校はガラス1枚だったがここは大きなドアで区切られていた。

案内されると濃い化粧のおばさんが出てきた。

年相応の感じではないファッションだった。

「初めまして、私ここの入学担当を務めさせていただいています西脇香子と言います。本日はよろしくお願いします」

なんだか怖そうな先生やな...

「早速なのですが、本校の説明についてさせていただきます...」

と、20分くらい永遠に話された。

正直に言って退屈だった。

ずっと、同じテンションで話してて少しもこちらを見ずにずっと資料を見てる。

これじゃあ、ダメだよ。

覇気なんてあるわけもなくなんだか

「どうぞ、入学してくださいねー」

と、やる気のない感じが丸見えだった。

その後もそのまま体験学習をやったんだけど講師の質も申し訳ない程度だった。

ずっと、見てるだけだし少々目がストーカーみたいな雰囲気が読み取れた。

結局2時間ぐらい居たけど出て車に乗ってすぐにお父さんに

「私、ここの学校無理かもしれない...」

と、はっきりと言ってしまった。

そうしてたらお父さんも

「うん、ここはちょっとやめといたほうがいいかも...先生の覇気感じなかったしな...鈴の宮高校の方がめちゃくちゃいい感じだったしそこでいいかな...?」

そう、私に問いかけてきた。

「うん、そこでいいよ。」

そう、あっさりと答えた。

もう、疲れたしそこでいいよ。

すごく元気に溢れていた先生だし

「それじゃあ、ちょっと電話しちゃうわ。」

そう言い、お父さんは車外に出て電話した。

柏木の森高校の駐車場で電話するってやっば笑

でも、誰も聞こえてないしいいか...

数分も経たないうちに車内に戻ってきた。

「来週に、鈴の宮高校にもう一回来てほしいって。あと、体験授業やるから筆記用具だけ持ってきてほしいって。」

そう、私に言ってきた。

続けて、

「今日はもう疲れたからゆっくり家で休みな...」

そう言い、車を走らせた。

帰りの道中、色んなことを考えたかったけど考えることはできなかった。

ただ、何もない景色を眺めることしかできなかった。

家に帰り真っ先に布団に飛び込む。

心地いい...

こんな空間にずっと居たい...

気づいたらそのまま寝ちゃって次に起きた時にはもう日は沈んでいた。

リビングに行くとお父さんも寝ちゃってた。

横には、スナックとビールの缶があった。

冬だったとしても風邪ひくよ...

そう思い、私はかけ布団を持ってきて後ろからかぶせた。

かぶせた時お父さんが起きて

「あぁ、りんか。起きたのか」

そう言い、起き上がってきた。

お父さんこそ寝ちゃってたのに...


16日目

今日は結局何もできなかった。

1日中寝ちゃってるような感じだった。

お父さんが仕事から帰ると

「りん、明日英成高校の転入書類を取りに行くけど一緒に行く?」

と、聞いてきた。

どうやら転入は少し時間がかかるらしく新年度から転入するともう取りに行かないといけないみたい

私は少し迷ったけど迷いを捨てた。

鈴の宮高校に決めたんだし別に大丈夫だよね...

「うん、一緒に行って先生たちにお礼を言いたい」

「分かった。明日の15時から行くからそれまでに考えておいてくれ」

何を言おう...

普通はありがとうございますとかだけどそれでいいんだよね...

診断を受けてから全部に疑問を持つようになっちゃったから分かんないや。

調べよ...

検索をする。

先生 最後のお礼

と、検索すると無限のように出てきた。

でも、そこには卒業式とか定年退職、寿退社などのそっち系のものしか出てこなかった。

そこでもう少し検索ワードを変える。

先生 お礼 転校

生徒 転校 最後の挨拶

様々なワードを並べる。

でも、どれも似たようなものしかでてこなかった。

検索の通りだと普通にありがとうと言えばいいみたい

もう、それでいいや...

お世話になりました。ありがとうございました。

シンプルだしそれでいいや

そう思いながら私は考えるのはやめた。


17日目

私は、英成高校にいた。

英成高校の応接間にいた。

目の前にはあの学年主任と担任の先生がいた。

「えー、なんで転校するのか言ってください?」

学年主任はこう述べる。

続けて、

「私は三島さんと一緒に卒業がしたいです。残るという考えはありますか?」

そんなのないに決まってるじゃん...

あぁ、まじで吐きそう...

話は1時間前にさかのぼる。


私は家でお父さんの帰りを待っていた。

久しぶりに制服を着た。

久しぶりに着るとこんな落ち着かないんだ...

スカートの下が寒い。

タイツを履いてるけど通気口みたいに寒い。

それにネクタイが結構きつい。

英成高校は女子はネクタイかリボンを選べるけど私は両方を持っている。

今日はネクタイの気分なので試しにつけてみた。

スカートにネクタイっておかしくないよね...

今までも通ってた時は普通につけてたし...

そんなこんなで迷っているとお父さんが帰ってきた。

「りん、すぐに行くぞ」

そう、短く言い洗面所に消えていった。

私はお父さんの車に揺らされながら英成高校へ向かった。

英成高校までの道は車と自転車は一緒なのですごくなぜか懐かしく感じた。

歩いてる小学生、見慣れた店、いつか行こうと思って結局行かなかったお店など

色んなものが映った。

英成高校へは長い坂道を下る必要があった。

この坂とももう下ることはないのか...

そう思いながら進んでいった。

英成高校に到着するとロビーに担任の伊原木先生がいた。

「あ、お世話になっています。こちらりんさんの学校の所持品とかをまとめておきましたので帰りの時に...こちらへどうぞ」

そう言うと私たちは伊原木先生に案内されて応接間に入った。

「もう少しで学年主任がおいでになりますのでお待ちください。」

そう言うと、すぐにドアを閉めて教室の方の道へ行ってしまった。

廊下の走る音がすごい...

「さっさと終わらせるぞ。これ長そうだし」

お父さんは私にこっそり言ってきた。

あぁ、確かにめんどくさそう

数分も経たないうちに伊原木先生と学年主任がこちらにやってきた。

「すいません、お世話になっています。」

そう言うと、すぐに席に着いた。

「えー、三島さんの転校の件なのですが私から最初に...」

と、伊原木先生が話した。

「転校の書類などはすぐに用意ができますしおそらく1週間のうちにできると思います。それからですね...」

そう、転校に関することについて話した。

それでいいのよ...

余計なことは言わないでくれ...

ここで一本やられたらもう無理やぞ...

「...私からは以上です。ここからは学年主任に話を移させていただきます」

頼むぞ...さっさと終わってくれ...

「えー、まずなんで転校するのか自分の口で言ってください」

え、

え、あー

まぁ、それならいいか

「はい、昨年から体調がすぐれなくてこれ以上学校の勉強について行くのが難しい状況でして...」

と、とりあえず現状から無理だということ伝えた。

頼むよ...これ以上何も言わないでくれ...

しかし、その思いはすぐに豆腐のように切れた。

「私は三島さんと一緒に卒業したいんです。どうか残ってください...」

そう私に頭を下げてきた。

え、いや。今の説明で分かるでしょう。

なんで、こんな残ってほしいの?

え、なんて回答すりゃあいいんだ...

これ、なんて答えればいいんだ...

まず、残るというのはもうないからはっきりと言うか

「えー、私は...」

あれ?言葉が出てこない。

頭では思い浮かんでいるのに言葉が出てこない...

やばいかも...

私は少し下を向いた。

その時だった。横で

「いや、先生。こんな身体弱っているのに学校なんて続けられるわけないでしょう。残るとか本人に残酷だと思うので親として言わせていただきますけど彼女は転校を望んでいると思います。これ以上迫らないでください。」

そう、はっきりとお父さんが言った。

はっきり言ってかっこよかった。

さすがにもう無理だと思ったのか学年主任がそれ以上言うことはなかった。

「では、転校の書類はこちらにありますのでお渡しいたします。私たちも成績表とか書くものがあるので1週間後にまた、おいでになりますがよろしいですか?」

「はい、構いません。」

そう、言って戦いは終わった。

最後の最後で助けられた。

最後に伊原木先生にありがとうございますと言い私は学校を去った。

帰りの車中で私はお父さんにお礼を言った。

「お父さん、最後ありがとね。」

「あぁ、早く終わらせたかったから言っただけ」

そう言うと、それ以上は何も言わなかった。

私は家に帰るとまた、絵に戻った。


まとまった時間があれば絵を描いた。

もちろん自分の体調とかもあったができるだけ描けるようにした。

絵を描くことで少しずつ自分に自信が持てるようになった。

それと同時に自分の価値観を生み出すことができた。

時間なんてあっという間だった。

1時間、2時間なんてすぐに思えた。

自分の世界がどんどんカラフルになっていった。

真っ白と真っ黒しかないつまんない世界に私は色を入れた。

最初は1つだけ追加した。

次は2色目を追加した。

でも、どんどん鮮やかな色が放たれる。

少しずつ色が足されて描くことに楽しみを感じていた。

来週の鈴の宮高校の体験授業楽しみだな...

講師の質はかなりよさそうだけど性格的にいい人だといいな...

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