レベルと新しい発見

中学を卒業してまさかの第二志望の英成高校に進学することになった三島りん

通称「みゆしまさん」

しかし、ここで大きく運命が変わるということはまだ知らない...


「あぁ、緊張する...なんで、この学校なんだよ...」

入学式直前の三島りんはとても緊張した趣で新しい教室の新しい椅子に座っていた。

しかし、いまだ第一志望のところに落ちて滑り止めのところへ行った自分がなんだか納得がいかず、入学までの数日間自分の中で葛藤をしていた。

ふと、周りを見渡すとなんだかみんな楽しそうでどこか自分だけが仲間はずれな気もした。

でも、私と同じような人もちらほらいたか助かった。

入学式

みんな頭よさそうで天才そうだな...

代表で壇上に上がる生徒のせいか余計そう感じてしまった。

実は特別頭いいとかそうゆうところじゃないのに...

むしろ、世間的には自称進学校の部類にかけられていているところだ。

それを象徴するように入学式の翌日に開かれた全校集会ではいきなり学年主任が

「みなさん、高校生遊ぶのは大事です。しかし、それと同時にあなたたちには国立大学を目指してもらいます。みなさん受験を乗り越えてきたばかり

私には彼の言っていることが理解できなかった。

確かに国公立に行ったら経済的にもいいし地元就職に強い。

でも、私は最近うるさく感じるお母さんから離れたい。

だから、私は学年主任に歯向かうとたった今決めた。


めっちゃ長く感じた集会が終わり教室へ戻り新しく担任となった伊原木つむぎ先生が入ってきた。

伊原木先生は背が高くどこかしっかりとしている先生ですごく明るい先生だ。

「はいじゃあ、みなさん自己紹介を一人ずつだと恥ずかしい子もいるので隣近所の子とやってみましょう!」

やることが普通よりもハードルが低いから助かる。

今までの生活と比べて一気にハードルが下がった気がする。

こんな担任の先生は初めてだ。

先生の提案を聞いて体育系の男子たちがなぜかすごく残念がってる。

なんで残念がるんだよ。一発芸でもしたいのか笑

私にはちょっと理解ができなかった。


「ねね、どこから来たの?」

隣の子がいきなり声をかけてきた。

化粧はしていなくてもすっげぇ可愛い子だなっというのは目に見えた。

ほっぺがぷるんぷるんしてて食べたら本当においしそうな感じがしていた。

「え、あ...南流川の方から来た...」

やっば...キャラ変えるんじゃなかったの?こんなんじゃダメだよ。

「何か好きなものとかあったりするの?」

「えーと、ドラマだったりアニメ見たりするのが好きかな...」

「へぇー!どんなの見るの?恋愛ものとか!?」

食いつく、食いつく。まるで、餌をあげる猫のように食いついてきた。

「んーとね、こうゆう系が好きかな?」

そう言い、私は手元にあったクリアファイルを取り出した。

「わぁ、このキャラ可愛い!!」

「でしょでしょ!」

よし、ここで...

「あの、もしよろしければ友達にならない?このクラスで同じ中学の人いないからさ」

さて、どう返ってくるか...

ここで拒否されたらこの後めっちゃ苦しいぞ...

「うん、もちろんだよ!よろしくね!」

とりあえずセーフかな。このままお友達作戦いくぞ。

「そういりゃあ名前何だっけ?」

「三島りんといいます。よろしくね~」

「りんちゃんって呼んでいい?」

「あ、りんちゃんってあんま呼び慣れてないからちょっと恥ずかしい..」

「可愛い...あ、じゃああだ名とかあったりする?」

あだ名か...あだ名ね...

「一応中学の時はみゆしまさんって呼ばれてたよ」

「へぇー、なんか呼びやすそう!私は村岡朱莉 あかりって呼んでもらえれば大丈夫だから!!これからよろしくね!」

すごく明るい子だ。飲み込まれるくらい元気な子だな...

その後、クラス委員会決めや係決め、午後にはクラスの目標などこれと言って適当に座っていればいい作業ばかりだったのでかなり楽だった。


チャイムが鳴り、学校が終わる。

帰りの用意をしていると持って帰る教科書の量に驚かせる。

まじで少ない。

タブレッドとかもあるからそんな変わんないのかなーって思ってたけどそんなことはなかった。

明らかに中学の方が重く感じた。

高校は置き勉ができて便利だなー

中学は全部持って帰れって言われてクソうるさかったからなー

そんなことを考えていると村岡さんが

「そういれば三島さんって部活どうするの?」

って聞いてきた。

「私は、まだ何も決めてないな...」

「あーじゃあさ!一緒に周らない?」

この提案を断るわけがない。

ここで断っちゃえばこの先めんどくさいことになるし

「えー、いいよ!まわろまわろ」

私は即答で返した。

こんなに話せるのいつ以来何だろう...

たった1か月くらい話さないだけでこんなにうれしいんだ。

「あっかり!!今日さ、カラオケこれから行くけど行く?」

邪魔が入った。あーも、めんどくさい

さすがにこれは断るよな。

「ごめーん、今日だけちょっと行かないといけないからさ。中学の同級生だからね。そうゆう付き合いもあるからさ、明日は絶対一緒に行くからね!ごめん!」

そう言って朱莉は2、3人くらいの友達と一緒に昇降口の方へ走って行ってしまった。

まじかよ...おい。

早速裏切られた気分が半端ない。

もういいや...他に誘う友達がいなかった私は1人で部活体験の方へ向かった。

とりあえず気になるってるのは美術部だけだし逆に1人の方がじっくりと観察できるしいいじゃん。ちょうどいいじゃん。

彼女がいなくなったことで少し気が楽になった。

変に気を使うこともないし

そう思い、私は美術室の方の階段へ向かった。


美術室の階段の踊り場のところはたくさんの絵が飾られており、どれも上手くて下には有名美大の名前が書いてあった。

すごいな...

なんだか一気に怖くなってきた。

こんな下手な私でいいんだろう...

レベルに置いて行かれそう...

そう感じる時もあった。

目の前まで来た。

校舎が新しいおかげなのかすごくきれいなところだった。

美術室のドアの前で立つ。

ここに入っていいんだろうか...

それとも...

何度か考えた。考えた。

頭の中が混乱するほどに...

「あれ?新入生?」

横から声かけられた。

ここは元気に返事しないと...

「あ、はい!見学に来ました!」

私が出せる精一杯の明るさでふるまった。

「中は入ってーおいでおいで!」

先輩っぽい人は上機嫌でどこか抜けてるような人だった。

それと同時になんだか母性を感じる人でもあった。

中に入ると大きなキャンパスや教科書に載ってる石膏、さらにデスクトップのパソコンまであって生徒がそれぞれ操作していた。

すっげぇ...

私は、ここで輝くんだ!

すると、私と同級生の男の子がスケッチブックで何か描いていた。

上履きから学年が分かるからすぐ分かった。

学年は一緒というのは分かったけどそれ以外は彼に聞かないと分からない。

髪が普通の男の子よりも長くてもう少しでワイシャツのところまでついてしまうくらいだ。

「ねね、何描いてるの?」

私は彼にいい子を装って聞いた。

「あぁ、ドランゴルーホのキャラだよ。君もここの部活に入るの?」

やばい、まだ来て5分くらいなのに入るなんて決まってるわけないじゃん。

そんな軽いノリで聞いてるか..

「あぁ...まだ完全には決まってない」

濁した。これが正解だろう。

「君も一緒に入ってやろうよ!」

強い勧誘だな...本当に1年生なの?

もしかしてだけど留年してる人?

「あーあ、大祐!そう言っちゃだめだよ。怖がってるでしょ?ごめんねー、怖かったね」

さっきの少し抜けてる先輩がやってきた。

先輩は慌てた感じだった。

「この子、私の弟の大祐で何組だっけ?」

「3組だよ...」

ボソッと言った。さっきまですごく威勢の強いと思ってたのに笑

「大祐はめっちゃ熱い子だから少々めんどくさいんだよね...」

「姉ちゃん、めんどくさいとは何だよ!?」

すっげぇ怒ってる笑 こうやって見るときょうだいなんだなって感じる絵だった。

「で、私が姉の馳真弓美と申します。よろしくね~」

なんだか本当にお姉ちゃんっていう感じの名前やな...

長女というかしっかりしてる子やな...

「君、そういりゃーまだ名前聞いていなかったよね?なんて言うのー?」

あ、やっべ。名乗らないと

「あ、はい!私、4組の三島りんといいます!初めまして!」

「りんちゃんねー初めまして!かわいらしい名前やねー」

なんか、いきなりちゃん付けされた。

「あの...苗字で呼んでもらえるとありがたいです。ちゃん付けは違和感しかないので...」

「えー、別にいいじゃん!そしたらあだ名考えてあげるわ?」

全く答えになっていない。

「えーと、そーだなーみゆしまさんなんてどお?」

この人推理力鬼なのか。

それとも何か能力を持っているのかな?

そんなわけないと思うけど

なんで、唯一のあだ名言い当てるんだよ。

すごすぎるだろ。

いいや、もうそれで

「いいですよ。みゆしまさんで...」

みゆしまさんも嫌に近いけどまぁ、日葵にも言われていたしいいか...

「みゆしまさんって何か絵とか描いてたの?」

さっきの見せられたら描いてますって言いづらいだろ。

もう、ここは初心者でいっか。

「いえ、あまり描いてこなくて元々アニメが好きなので描いてみようかなって...」

「へぇー、じゃあデジタル系かな?」

え、デジタルできるの!?

デジタルってものすごくお金がかかるから縁のないと思っていたのに...

「はーい、美果ちゃんここどいてー新入りの子が通るよー」

「えー、今レイヤー整理してたのにーちょっと待ってて保存するから」

この子なんだか

「この子は3年生の杉本美果ちゃんだよー美果あいさつ!」

「めんどくさいな...3年の杉本です。よろしくね」

なんだか適当な人だな...

めんどくさいって聞こえているし...

でも、なんか絵うまそうな顔立ちしてる...

どんな顔立ちだよ笑

「ほら!みゆしまさんも自己紹介!」

あ、やばい。

「1年の三島です。よろしくお願いします!」

「この子デジタルしたそうだったからやらせてあげて?」

「っ、大丈夫ですよ!私は後で...」

「そんなこと言わないでーほら、席空いたし!」

そう言って、半無理やり的に私が座った。

こんな先輩で大丈夫なのかな...?

とりあえず、ペン持って

私の目の前には大きな液タブとペンが置いてあった。

高校生ってすげぇ...

こんな機械を操っているんだ...

それだけで感動してきた。

「みゆしまさん、私が教えてあげるからね!」

「いや、真弓美。私が教えるから大丈夫」

なんだこれ...どっちも醜いな...

「真弓美は新入生の勧誘があるでしょ?」

「あー、そうだねーじゃあ、昇降口行ってくるね!みゆしまさん...この子ちょっと癖あるけど無視して大丈夫だからね!」

そう言って真弓美先輩はあっという間に消えて昇降口の方へ行ってしまった。

「真弓美の奴ったら...単純なんだから。そういえばさ、」

「あ、はいっ!」

急な質問っぽく聞こえたからついいい返事をしてしまった。

「真弓美の知り合いだったりする?」

「あ、いえ...初対面です...」

「ふーん、そうなんだ。で、デジタルの使い方を教えればいい?えーと、ここでレイヤーを動かしてペンはここで好きに...」

指さして教えてもらえたけど途中から訳の分からなかった。

そんなに一気に説明されても覚えられないっよ...

「っていう感じだからまぁ、慣れで覚えていくしなんとかなるよ。とりあえず使ってみて?私、ちょっとトイレ行ってくるからさ」

結局一人やんけ...まぁ、いいや。この程度私には3日ぐらいでマスターできるだろう。

あれ...?これってどうやって使うんだっけ?

レイヤーはここにあってでえーと...

みうはレイヤーなどの言葉の名前はすぐ覚えられるけど場所までは記憶できないまずまずやばい人なのである。

あたふたしていると、前から知らない人がやってきた。

「先輩、これってあなた誰!?」

「あ、新入生です...」

「さっき、真弓美に連れまわされてた人?」

「あー、はい。」

「なんか遠目から見るとあなた先輩っぽく見える笑」

え、まじで?嘘ついてない?

そんなこと誰も言われたこともないけどもちろんないからすごく違和感しかない。

「あー、筆はここで使うのよ。で、こーやって」

この先輩は結構優しく教えてくれるな...そして、靴の色からして2年生かな...

「あの、名前なんて言うのですか...?」

「私?私は河野佳純って言うの。2年生だよ。よろしくねー」

河野っていうんだ。なんか、頭よさそう...

「そうゆう君は?」

「あ、三島りんと言います。」

「可愛い名前ね!私もみゆしまさんって呼んでいい?」

この子もかよ...

「いいですよ。」

もう、みゆしまさんって定着してもいいや。

りんちゃんじゃなければいいし

「こんにちはー」

前のドアから初老のおばさんが入ってきた。

「あ、大井川先生!新入生ゲットしました!」

河野先輩が突然言い出した。

「え、私はまだ決めたわけじゃ...」

「えー、でもなんとなくここに決まりそうな顔してるもん」

あぁ、そうだよ。ここにほぼ決まりかけていますよ。

でも、もうちょっと観察したい。

「新入生?最初から使えるの?」

「私が見た感じだとなんか慣れたらすぐ使えちゃいそうな感じがするので」

「ふーん、」

顧問の先生優しそうだな...

「初めまして!!私、三島りんといいます!」

「三島さん、初めまして。顧問の大井川めぐみです。河野さん、後は任せられるかしら?」

「もちろんです!」

そう言って、先生はどこかへと行ってしまった。

入れ替わるかのように同じ1年生が入ってきた。

「あ、山本さん!新しいお友達だよ!」

ふとしっかりと見るといかにも文学女子と感じるくらいのオーラがあった。

「初めまして、山本玲です。よろしくお願いします」

いかにもお嬢様タイプの人だった。

「絵を見せていただけませんか?」

そう言って、私が途中まで描いてた液タブを覗いてきた。

そこにはまだ描きかけのキャラクターがあった。

「これってBeat!のキャラ?合ってる?」

「そうです...」

やばい、めっちゃ下手って言ってくるのかな...

「彼女、初心者なんですよ」

河野先輩が真弓美先輩の会話を盗み聞ぎしていたのかバレてた...

あーあ、もういいや。

「ふーん、上手じゃん」

予想外の答えが来た。え?

「初心者でここまで描けるんだったらいい方だよ。正しい方向で練習すればもっともっと良くなると思うよ。」

すごく前向きなコメントだった。お世辞にも聞こえたけど素直に褒められたんだから嬉しくなった。

「うん、ありがとね!山本さんも一緒にがんばろうね!」

最大限の偽の仮面で笑顔を振るまった。


学校の帰り道、私は1人でいつも帰ってた。

友達と帰りたかったけど方向が逆だったりしたせいで1人しか残らなかった。

変えるどおちゅうはいつも考え事をしてしまう。

なんだか今日は落ち着かなかったな...

すごく騒がしいというか個性的な人たちだったな...

私も上手くいくのかな...

「ただいまー」

「りん!部活何部にするの?」

お母さんがものすごい勢いでキッチンから走ってきた。

足音がドタバタうるさいな...

「まだ、決めてないよ」

「あらそう。もちろん学習系の部活に入るんだよね?英語部とか」

何言ってるのこの人

部活まで制限するの...?

ちょっと意味が分からなかった。

「学習系じゃなくて美術部とかそっちに入ろうかなって迷ってるところ」

私ははっきり答えた。

別にそっちに入ろうがいいじゃんって思ったからである。

すると、お母さんは持っていた食器を置いてなぜか怒り出した。

「あんたにそんな余裕なんてないのよ!!」

はい?理解が追い付かなかった。

「りん、リビングのところまで来なさい!」

訳が分からなかった。とりあえず荷物を部屋に置いてリビングの方へ向かう。

リビングの前のドアからちょっと覗くとそこにはお母さんが鬼の形相で座っていた。

私、何かした?

ただ、美術部を考えてるだけって言っただけだよね...

ドアを開けて中に入る。異様な空気だ。

「お母さん、私何かした?」

とりあえず問う。思いつかなかったから

「はぁ...それすらも分かってもらえない子供になってしまったのか?ちょっとは自分で考えた?」

考えましたよ。もちろん

「うん、もちろん」

「それでも、分からなかったのか?」

そうだって言ってるじゃん

「そうだよ。お母さんの怒ってる意味が分からない」

「あんた、そんなことも分かんなったの?別にお母さんは怒っていませんよ」

いや、見るからにして怒ってるやん。

だって、この形相を100人に見せたら99人は多分怒ってるって答える自信のあるくらいだぜ。

「私は、あなたのことを思って言っているのよ。あなたが少しでも別な方へ走らないようにしてあげてるんだよ」

理解すら追い付かない文だ。

「お母さんは美術ということで道を外れるって考えるの?」

「だって、美術系は食っていけないじゃん。大体、美術部の人は美大へ行くんでしょ。しかも、仮に行かなくても絵は描くでしょ?その時間もったいなくね?その時間を英会話だったり古典に使ったら友好的だよね?」

なにこれ?私には理解が追い付かなかった。50年前の感覚で生きているの?って思えるくらいだった。

「別に部活動としてリフレッシュタイムとしていればいいじゃん?」

「とにかく!あなたは天奉レベルのところへ行って安泰の道を選ぶのよ。そうしないとお母さん許さないよ!!」

偏見やべぇ...

「とにかく私は美術部に入って自分の最大限の実力の大学に入るからそれで許して。あと、お母さん反対するけど入部届お父さんに書いてもらうから」

本当は、一人で提出したいんだけど親のサインがないと提出にならないからここはお父さんで我慢我慢...

そう言ってリビングを後にしようとした。

ドアを開けて部屋を出ようとしたときだった。

お母さんが急に泣き出した。

なんなの?さっきまでの怒りは

どこ行ったの?

もう、頭の中はてなマークしかなかった。

「みうちゃん、置いていかないで...昔はあんなんじゃなかったのに...」

寒気がした。本能的に手を払ってしまった。

「お母さんいい加減にして!!私はもう、そうゆう年じゃないのよ!」

久しぶりにこんなに大な声で叫んだ。

腕を振り払って全速力で階段を駆け上がって逃げる。

もう、怪物のように思えてきた。

「みう、待ちなさい!」

私は、制止をすべて無視をした。

吐きそうだった...

泣きそうになった...もう、誰も入ってきてほしくなかった。

とりあえず一人にさせて...助けて...

日葵!あれだけ仲良くしていたのになんで忘れちゃってたんだろう...

すぐさま、スマホを開いてチャットを開ける。

チャットにはたくさんの高校の友達からよろしくメールが来てたけどそれどころじゃない。

日葵のトーク画面を見つめてメッセージを打とうとする。

でも、日葵は今楽しくやっているのかな...

私なんて忘れちゃっているのかな...

急に喪失感に襲われてどこか一人寂しくなった。

文を打つがそれを消す。

なんて伝えればいいんだろう...

もう、いいや。自分でやるしかないのか...

そうだよね...あと、3年で成人

とっとと、家出たい...

でも、社会に行ったらこれが当たり前

耐えるしかない。我慢しよ...

結局、自分の奥底に押し込んでそのまま寝ちゃった。


それでも私はがんばると決心をしてお母さんに知られないようにこっそり入部して描き続けた。

描いていると世界が広がって見えて世界の中でも自分が存在しているんだってすごく感じるようになった。

自分だけができて、自分だけが輝いて居られる

そんな世界を私は作り出しているんだって強く感じた。

部活動に入部したりんは徐々に絵を描けるようになって笑顔があふれていた。

部の雰囲気もよくみんな積極的に活動していた。

同級生の部員は結局最初に来た3人だけになっちゃったけどそれなりによかった。

1年生は山本さんがしっかりしてくれたおかげで私がちょっと苦手タイプだった馳君のことも見てくれてた。

「三島さん、鍵を職員室に返してくれない?」

「三島さん、文化祭の案何かあったりしない?」

「三島さん、このプリント一緒に取りに行きましょ」

彼女は私のことを頼ってくれた。

彼女のそのあふれるお嬢様感といい匂いで私は

それと同時に私は自分の存在をこの部活で確認することができた。

自分はここにいていいんだって

自分が役に立ってるんだって強く感じるようになった。

なんで、お母さんはそんなに反対するんだろう...

今のところ定期試験は学年10位以内だし模試は隠しているから大丈夫なはず...


「それでさー、先輩やみんないい人でさ!」

「へぇー、りんは美術部か...」

「あかりちゃんは何部に入ったの?」

「私?私は帰宅部副部長!」

「えー、なにそれ~笑」

こんな他愛もない会話ができてる...

よし、いいぞ。これでいい。

「そういえばさ、りんって山本さんといつも一緒だけど百合とかってあるの?」

「え...あーもちろんそんなのないよ!」

「えーうそうそ。顔に書いてありますっよー」

「え、まじで笑」

一旦深呼吸しよう。

私ったら何を考えてるんだろう...

そんな山本さんとはただの部員だし特別仲のいいなんてことはないし...

あーも、恥ずかしくて取り消したい...

今すぐあかりの記憶からこの質問の答えを消し去ってやりたい...

めっちゃ恥ずかしい...

なんであかねはこんなこと平気で聞いていられるんだろう


入部してしばらくすると3年生が引退して河野先輩が部長となった。

それと同時に大井川先生があまり部活に顔を見せられないほどに忙しくなってしまった。

そのせいか部活の空気が一変する。

私の通っている英成高校は生徒の自主性を図るためにスマホを休み時間に限り使っていいという校則がある。

しかし、実態はなかなかに悲惨で休み時間以外でもみんな平気でスマホを使っておりこの部活動中でも平気で使ってる人がいる。

それも先輩たちは注意せずただ、見て見ぬふりをしているだけだった。

私も先生に言うとめんどくさい騒ぎになるのは目に見えてたので見て見ぬふりをした。

この終わってる環境にメスを入れたのは山本さんだった。

「みなさん、それでいいんですか!」

こう、先輩たちや馳君にほぼ毎日言ってた。

先輩たちは徐々に諦めたのか改善していったが馳君だけ

「偉そうにしないでもらえます?同い年のくせに...」

とぼやいてて一向に改善しなかった。

私もそれに対してはかなり不満だった。


でも、河野先輩がいたおかげでなんとか部活としての活動はできていた。

それと同時に私はここで長期のスランプになってしまった。

描いても描いても上手くならない...

これじゃあダメだということはめちゃくちゃ分かってる。

でも、うまくいかない...

私はまだプライドがゆるぎなくて動画を参考にすることができなかった。

そして、私は気が付いたら親にバレないように休みの日は夜更かしして描くようになった。

それがダメだと分かってるけど一度やってしまうとあの日の衝撃みたいに楽しくなっちゃうの...

いつしか夏休みにそれが定着しちゃって結局夏休みの半数近くの日を昼夜逆転生活となってしまった。

これだけ絵に必死になっても結局私は部の中では下から数えた方が早いほど絵だった。

しかし、そんな頑固で夜更かしなことを毎日していたら神様は苦しい表情をする。


それは突然の日だった。

いつも通りの朝、9月の残暑が厳しくなって期末テストまであと3日と迫った日のことだった。

なんだか今日は体調が悪いな...

暑さの体調でやられてしまったのかいつもよりもりんは早く目覚めた。

でも、目覚めたけど身体があんまり動かなかった。

起きれない...まるで、身体が固まってるような気がする...

それでも起きようとする。

がんばって起きたものの立ちくらみが激しく立ってもいられない状況だった。

朝から頭痛いしお腹も痛い...

生理なのかな...

そう思い、私はトイレに駆け込んだ。

あれ...?血ない...じゃあ、ただ単に体調が悪いだけか...

トイレを出て部屋に戻った私は棚に置かれていた頭痛薬や腹痛止めを飲んだ。

薬の効果はすぐにはでないけど飲んだし今日1日寝ていれば大丈夫だよね...

私の中にはどこか薬を飲んだということに対する安心感があった。

きっと大丈夫だよね...

具合が悪いから今日は無理言ってお母さんに学校休ませてもらおうと言おう。

ほんとにダメだ...今日は

部屋のドアを開けて私はお母さんに今日休むことを伝えようと歩き出した。

その時だった。

私自身何が起こったのか分からなかった。

気が付くと私は廊下で横になっていた...

廊下から大きな音がしたので食卓でコーヒーを飲んでいたお父さんが駆けつけてくれた。

「りん!大丈夫か!!意識はある。」

あ、お父さん...ごめんね...こんなに急に弱くなっちゃって...

「母さん、今すぐ病院行くぞ!」

「え、何があったのよ?」

「りんが倒れたんだ。すぐ、用意してくれ!」

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