第3話 国防軍再編

西暦1939(昭和14)年9月15日 ドイツ ベルリン


 この日、ベルリンの総統府では、国防軍の規模改編を中心とした会議が行われていた。


 何せデンマーク北部と東プロイセンを、『神聖ローマ連邦』なる国が占領しているのだ。対ポーランド及び英仏戦を想定した戦略から大きく変更しなければならないのは確実であった。


「まず陸軍ですが、神聖ローマ連邦を名乗る武装勢力の機甲戦力に対抗するべく、現在の5個装甲師団より、10個装甲師団にまで増やします。増加分の人員は既存の歩兵師団を解体して転用し、さらに残った師団も自動車化ないし機械化を進めます」


 国防軍最高司令部総長のウィルヘルム・カイテル陸軍元帥はそう説明し、46個歩兵師団のうち5個歩兵師団を解体。それらの人員に装甲車両を配備して改編し、5個装甲師団にするという事をヒトラー総統たちに説明した。


 この時点でドイツ国内の工場では、戦車の生産を1号戦車や2号戦車から、5センチカノン砲を装備した3号戦車と、7.5センチカノン砲を装備した4号戦車に切り替えている。オーストリアやチェコスロバキア、ポーランドの企業でもライセンス生産を認めており、それに合わせて性能の陳腐化が進んだ3号戦車のドイツ本国での生産はそろそろ終了する予定である。


「また、武装勢力は新型戦車を投入してきており、既存の対戦車砲はもちろん、野砲やカノン砲でも直ぐに撃破出来ない様な防御力を持っております。ですので戦車開発に関しても、高射砲を転用した8.8センチ砲搭載の重戦車及び7.5センチ長砲身カノン砲を搭載した中戦車を開発する事を決定しました。なお設計につきましては、既存のものをベースとし、開発期間を短縮する予定です」


 そのほかにも重砲の自走化や、対戦車砲の後継となる突撃砲の開発も進められており、ドイツ陸軍の装甲師団はより強力なものとなるだろう。


「続いて海軍ですが、Z計画を見直し、戦艦4隻、空母2隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦4隻、駆逐艦12隻の建造を継続し、潜水艦も引き続き300隻体制が整うまで建造を継続します。ですが相手の海上戦力も強力であるため、英仏からの支援内容次第では追加建造も行います」


 すでにデンマーク近海では駆逐艦の小競り合いが起きており、相手艦艇の性能は幾分か知れている。海軍司令部では自慢のUボートで殲滅すべきだという意見が出たものの、この時点で敵艦隊は空母艦載機による哨戒を行っており、そもそも出撃自体が難しい状態となっていたため、即座に否決されていた。


「現在、敵海軍はソビエト連邦に対しても敵対心を見せており、我が国のみに戦力を集中させる事はないでしょう。ですが、せめて自国領海を守り切るだけの戦力は整備せねばならないと考えます」


「続いて空軍ですが、整備計画は従来通りでよろしいと考えます。ですが別個に海軍航空隊を作るのは反対ですな。そちらも我ら空軍の管轄下に…」


「ゲーリング君。今は君の我儘に付き合っていられる程の余裕は無い。海軍からの支援要請に対して無視出来ぬ遅れが見られた事はかなり問題視されているのだからな」


「今後、相手の出方は不明だが、複数方面からの侵攻を想定した防衛計画を進める事とする。引き続き、戦力の増強に努め給え」

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