Colorful World

廣海 奈央斗

出会い


それは、高校私立受験の勉強で最後に伸ばすことができる期間である11月の出来事だった。

当然、私は勉強をして少しでもいいところに行こうと努力を重ねているところだ。

学校での話なぞまるで、聞いてない。

だって、聞かなくても大体想像つくから

そんなちょっとめんどくさい人だけどそうゆう性格なので仕方ない。

そこに関してはもう諦めている。


「みゆしまさん、また一位なんすか」

彼女は、福田日葵

私にいつも話しかけてくる人

性格は私と反対で明るく元気で友達もそれなりにいる。

たとえるなら、親がわが子に求める一番理想的な子なのかもしれない。

日葵は定期試験では中の下ぐらいで決して頭いいという部類じゃない。

でも、私のことを頼ってくれて勉強も何度か教えたことある。

私だってそんな明るい子になれたらいいのに...

と思ったことは何度かある。

でも、結局変えられそうになかった。

なので、実力で今まで他の連中を黙らせてきた。

「それよりもさー、みゆしまさんこのアニメ知ってる?」

そう、日葵がクリアファイルを見せてきた。

目の形からして最近ではなさそうだった。

一昔前の作品というイメージを私は感じた。

でも、作品の名前は分かんなかった。

「このアニメはなんて言うの?」

私は聞き返した。

すると、日葵は

「えー、みゆしまさん知らないの?すっごく有名な作品なんだよー」

私は作品名を聞いてるのになんでそうなるのよ。

「へぇー、そうなんだ。時間あったら見てみるわ」

と、少し消極的な返事だけ残した。

見るわけない。私はそんな時間あったら勉強してる。

少しでもいい学力で高校に行って光の見える将来へのロードに行くんだ。

今はそれだけでいい。

と、思えたのも僅か10秒も満たなかった。

「ほっっっんとにみゆしまさん見て!おもしろいから!」

いつも、御調子気味でちょっと抜けてる日葵がここまで言うのもめずらしい。

というか初めてかもしれない。

今まで2年近くしか付き合いがなくテレビに出てくる10年近い付き合いがあるなんてないのに


私は、彼女の本気さを初めて感じた。


ここまで、薦められたら見るしかないしかだろ。

他にも回避する方法を考えたが彼女と私は唯一の友達。

ここで、私がその作品を見なくて適当な返事をしたら結構本気で友達との関係が終わるかもしれない。

根拠なんて1mmもないけど感覚ですぐ分かった。

「分かったわ。受験が終わったらすぐ見るわ。約束する」

100点の回答ではないが高得点の回答であるだろう。

「わぁぁぁ、ありがとうね!」

日葵は喜んでいた。とびきりの笑顔で


しかし、笑顔も一瞬だった。

チャイムが鳴った。社会科教諭の丸山豊人が入ってくる。

日葵が急いで自分の席へ戻る。

「こらー、受験会場でそんなことやったら受験失敗するぞ。」

いきなりの注意。ウザい

確かにそれをやったら失敗する可能性あるね。

正論っぽいけど腹が立つ。

このピリピリした時期に油ではなく消毒液を追加で入れるのかよっと思う。

最悪の空気の中授業が始まった。

授業は教科書の大詰めであってか終盤の社会をよりよくするにはというところだ。

先生は熱心に少しでも理解してほしいと黒板に書いている。

しかーし、私がそんなこと聞いてるわけもない。

私は苦手な数学の問題を解いていた。

私の席は後ろから3番目の廊下側

先生の聞き手は右手でいつも左回りの方向で生徒のことを振り返ってみる。

すると、私の廊下側の机は視界に入るということがない。

つまりカンペキなところなのだ。

どんどん解く。どんどん解く。

これで今日もなんとかいける...と思った私の考えが甘かった。

神様は見放した。

「おーい、三島!」

すごい勢いで私の苗字を呼ぶ。

振り返ろうにも謎のオーラがあり私はできなかった。

丸山は後ろにいた。あーあ、やっちまった。


結局私は、社会の時間が終わるまで数学活動禁止処分を受けてしまった。

長く感じた授業が終わりノートを返してもらおうとしたが次の時間も預かってあげるからHRの前に取りに来いっと言われてしまった。

なんなんこの人

次の時間の授業はよく覚えていない。やけに眠かった。

多分一番長く感じた授業が終わりチャイムと同時に廊下を走った。

職員室へ行き、丸山にノートを返してもらおうとした。

でも、なんかこの人ネチネチと喋っててうるせぇ...

強引に話を切り上げHRに間に合うようにまた、走った。

教室のドアを開ける。HRまであと2分

せーふ、とりあえず間に合った。

あぶねぇあぶねぇっと安心感に浸るところだった。

しかし、その安心感も数秒で消え去る運命となってしまった。

担任の三村祐治が

「おーい、三島放課後残ってほしい」

それだけ言って三村先生は教卓の方へ行ってしまった。

安心感という漢字3文字は一瞬にして消え去った。

「みゆしまさん、残り?めずらしいね。」

日葵が横から聞いてきた。

「違う、三村先生に残ってほしいって」

「あー、もしかしてサプライズだったりして?」

いつもの日葵だ。さっきの本気はどこへ行ったのやら

「どうせ、さっきの社会の時間の件だろう。怒られに行っていきますわ」

何か分からない自信だけがこみあげてきた。

はっきりしてほしい。ただ、それだけだった。


放課後の呼び出しはやはり三村先生からの先ほどの件についての厳重注意から始まった。

とりえあず、聞いてるふりをしている。話なんて聞かなくても大体想像つくから

話のテンポが一旦落ち着きどうしたのやらと上を向く。

すると、三村先生が

「三島、本当に推薦は使わなくていいのか。今回の件は次から気を付けるということにしといて。うちなら...」

と、受験の話をしだした。当然ここで言うことはただ一つ

「結構です。私は自分の力でいきたいので

 推薦枠ならこんな授業中内職をしている生徒よりもっと優秀な生徒にあげてください。」

スラスラと思いついた言葉を並べ先生に返した。

少し生意気でごめんなさいね。

すると、先生の方が折れたのか

「もう、勝手にしろ」

と捨てセリフを吐いて教室から立ち去った。

計画通り。だけど、それと同時に嫌われてしまった。

まぁ、いいや。いいですもん。自分の力で合格をつかみ取ってみせますから


超特急で家に帰り着替えてすぐ勉強に入る。

やはりこーなるのか...はぁ、ふーん。

と誰もいない空間で独り言のように呟きながら勉強をしていた。

あっという間に何時間か過ぎお母さんにチャットアプリでご飯に呼ばれる。

ご飯の時間はリフレッシュタイムだ。

私はすぐさま向かいごはんを食べながらテレビを見る。

お母さんの作るごはんはとてもおいしいけど、どこか味気ない。

そして、味が薄い。そして茶色と黄色が多い。

あぁ、つまんないな。って思いテレビを見る。

すると、今日日葵の言っていた作品がテレビで紹介されていた。


15周年記念としてイベントをやるみたい。ふーん

テレビでは鮮やかな色合いのグッズや再発売のCDが多数紹介されていた。

私は軽い気持ちで見ながら味噌汁を飲んでた。

あらすじを見る限りなんだか楽しそうな作品みたいだ。

ちょっとだけなら見てみようかな...

すると、お母さんが

「いいかい、りん。こんなアニメ見ちゃだめだよ。あなたには必要ないでしょ!」

そういい、テレビはニュース番組へ切り替わった。

そうだよね...今は受験生

そんな余裕などない。少しでも偏差値を上げていかないと...

私はその気持ちの一択しか選ぶことはできなかった。

とりあえず勉強をしていれば大丈夫。なんとかなる。

確証なんてそんなものはなかった。

受験終わりにサラッと見ていれば大丈夫でしょ

と思い、食べ終わったらすぐにYoutebuで苦手教科のネット講座を見ていた。

私は憧れの高校へ行き、いいところへ入るんだ。

ただ、それだけ

あっという間のネット講座が終わり私は学校のプリントの整理をしようとした。

すると、ちょっとスクロールしたところにあの作品のMVの動画があった。

再生数を見ると1億再生だった。すげぇな

まぁ、とりあえず5分くらいだし見てみるか...

明日、日葵と話を合わせるためにもね...

私はそんな軽い気持ちでその動画をクリックした。

この感じ...まるで、危険な薬のきっかけのようなシナリオだな。

見本かよ...笑 一人で笑ってた。


広告も入らずすぐに動画が始まった。

投稿は11年前だいぶ昔やな...

これは文化祭かな?

残念ながらわが中学校には文化祭はない。

だから、詳しくはよく分かんない。

開始10秒

いきなりギターのすごわざテクニックが始まった。

おぉ、なんだこれ...

初めての感覚だった。次々と生み出される見たことのない風景

そして、圧倒される力強い歌声

すべてが輝いていた。

まるで、シンデレラがお城から立ち去るときのイルミネーションみたいに

あっという間の5分間だった。

運命的な出会いだった。

それほどまでに美しく、迫力があって...言葉では語り切れないほどだった。

それほどまでに感動的なシーンだった。

今までの受験勉強の内容が吹っ飛ぶくらいの衝撃だった。

そりゃ、1億再生以上行くよな

それと同時になんだかこの風景を描いてみたいと思った。

なんでかは分からなかったけど描いてみたら楽しそうと思った。

絵なんて授業でしか描いたことない。しかも、あんま面白くなかった。

先生が自分の美大時代の苦労とか変人のお友達の話をしていて全然授業がつまんなかった。

でも、今はインターネットの時代

学校の先生がいなくても学習は何とかなる。

それこそイラストなんて無限になんとかなるだろう。

でも、私はここで一旦自分の今の立場に戻ってブレーキをかける。


「私はここで描いたら絶対受験終わる。でも...」

そのあまりにも衝撃的な作品に私は寝るまで忘れることはできなかった。

今は忘れたい...受験終わったらやろう。でも、やりたいな...

布団に入ったけど少したりとも誘惑が頭から離れない。

布団を頭から被って目を閉じた。

そしたらすぐ寝ちゃうだろと考えた。

けど、寝れない。眠れない。

色んな事を考えてしまう。

考えなくてもいいことを考えてしまう。

今、何時だろうとスマホの時計を見るとゆうに日付が変わっていた。

もう、どうなってもいいや

半分諦めたかのように私は眠りについた。


翌日、やけに早起きだった。

目覚ましなしで起きられたのいつ以来なんだろう...

いつもは5つぐらいのアラーム掛けてるのに

おじいちゃんかよ...笑

一人で布団の上で面白おかしく笑いかけそうになった。

ふと、机を見ると教科書が乱雑してあった。

今日は早めに学校へ行って勉強しよ

と脳よりも身体の方が動いてた。

部屋を出て顔を洗おうと洗面所へ向かう。

「りんちゃん、もう起きてたの!?早いねー」

お母さんが横から入ってきた。

「お母さん、その...名前+ちゃんづけはやめて!」

「えー、昔はそうじゃなかったのに!!」

「私はもう、中学生なのよ。来年から高校生!そうゆう言い方やめて!!」

「あーも、知らない!どうぞ、勝手にしてください!」

そう言ってお母さんは台所へ戻ってしまった。

これでこのやり取り何回目なんだろう。もう、数えるのもめんどくさくなり数えていない。

朝から気分が最悪だ。すっげぇイらってする。

そこからは登校まではできるだけ口を交わすこともなく踏ん張る。

「はい。お弁当ね。ハンカチ持った?ティッシュ持った?」

バカしつこい...今すぐ怒りたいけどここでさらに怒ったら晩ご飯があやぶい。

そうなると、受験もめんどくさくなりそうだ。

「はいはい、全部持ちましたよ。行ってきます」

自転車で漕いでるときも昨日のあの曲がかすかながら残っていた。

でも、朝今日早いしちょっと描いてみようかな...

「うわぁぁ!あっぶね」

野菜みたいなのが入ったカゴに激突するところだった。

めっちゃギリギリ...

あと、数秒遅かったらめっちゃ思いっきりぶつかってたかもしれない。

あぶねぇ...気を付けないと...

とりあえず、学校とうちゃーく...

はぁ、朝から嫌なことだらけだよ。

早朝の学校は先生の車しかなく児童の姿なんて微塵もなかった。

いつもの騒がしい連中がいるわけもなくどこかぽっかりと穴が開いてしまったような感じだった。

今ここで大声を出したら余裕で近所の人を起こせるんじゃないかっていうくらい静かだ。

そんなバカなことを考えてないですぐ教室行くのよ。

そうすぐに自分に言い聞かせて私は昇降口の方へ向かった。


教室についてすぐに昨日あんまり集中できなかった講座の復習をしていた。

ただ一人ぼっち。だけど、集中できる。めっちゃ手が動く!!

とはならなかった。昨日のMVの衝撃から一夜明けて本来の彼女に必要な冷静さは取り戻したけどやはり、動画のインパクトは彼女の脳内に深く刻み込まれてしまった。

昨日の記憶を頼りにMVのキャラの絵をちょっと描いた。

結構露出の多い服装だったため制服を描いてみた。

ブレザーだったためセーラー服は実際私は見たこと無かったけどこんな感じだったよね?

お母さんに見つかったら絶対怒られるよな...

こんな下品なアニメを見るんじゃないって

なんでこんなこと考えてるんだろう...

この罪悪感は全て絵に投げるようにぶつけた。

どのくらい経ったのかは分からないけど無事(?)に描き上げた。

描き上げた絵はなぜか輝きを感じていて謎の達成感があった。

初めてにしてはうまくね!?よくね?私って天才かも!?

謎の天才アピもできたけどそれも3分しか持たなかった。

「あ、みゆしまさん!アニメ見たの!?」

「わぁ、みゆしまさんの絵だ!初めて見た!」

聞き覚えのある声とともにこのような言葉が聞こえてきた。

少々恥ずかしい気持ちがこみあげてきたがいつもの冷静さで後ろを振り返る。

そこには少々興奮気味の日葵がいた。

やばい...とっさに隠した。でも、もう遅かった。

「もしかして...バレちゃってる?」

「うん、めっちゃバレてる」

まじかよ...そっかー

「いつから後ろにいた?」

「みゆしまさんが興奮して何かしているときから」

あーじゃーもう、ほぼ絵描いてるときやん。

「まさか、一晩で全話見たとかってあります!?」

「いや、そんなわけないでしょう」

速攻で答えた。

「それにしてもみゆしまさんの絵なんだか面白いねー」

「え、どうゆうこと?」

私には意味が分からなかったので聞き返した。

「いや、なんだかね。

 でも、伸びしろはめっちゃあるから大丈夫だよ!!」

それが最大限のフォローに聞こえたけど褒められてる気がした。

「うん、そうだね!」

それしかいい返事が思いつかなかった。

でも、なんだか褒められるのが私は嬉しくなった。

そこから私は勉強の合間にアニメを見ながらアニメの絵を模写するようになっていた。

模写をしてる自分は受験勉強を忘れることのできるくらい楽しかった。

それ以上に楽しいという感情がこんなに込み上がってきたのが初めてだったので

でも、なんだか何回かは日葵に見せても帰ってくる返事は

「うん、伸びしろあるよ。がんばれ!」

ということだけだった。

自分でも輪郭の形や手の指先の形、服の描き方などはアニメ通りにはならなかった。

Youtebuに大量にある解説動画は見なかった。

なぜか、私のプライドが許さなかった。

許せなかった。

なんだか、「負け」と感じてしまうから。

ただそれだけの理由

他に理由なんてないよ。ただ、私の譲れないプライドがあっただけ


こんな感じで年が明けてすぐに迎えた最初の受験先

いわば、第二志望や第三志望のところだ。

こちらは本命ではなかったので

8日後両方から合格通知が届いた。

喜びかったけど私はまだ、いけると思いどちらとも保留にした。

でも、1分1秒全ての時間を使って集中することはできなかった。

どうしてもアニメで映し出される見たことのない風景や絵を描く楽しさを覚えてしまったからだ。

それでも、私はがんばった。がんばった。

そう毎日言い聞かせて必死にやった。

第一志望の受験会場の目の前にやってきた。お母さんが

「りん、絶対受かってきなさい。あなたならできる」

と言ってきた。なんだか暗い世界に押し詰めるような気がした。

でも、ここで喧嘩したら色々めんどくさいし黙る。

「行ってくるね」

と、一言だけ残して私は車のドアを開けて降りようとした。

すると、お母さんが

「りんちゃん、大丈だよ。ファイト!!」

と言ってきた。背筋が一瞬で凍った。すごく気持ち悪かった。

吐き気を覚えた。

ふと、周りを見るとまだ受付時刻の遥か前だったからか誰も居なかったから助かったけどめっちゃ恥ずかしかった。

「ふざけたこと言わないで!」

と言って私は気が狂うくらい走った。走って逃げるしかないと思った。

走り出した頃はお母さんがなんだかあーだこーだ言ってたけど全部聞かないふりを貫いた。

そこからの記憶はなく気づいたら受験開始15分前だった。

そこからの時間はなんだか時間が止まったような感覚でどこか苦しかった。

そうこうしているうちに受験が終わった。色んな意味で

後半の教科の記憶なし。もう、第二志望のところだなって思うほどだった。


そこから学校は卒業式の前だったのでずっと卒業式の練習だった。

「おい、そこ!揃ってないぞ!」

怒りっぽい丸山が男子達に怒鳴ってる。

あーあ、かわいそうに

「みゆしまさんーもう、私たち卒業ですね。なんだか寂しいですね」

日葵が駆け寄ってきた。

「そうだね。私たちもこの学校を去るね」

そこからの記憶は天国のようだった。

日葵を初めあんま関わりのなかった人たちがしばらく会えないからか話しかけてきた。

受験のストレスもみんな抜けてみんな気楽に話せる中に戻りつつあった。

アニメの知識や絵のおかげかちょっとだけど話せる友達できた。

絵は決して上手いとは思わなかったけどなんだか自分で満足してしまうほどだった。

日葵以外の友達にはなんだか恥ずかしくて見せられなかったけど...

でも、自分の変なプライドがあったからかなかなかそれ以上には上手くならなかった。

そもそも、自分以外の競争相手がいなくて完全独走状態だったという点もある。

ようは、同学年の世界を知らないからである。

最強の言い訳だな...


卒業式の前々日、私は放課後の教室で束の間の休息を味わっていた。

数日ずっと話していたから疲れた。

この時間はもう誰もいないからゆったりとしていたれる。

頼むから誰も来ないでくれ

ふと、あと2日ぐらいでこの教室や学校とも最後なんだと思うとどこか懐かしい感じがした。

もう多分感じることのない匂いや窓から見える風景

黒板はきれいに掃除がされており、机はきちんと正確に正されていた。

窓から見える大きなグラウンドの奥には一面緑が広がっておりイノシシや虫たちが隠れているのではないかと思えるくらいだった。

そんなことを1人で考えていると日葵が後ろのドアから入ってきて私の方へやってきた。

「日葵!?先に帰ったんじゃないの!?」

つい、驚いた口調で言ってしまった。

「ううん、階段で転んじゃって保健室で処置しててたら...てへぺろ」

そこから溢れる表情は嘘に見えてまるで私と話したがっているような感じだった。

「日葵、実は私とおしゃべりしたんじゃないの?」

「えぇ、みゆしまさんなんで分かったんですか!?」

「図星かよ。いいよ、何か話したいことがあるんだったら言っていいよ」

さて、日葵はどうくるかな...意外とおふざけだったりして笑

「みゆしまさん、その...今までありがとうね」

まるで、最後の別れのような言い方だった。私の背中から見たことのないような感覚が襲いかかってくる。

「何言ってるのよ。これからもスマホのチャットがあるから完全に会えないということはなくなるのよ。」

と、私が彼女にこう返した。というかこう返すでしょ。

すると彼女は我慢していたのかいきなり目から大量の滴が垂れていて顔の表情が崩壊した。

「日葵、どうした!?大丈夫?」

明らかに大丈夫じゃないけどついかけてしまう。

私は何かいけないことをしてしまったのだろうか。

そんなこと考える余裕はなかった。

「はい、ティッシュ。何か私変なことした?」

つい、聞いてしまった。

すると、彼女は泣き止んだら話すと言ったので私は待った。

彼女が泣いてるのは何度か見たことあるけどそれは虫や暗いところだった。

でも、今回は違う。なんだ。2人きりでお泊まり会したいか?いや、隠してた劣悪な家族関係我慢してたのか...それとも...

私は彼女と過ごした2年間を必死になって思い返した。

でも、彼女が泣いてる理由を言語化することはできなかった。

彼女が泣き止んだ。するとゆっくりとどこか寂しそうな言葉で

「私、みゆしまさんともっと話しかったです!みゆしまさんはいつも冷静でクールな感じがあって私とは対極的なだなと感じてたのですがどこかかっこよくて...」

なんだ、そんなことか。ちょっと安心した。

よかった。今から窓から...なんていうシナリオじゃなくて

「みゆしまさん、その...これからも友達としていられますか?」

「もちろんだよ、私たちはこれからも友達。いい友達を持って私も幸せでしたよ」

日葵は私の志望高校に微塵も合わなかった。

だから、これが事実上のお別れ

会うとしても大学か成人式だろう。

私だってもっと話したいよ。話していたいよ。

こんなちょっと完璧主義で頑固な私に話しかけてくれたのがどれだけ嬉しかったことか

「みゆしまさんー!!」

日葵が抱きついてきた。人と抱きつくなんていつ以来なんだろう...

彼女の肌は暖かく生命が動いてる感じがすごくした。

私こそ泣きたいけど私は泣けなかった。

そこで私はこんな提案をする。

「そしたら、日葵さ。今夜一緒に朝まで電話で話さない?明日、学校だけどほぼ休みみたいなもんだし」

最高の提案でしょ。これはいけると思った。

「うん、そうしましょう!!」

彼女は一転すごく喜び出した。歓喜になっていた。

彼女の笑顔は輝いていて希望に満ち溢れていた。

日葵とは一生の友達になれそうだな。


..

...

....

私はパソコンで受験番号を打つ。消す。それを繰り返す。

怖い。怖い。こんなにも恐怖を感じたことはない。

この恐怖が背中から押し寄せてくる。そして、どこか視線を感じる。

お母さんだ。

「みう、大丈夫だよ。きっと受かってるからね。終わったら下においで」

やけに上機嫌だった。気持ち悪いくらいに

第二志望のところは担任からあっさり言われたから緊張なんて一切しなかった。

しなかったというか機械のように回ってたからできなかったの方が正しいか

まぁ、いい。私は別にどうなってもいい

受かっていようが受かってないが私は私を受け入れよう。

そう決心し受験番号を押す。そして、更新をかける

どうか受かってますように...

目を閉じた。しかし、画面には

「残念ながら不合格です。ご受験ありがとうございました」

とはっきりと書いてあった。


落ちた。あーあ、終わった。


あー、やっちまった。やっちまった。

私は目指してた県立の第一志望の高校には見事に落ちて滑り止めのいわゆる自称進学校の進学クラスに進学することがたった今決まった。

まぁ、大体予想はついてたけど

これからの高校生活終わったな

すぐに下に降りて結果を報告

お父さんは何も言わなかったけどお母さんからはめちゃくちゃ怒られた。

「なんで、合格できなかったの!?」

「もう、こうなったら大学受験で天奉クラスの大学受かりなさい!」

「そうしないと我が家に泥を塗ることになるよ!」

天奉クラスというのは受験生でもそうそうに行ける人はいなく倍率はゆうに5から7を超える超難解の大学だった。

まぁ、確かにそこ受かったら就職は安泰だな。

でも、なんだか何のために行くの私には分からなかった。

とりあえず謝ればなんとかなると思い泣いてるフリをして

「はい、ごめんなさい...」

と涙ながらの謝罪をした。

もう、誰に謝っているのか分かんなかった。

私のお母さんっておかしい人なのかな...

そう考えるようになっていた。


でも、落ちたところはめっちゃ近いけど第二志望のところはある程度距離あるしよくよく考えてみれば大型ショッピングセンターがある。

あれ...よくね。だって、放課後アニメみたいな寄り道できるしいいんじゃね?

こんな軽く考えたらお母さんに怒られるのかな...?

そんなこと考えるくらいどうでもいいやってなってた。

ぶっちゃけもう、疲れたし

日葵からメッセージが来てる。

無事に受かったのかな...ちょっと母性を感じてチャットアプリを開く。

そこには

「みゆしまさん!!旅団高校に行くことになったよ!」

ちょっと何を言っているか理解ができなかった。

旅団高校は確か2、3県先のところだったはず...

まさか...

「日葵、どうゆうこと?」

「あぁー、私日本画でスカウト来てて県立落ちたらここに入ること決まってたの」

「みゆしまさんはどうだった?」

「私はきれいに落ちたわ」

「えぇ!!なんか言い方がかっこいい!みゆしまさんもがんばりましょうね!」

なんだかフォローになっていなかった。

そっか...日葵すごいな...

私は...とふと部屋を見る。

机には鉛筆とスケッチブックが乱雑に置かれていた。

私だってもう少し早くできていれば...

どうしたら...

こうなったら私は高校で全てで1番になる。

アホだし突発すぎる計画だった。

そして、日葵と一緒の展示会でいつか勝つ。

そう無防備な計画をして第二志望の英成高校へ入学する準備をした。

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